母ちゃんのカレーライス


そんな、ある日。


いつものように、学校から帰ってくると、家の中から夕飯の匂いが。


カレーだ。


カレーの匂いって、結構、外まで匂っていて、すぐに分かる。


また、カレーか……。


玄関のドアを開け、中に向かって声を掛ける。


「母ちゃん、ただいまー。」


返事はない。いつもなら、バタバタと足音を立て、


「おかえり〜。」


と満面の笑みで玄関まで来てくれるのに。


俺は、靴を脱ぎ、中へ入ると、キッチンへ向かう。


キッチンに母ちゃんの姿はなく、キッチンのテーブルの上にある大皿に、大量のハンバーグ。


「ハンバーグだ!美味そう!!」


俺が声を上げると、キッチンの奥のリビングから、母ちゃんが顔を出した。


「あっ、おかえり。」


そう言った母ちゃんの顔色が悪い。


「どうしたの?具合でも悪いんか?」


俺が聞くと、母ちゃんは、へへへと笑い、こう言った。


「うーん……夏風邪かねー。ちょっと、しんどいんだよ〜。」


そうやって明るく言うもんだから、たいした事ないんだろうと思った。

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