第51話 暗殺者
私はこのところブリザンド星系帝国内の安定化作業のための指示だしをしていることが多い。
ローディシア連邦との戦争はイワンが指揮を執ってくれている。いまのところとりためて問題らしい問題は起きておらず、先日ようやくだがチェイン人民共和国の制圧が完了した。
予測通り、かなりのチェイン人がローディシアに逃げている。
これに対してどのような対処がいいのか、迷うところだ。宙域を封鎖するべきか、それとも封鎖後に星域ごと処分するのか。あるいはアンドロイド兵の投入で強襲制圧すべきなのか。
悩みは色々でてくる。
コーヒーを飲んで一息ついたところで、一枚の資料がおちていた。
【巌窟王トーマス・アーレイ氏関する追加報告・親類縁者に対する暗殺未遂事件】
気になっててにとって読んでみると、どうもトーマス・アーレイ氏の伯父にあたる人物が自動車を運転中に、手を振られて、道路脇に寄せたところで、薬物を顔に噴射され、脳溢血を起こし倒れたというのだ。
この事件は、その近所に住んでいた老年女性の通報で、歩道に倒れていた伯父を発見して、警察に連絡し、そこから救急車で運ばれたらしい。
重度の記憶障害と言語機能の喪失、半身不随などをおこしていたそうだ。
当時、通報した女性はだれかに話を聞いていた直後に倒れたのを目撃したと証言していたが、警察側は単なる突発性の脳溢血と判断し、事件にはならなかった。その後この証言を女性は翻している。
その後の我が軍の調査で、犯人としてチェイン人の女性が浮かび上がっており、これはチェイン人民共和国批判を繰り返すトーマス・アーレイ氏への警告だった可能性が高い。
チェイン人民共和国の共産党軍暗殺部隊シェジンの犯行であることが浮かび上がっている。
残念なことに薬物の確認はできなかったが、噴霧で皮膚から吸収されて急性脳溢血を発生させる抗生物質やステロイド系薬物はいくつくか知られており、疎水性の物質である可能性が高い。フェニル基あるいはアニリン系のアミノ基のある物質だろうとのことだ。
今回追加調査を行ったのがトーマス・アーレイ氏の関係者だったが、それ以外にも暗殺されたり、されかかかって重度の障害を被った人物はいるに違いない。
暗殺者と聞いて、ローディス連邦も暗殺者を送るのが好きな国だったなと思いだした。
すこし、対策を考えなければならないようだ。
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