第11話 クリスマスプレゼント
その後実家から電話があった。12月25日に式場で打合せがあるという。イブに彼女氏に何か予定があるとしても、クリスマスに全然会えないわけじゃないと分かった。
この年は12月23日から25日まで金土日と3連休だった。クリスマスに連休に新居に一人でいるのはつらすぎることもあり、23日に東武デパートに寄りプレゼントを買って、25日まで実家に戻ることにした。
24日。普段親二人で住んでいる実家では、クリスマスといって何の行事があるわけでもない。ケーキさえ買っていなかったし、イブになぜ一人でいるのかも特に聞かれなかった。夕飯の後に見たお笑い番組が妙におかしくて、涙が出るほど笑った。
25日の午後。式場の打合せは普通に進んだ。衣装合わせだったように思う。すぐ終わって彼女氏の実家に来るよう誘われた。
こたつで向こうの両親と彼女氏と、あと自分の4人で雑談になった。これそのものはよくあったこと。まだクリスマスであるから、折を見てバッグから包みを出し、彼女氏に渡した。
「あらあら〜」
とはしゃいでいたのは向こうの母親だった。
母親に促されて彼女氏が包みを開けると、真っ赤なエプロンが出てきた。彼女氏はエプロンを胸に当ててみて、それから、ふむふむとうなずいて荷物をしまった。
――受け取ってもらえた――
そういう意味では最悪ではなかったが、こっちに目を合わせることはなく、何の言葉もなかった。
お礼を言ってもらうためにプレゼントを用意したわけではないが。
期待はしていなかったが、彼女氏の側からは、何も出なかった。もちろん、こういうものを見返りを求めて渡すものではないが。
といって、この状況で釈然とできたらそれは神か何かだ。
彼女氏のクリスマスは終了していて、25日は単なる日曜日だということなのだろう。
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