第7話 カホちゃん!

「『ワイドヒール』!……ふぅ。大きく育ったねー。これで完熟かなー?」

「さっすがミク!ナイスヒール!」

「神聖魔法、すごいわねー。こんなに早く大きくなるなんてミク、さらに強くなったんじゃない?」

「いやいやー。シオンとイオが周りのモンスターを倒してくれたからだよー」


田島さんからの情報を手に入れてから私たちはすぐに行動した。

社長とマネージャーさんは聖水を手に入れるために、私たちはブラット・パック・アップルを集めに府中へ。

中層まで行くのは大変だったけどモンスターを見る限りそんなに強くなかったのでサクサクたどり着けたよ。

ブラット・パック・アップルは田島さんが言う通り、まだ小さい実が数個あるだけだった。

『ワイドヒール』を人以外に打つのは初めてだったので緊張したけどやってみたらあんまり変わらなかった。

何なら木の鼓動?が聞こえてきたからびっくりだよ。


「とりあえずりんごは手に入ったし、病院に向かおう!」

「「うん!帰ろう!」」






リンゴを持って病院に行くと社長やマネージャ、他のKLM48のメンバー全員が揃っていた。

各々伝手を使ってカホちゃんを助けようと動いていたみたい。

……ちょっとファンとの距離が近い子もいたらしいけど今回は不問とするそうだ。


「これが、ブラット・パック・アップルか。よし、食べさせてみようか」

「ですねー。あ、食べさせる時は皮ごとって言ってたので細かく切ってから口に入れてあげるといいと思いますー」

「あと果汁が血のように赤いから気持ち悪くなる子は離れてて!」

「あとは祈るだけだから……みんな、待ちましょう」


病室に社長とお医者さんが入ってドアを閉める。

お願い……カホちゃんが元気になって……





数分後、病室のドアが開く。

社長とお医者さんがでてきた。


「社長!カホちゃんは?!」

「どうなったんですか!」

「……うん、体調は良くなってきている。身体の中にあった魔力の塊はなくなったそうだ」

「一応目を覚まされていますが、まだ会うには早いかと……」

「「「カホちゃん!!!」」」

「あ!お前ら!今はいると!」


部屋の中にみんなで飛び込んでいくととベットの上で起き上がってリンゴを丸かじりするカホちゃんの姿が。


「……りんご一口食べたら飛び起きて『丸ごと食べたい!』って言ってもぎとって食べてたんだよ……しかも耳や牙はそのままだし、アイドルが口真っ赤にして食べてる姿は流石にやばいと思ったんだけど……遅かったかー」


「いぃぃぃやぁぉぁぁぁ!!!!」


カホちゃんの絶叫が病室に響く。

うん、元気そうなカホちゃんだ。

そういえば好きな食べ物りんごだったね……


お医者さんが部屋から出て行って、改めてカホちゃんと向き合う。

シオン、イオ以外のメンバーはカホちゃんの姿にドン引きして一旦退散。

まぁ、ほぼ吸血鬼の姿だったもんねー。


「……このリンゴ、3人が取ってきてくれたんだって?」

「うん、カホちゃんが元気にならないと」

「KLM48のセンターだし!私たちのアイドルだし!」

「なんていってもー。親友ですからー。助けない理由がないですよー」

「……ありがとう。本当に、ありがとう」


カホちゃんの頬を涙が伝っていく。

ふと気づくと自分も涙が出ていた。


ほんと、目を覚ましてよかった!



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