第8話 新婚旅行には行かない
前回の電話はまだ続きがあった。
「だいたい、まだ決めることがあるんだから」
もう少し、連絡の大切さについて念押しすることにした。
「えー、まだ決めることあるの?!」
「当たり前じゃないか。旅行だってどこに行くかも決めてないんだから」
「……」
どうも、結婚する、という認識はあれど、詳細については何も考えていないようだった。
「……旅行、行きたい?」
新婚旅行についてはこれが最初の話し合いになったが、初手から、新婚旅行ありきではなく、行くかどうかの話からだった。
「どうしても行きたいか、っていうと、泊まりの旅行はあまり得意じゃないから、パスポートもないし、行かないならそれはそれでいいけど」
「じゃあ、行かないことで」
「まあ、式を挙げてすぐに旅行するのも大変だから、一緒に暮らして、落ち着いてから行くというのもいいかもしれない……」
「分かった、じゃあ旅行はなしね♡」
「電話をするな」ということは間違いだと認めたようだったが、新婚旅行に行かないということをこんな形で、向こう主導で決められてしまった。しかも、旅行に行かないことが分かってうれしそうだった。
このときは「旅行には行きたくないんだな」ぐらいに考えていたが、本当はもっと違う理由だというのは徐々に判明する話。
この時点で分かるのは、「電話をするな」と言ったり、一緒に旅行には行かない、と決めた婚約者と、結婚だけはするつもりがあるということ。
それと、自分の言動に相手がどう思うかは全く考えていないようだった。
自分と夫婦になるつもりがあるなら、信頼関係はいつかは構築できるかもしれない、とまだ楽観的な考えがあるにはあった。
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