第4話 呪い

『KLM48のセンター、渋谷夏帆倒れる。』

『ライブは絶望的か、怪我で入院。退院予定は未定』

『カホ、最低でも1ヶ月は入院か。事務所は怪我の原因について沈黙』


週刊誌や新聞、テレビのニュースは1面その話題で持ちきりだった。


「……カホちゃん……くっ、あの時離れていなければ!」

「ぐすっ……カホちゃん……」


シオン、イオも事務所のソファで悔しがる。

あの時、広場に残ってルーティンをしていたカホちゃん。

そこにモンスターが現れた。

名前はグルーヤムヴァンパイア。

上層から中層にかけて生息するコウモリ型のモンスター。

護衛の探索者がカホちゃんを庇ったけどグルーヤムヴァンパイアの攻撃はカホちゃんを捕らえた。

腕に傷を負ったカホちゃんはそのまま倒れて昏睡。

まだ目を覚まさない。


「傷はポーションで完治したのに……神聖魔法でカホちゃんは浄化したんだよね?」

「……はいー。神聖魔法『キュアケア』は毒を無効化できる魔法ですー。私以外にも探索者の方に協力して貰ったので確実ですー。」


私の神聖魔法は一応中の上クラス。

下層クラスのモンスターの毒なら回復できる。

けど、カホちゃんの症状は改善出来なかった。


「……あとはー、呪いの効果、ですねー。呪い解除はー私も覚えてないんですー……」

「……呪いを払うのは相当上位の魔法だったよね。確か神官クラスだって」

「日本だと陰陽師さんだっけ?あんまり名前聞いたことないよー……」


毒じゃない、とすると呪いの効果を疑うのは探索者の習慣。

呪いは術者の思いの強さによって効果が倍増する。

特にモンスター系は人が使う呪いの比じゃない強さだ。

私も神聖魔法を覚えている時に最終魔法として教本に記載があったことを覚えている。

そもそも覚えるために資格がいるほど厳密に管理されている魔法でもある。

何でも呪いを祓える魔法使いは総じて呪いをかけることもできるようになるからだそう。

詳しくは分からないけど祓ったあとに出てくる魔力を貯めることでその呪いをほかの人に送ることが出来るらしい。

怖い魔法だよねー。


「……事務所の人が色々探してるらしいけど日本で見つけるのは困難だって……どうしよう。カホちゃんが目覚めないってなったら……」

「シオン!そんな事言わないで!カホちゃんは必ず目を覚ますから!」

「……うん。そうだよね……そうだと信じよう……」


2人とも目に見えて気持ちが落ち込んでいく。

私も泣きたくなるのをこらえている。

あの時、あの広場に残っていれば。

防御魔法をみんなにかけていれば。

調査を近場にしていれば。

後悔することは山のようにある。

けど、後悔したところでカホちゃんが目覚める訳では無い。


「……シオン、イオ。2人とも話を聞いて欲しいー」

「……ミク、どうしたの?」

「グスッ……うん、何かあったの?」

「呪いを解く方法ー、事務所の人にー頼って待つだけじゃダメな気がするんだよねー。私たち探索者じゃない?こういう時こそダンジョンのアイテムをー手に入れて、カホちゃんを助けるべきだよー」


黙って待っているのはただただ時間を浪費しているだけ。

探索者なら自分の足を使って未来をもぎ取れ!って前読んだ海外の探索者の言葉があったのを思い出した。

呪いを解くアイテムはダンジョン内に存在する。

ならそれを見つけて持ってくればいい。

事務所もシークレット依頼としてギルドに解呪アイテムの採取を依頼しているらしいしダンジョンに入って手に入れて持って帰ることは出来る。


「ダンジョン三人娘として、いやKLM48のメンバーとして、カホちゃんを助けたいんですー。急いで見つけないとカホちゃんが可哀想なんですー」

「……そうね。ダンジョン三人娘はダンジョンが好きだけど人のために潜ったこと無かったわね」

「……グスッ。けど解呪のアイテムなんて深層クラスじゃないと出てこないって事務所の人が言ってたよ?深層はこの前あーさんが入っちゃダメだって……」


解呪のアイテムが見つかっている場所は深層。

日本で見つけている記録があるのはSSSランクの探索者、田島さんただ1人だけ。

田島さんは私たち三人娘を助けてくれた命の恩人だ。

正直、あの人を巻き込みたくは無かったけど深層の情報は1番信用出来る。


「田島さんにー情報を聞いてみましょうー。もしかしたら下層でも解呪のアイテムをー手に入れる方法を知っているかもしれませんー」

「……田島さん、巻き込むのは気が引ける」

「……グスッ……あーさん……」


本当に気が引けるけど待っている時間がもったいない。

私は田島さんのスマホに電話をかけた。

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