第52話 セツラ狩り
現状、我が国国内で反政府活動の主体になっているのはセェツランが組織化したセツラだ。
組織をほかの地域に拡散させることだけは阻止できたが、警察が調査に入ると、電話連絡網やアマチュア無線機の法的には禁止されているデジタル暗号化通信いわゆるスクランブル通信で連絡をされてしまう。
我々はブリザンド星系帝国が抱えていた闇の深さを思い知ることになった。
彼らはチェイン人民共和国の消滅後も活動を続けており、彼らの言い分では【自分たちは世の中のために活動している】【真に平等な社会をつくるためだ】などいうことらしい。
しかし、残念ながら彼らの組織は以前に述べた階級社会であり、厳然とした身分制度がある。【真に平等な社会】をつくるのに、わざわざいじめられ役の【グスライテェイング】階級を保持させる計画だなど人道的に許されることではないだろう。
その後の調査で、トーマス・アーレイ氏がチェイン人民共和国に感づかれた原因が、彼の妹がスレイブ階級で、実の兄を見下していたことが関係していることも分かってきた。
ただ、彼女は最上級のエクセレント階級の存在を知らなかったようだ。
マスター階級に上がりたくて兄の情報を色々売りつけたり、罠にはめたりとしていたらしい。これではトーマス氏も家庭内でも針の筵だろう。
セツラとしては、アーレイ家は腐っても皇統の分家筋の血筋なので、まかり間違ってもマスター階級にはあげなかっただろう。トーマス氏の妹は利用だけするだけして捨て駒にされてたということだろう。
こういう人を人として見てないところが非常に報告書を呼んでいて私は嫌になる。
セツラも国と国民のためには狩りつくす必要があるだろう。
一方、モリアーニ家の取り調べで、モリアーニ家は、アーレイ家に関する認識を二転三転させている。
アーレイ家を皇統の分家の血筋だとは思わなかったとか、先祖代々申し送りで断絶するように動いていたとか、皇統の名を汚すからつぶそうとしていたとか、ろくでもない発言が次々と出てきている。
整理すると、どうやら当主と当主に近いモリアーニ家の者はアーレイ家が遠いといえ皇統の分家である銘家であることを知りながら、それを名字が珍しいから外国人の家系だと誤情報を流し、嫌がらせを行なったり、家系断絶に誘導したりしていた。
その後の調査で、モリアーニ家とアーレイ家が争っていたのは二百年は昔にさかのぼる。事の発端はモリアーニ家がアーレイ家の当主を謀略の果てに自害させたことだ。
その後も、アーレイ家が皇統の分家であることから爵位を与えられれば、それを剥奪されるように民衆を扇動して騒ぎを起こしたり、一方的な損害をアーレイ家に与えてきた。
アーレイ家は皇統の分家であるため、代々、情報を皇家や政府に上げるのを役目としていた。そのため本家筋は表に立たないようにしていたが、モリアーニ家との争いで表に出ざるを得なくなり、その役目が十分にはたせなくなっていたようだ。
モリアーニ家の嫉妬がなせる業かともいえる。最近では皇統であるモト家の末流だとモリアーニ家は名乗っているが、事実は異なる。
1500年以上続く銘家の血筋に対抗しようとしているようだが、それで彼らの行為が正当化できるわけではない。
私個人の意見としては、アーレイ家は敵対してきた相手はどうにか押しのける必要があったのではないかと思う。かたくなに守勢に回っているのがよくなかった気がする。
表に出るのを嫌ったのは役目の性質上仕方がないが、国や家が断絶を仕掛けられる状況でそんなことを主張すべきではないだろう。
伝統の一言で切り捨てるのは古い家の悪い面だ。伝統にも理由があるが、理由が崩れれば、その伝統を脱ぎ捨てる必要があるだろう。
そのモリアーニ家にしてもセツラに蚕食されてまともな家としての統制を失っている。
因果なものだと思う。
セツラ狩りの命令書に私はサインをして、これで旧ブリザンド星系帝国領内の状況が好転すればと切に願わざるを得なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます