第49話 共産圏の作る幻聴装置

 私はひとつの資料を手に取った。

 題名は「共産圏が作る幻聴発生装置」だ。これはいくつかの種類がある。直接脳に電磁波で信号伝達を行って幻聴を発生させるもの。頭部内、特に三半規管なのどの水分に干渉を与えて、微細な振動を起こし幻聴を聞こえさせるもの。骨に振動を与えて幻聴をきこえさせるもの。

 大抵の装置はマイクロ波での伝達で行われている。マイクロ波は水分子に吸収されやすいが、同時に信号を保持したまま放出される性質もある。したがって狭い部屋などを標的にメーザーを照射すればそのなかは幻聴を起こすマイクロ波でいっぱいになる。

 幻聴機は特定の周波数で特殊な周波数変調をかけれるメーザーダイオードと抵抗器とマイクロコンピューターボードがあれば作れてしまう。それに加えて、マイクを乗せて、マイクロコンピューターのROMにリアルオペレーティングシステムを載せてタスク管理をするプログラムをのせれば、幻聴機兼盗聴器の出来上がりだ。

 これをコンセントの配線の内部にしかけて、制御信号自体を電線をつたって行えるようにすれば、それ自体は電波を発生させずとも、別のところから音声を受信したり、任意の時間に幻聴を発生させることが可能になる。装置自体は手のひらに収まるくらいで済むのが厄介だ。市販のボードをつかわないのであれば、もっと小さく出来るだろう。

 送電線の通信は電柱などにある送電トランスで減衰されるが、近くの別の施設や建物なら届くのでそこで電線上から信号をひろってインターネットワーク上につなげれば、電波を発生させずに済むので、発見がし辛い。


 なかなかよく考えられた仕組みだと思う。


 しかし、人工的に幻聴を発生させるようなものをつくって健常者を精神障碍者に仕立て上げて、影響力をおとさせたり、社会的に排除するとか、やることはどこまでもえげつない。


 マグネトロンで幻聴機をつくっていると偽の情報を流すところがまた酷いと思う。地球で言えば、一昔前の電子レンジの中身がこれだ。コイルをつかってマイクロ波を発生させるしくみだ。

 それに比べてメーザーダイオードは非常に小さい。発光ダイオードの仲間だからある意味とうぜんだが。これのほかにHF帯ダイオードみたいな周波数の低いダイオードもつくられているという。これも幻聴や、広範囲通知用の機械につかわれているという。


 重力場通信をつかっている我々からすればずいぶん前近代的なシロモノだが、幻聴を発生させるという点については、他に代用品が見当たらない。


 通信事業者が関与して、装置の一部が電柱上に仕掛けられた例もあるそうだ。

 

 こんな資料を読むと、共産圏死すべしと思うのは私だけだろうか?

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