第50話話 パソコンに仕掛けられたデーター送信装置

 前回に引き続き、今回私が手に取ったのはチェイン人民共和国が情報収集につかっていた仕組みについてのレポートだ。

 前回の幻聴装置兼盗聴装置と基本的に構造は似ている。

 パソコン内のハードディスクやメモリ上のデーターをマザーボードの装置で抜き出して、電源の線に乗せるやり方だ。あるいはルーターなどに仕掛けられている。

 電源装置ににまで仕掛けられている場合もあれば、電源回路での減衰を覚悟のうえでマザーボードだけで完結している場合もある。

 電源の線をつかったツーピアツー通信だ。

 これでファイアーウォールやそれを載せたプロキシサーバーを通らず情報を送信できる。

 チェイン人民共和国製のパソコンに多く、ブリザンド星系帝国国内メーカー製であっても、生産地がチェイン人民共和国であれば仕掛けられていることが多い。

 電線を伝う為にそういうパソコンやルーターで中継を繰り返す。その結果として、ネットワーク上にはなくても、情報を抜き取れるという仕組みだ。ルーターで電線から切り替えて、ネットワーク上の複数のサーバーを中継地点として送り付ける仕組みの場合もあった。

 パソコンとルーターがRUNネットワークでつながっていなくても、電線でつながっていればデーターを抜き取れるわけだ。

 実現する為には、それを仕掛けたパソコンやゲートウェイが普及する必要がある。だからチェイン人民共和国はパソコンの生産と輸出、ルーターをはじめとしたゲートウェイ装置の生産と輸出に力を入れていた。

 そしてそれらの情報がシャンペーの大規模地下要塞にある中央情報センターに集まる仕組みになっていた。

 チェイン人民共和国のメーカーはほとんどチェイン共産党人民軍の将校が経営者になっており、また合弁会社でも責任者は軍人や共産党の幹部であることが多かった。


 こういうやり方でチェイン人民共和国は相手国の情報を抜き去り、あるいは情報局員の支援を行って、諸国で猛威をふるっていた。


 ブリザンド星系帝国の公官庁のルーターなどがチェイン人民共和国製だったりするのは、そうするように左派政権当時の大臣やモリアール家が宰相だった時代に進めたことが原因だ。そのためブリザンド星系帝国の政府情報はチェイン人民共和国に抜き取られ続けていた。


 外国の製品を輸入したり使うときはきちんとその審査をする機関が必要だという訓令をこの事実は私たちに伝えてきている。

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