第2話 ダンジョン三人娘、センターを案内する

「うわー!ここがダンジョン!思ってたより天井たかーい!わー!草原になってる!あれ、モンスター?うさぎさん見たーい!」

「カホ、はしゃぎすぎ!あればハイライトラビット。暗闇でも光るうさぎよ。捕まえるときにしっかり持ってないと蹴られて飛ばされるよ」

「……あれ、痛かったなー。最初の配信でやっちゃったんだよねー」

「ほんとーほんとー。ヒール使える私がいなかったらー、次の日のライブ休むとこだったんだからー」

「……イオも無茶してるんだねー。ライブの時に飛び跳ねてるのは見てたからヤンチャしてるんだとは思ってたけど」


カホちゃんが引きつった顔をしてイオを見る。

イオは元気が取り柄だからねー。

空気読まずにガンガン進むよ。


カホちゃん―渋谷 夏帆(しぶや かほ)―はKLM48のチームKのリーダーで絶対的センター。

KLM48が結成された第1期生、通称『修羅7』の中で唯一まだ在籍している伝説のアイドル。

ライブハウスを転々と歩いて売り込みをした、山手線の駅全部回って路上ライブを開催した、なんて伝説を作った人でもある。

初期メンバーは私達KLM48メンバーの尊敬の対象だからね。

けど呼び方は皆『カホちゃん』と呼んでいる。

カホちゃんがそう呼んで欲しいと詰め寄ってくるのもあるけど有名すぎてファンだった子も増えてきてるから仕方ない。

個人的にもカホちゃんと呼ぶ方が近所のお姉さん感があっていい。


「来週はこの草原の中でライブするの?歌のイメージ的には『恋するエリクサー』とかの方が合いそうだけど」

「いや、まだまだ奥。ここ、代々木公園ダンジョンの上層三区は大ホールになってるのよ」

「そそ!でっかいホール!世界史で見たコロッセオに似てるよ!」

「へー!入口よりも大きいんだねーダンジョンって。あ、そもそも入ってすぐに草原があるのがおかしいね」


興味深げに周りを見渡すカホちゃん。

ダンジョンの異常さはどこも同じだからね。

色んなダンジョンを見てきたけど同じような場所はなかった。

福岡の天神駅と博多駅が地下で繋がって超大規模上層が出来てたり、熊本の深層までショートカットが存在してたり、様々だ。


「とりあえずー、現地に行ってみますかー?カホちゃんの護衛の探索者さんもいるんだよねー?」

「もちもちのろん!マネちゃんも心配性だよねー。上層ってモンスター弱いんでしょ?スライムとか私でも倒せそうだけど」

「カホちゃん、それは甘い。スライムはゲームとかでは最初の敵として出てくることが多いけどダンジョンは違うから。近くにいても近づいちゃダメだよ」

「そう!スライムの酸は顔を溶かすからね!アイドルは顔が命!もし見かけたらゆっくり下がってから助けを求めてね!」

「……2人がそう言うならマジなんだ。おっけー、近づかない」


ブルブル震えるカホちゃん、可愛いねー。

けどスライムは甘く見ると死に至るから気をつけてね。

ほんと、マジで死ぬから。




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