第20話 披露宴が楽しみな理由
プロファイリングの結果から、なぜ彼女氏が結婚式が楽しみだったのかは見えてきた。
披露宴で花嫁衣装を着てカラオケを歌う。人生の晴れ舞台だ。
もし推測が正しいなら、クリスマスデートの相手は間違いなく披露宴に来賓として呼んだ会社の人の誰かだ。
花嫁が晴れ姿を見せたい相手はそいつであって、花婿ではない。まして花婿の家族ではない。だからこそ、カラオケは楽しみでやる気満々だが、記念撮影は「いらない」だ。花婿の家族と集合写真など面倒くさいこと甚だしい。
歌う曲が「愛が生まれた日」で、どこに愛が生まれる要素があるのだろうと不思議だったが、生まれるよ! 花婿じゃない相手とな!
職場の若い女性と親しく話す一番簡単な方法は何か?
――結婚して子供ができること――
これ。既婚男性は変な勘違いをしたりしないせいか、女子社員が気楽に話をしてくるようになる。小さい子供の写真など見せれば「かわいー!」と黄色い声が聞ける。
もちろんだからといって浮気はいけないw
しかし、女子社員の中には妻子持ち管理職にガチ恋してしまう人がいるのもまた現実。自分はそんな対象にされた経験はないが、職場の飲み会で女子トークを聞いてるとそういう事例を耳にした。当人は秘密にしているつもりでも周囲の女子は気づくし、当人がいなければあけすけに話して酒の肴にしてしまう。
会社でスーツでバリバリ仕事をしていて、しかも家庭を持つというのは女性からは魅力的に見える「実績」だ。これに対して仕事に就いたばかりの若者は実績はなく、交際したり結婚したりすることは一種の「賭け」になる。もっとも独身であり若いということもまた代え難いアドバンテージだから、簡単に若者は負けない。
しかし、新居に越して生活の準備を始めようというとき、今まであまりなかった「生活臭」が新居でジャージ着てダラダラしている婚約者から漂ってきたらどうか。しかも不意に近づいてきて接触を求めてくるようなことがあったら。
会社では、今まで結婚や恋愛の対象だと考えられなかった人がバリバリ働いている。よくよく見れば営業部署では皆見た目がパリっとしていて口もうまい。
これでもうすぐ社員旅行で箱根に泊まりに行く、となったとき、宴会の出し物を相談したり、あるいは旅行の企画そのものを彼女氏と共同でやっていたとしたら。
会社で忙しい一日を終え、帰って一息ついたらその人から電話が来て、旅行についてあれこれ話す。しばらく感じていなかった心のときめきに気付く。仕事は忙しいけど、なんて充実した時間だろう!
そこに電話のベルがまた鳴る。ドキドキしながら受話器を取る。
「洗濯機が届いたよ」――新郎の声だ。
「はぁ?」(二度と電話してくるんじゃねーよ!)
これは状況証拠から積み上げた推測であり、事実だという証拠は一つもない。
彼女氏の不可解な言動の奥に「別の男」を想定できるようになるまで長くかかった。ようやく今頃、点と点が繋がった。
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