第48話 ブリザンド星系帝国の悲運
チェイン人民共和国の制圧が粗方終わり、今度は、宣戦布告もないまま、ローディス連邦との戦争だ。
それはともかく私は戦争の指揮などでたまってた書類仕事を片付けていた。
いま手に取った資料をみると『宰相幕閣長官・公安警察・チェイン人民共和国のつながり』と題されている。
これはブリザンド星系帝国で刃とあだ名された公安警察官僚から、ブリザンド公安委員会長官、そして宰相幕閣長官までの出世を繰り返した、ある意味で偉人の、売国行為をつづっている資料だった。
公安警察の時にチェイン人民軍の協力で、やらせ捜査をすることで、手柄をあげつつ、同じ官僚のライバルを冤罪で蹴落としていったとのこと。
そして公安委員会長官のとき、運営費の無駄を減らすとして、つぎつぎと覆面警察官や情報提供者の公安警察のネットワークや、一般警察のネットワークを切り捨て、それに反抗するものは、冤罪でつぎつぎ投獄するということをこの人物はやった。
そして、公安警察内部の情報をチェイン共産党に流し、現地で活動していた覆面警察官を間接的に謀殺した。
ちょうどモリアール家がチェイン共産党の下部組織セツラに蚕食されはじめた時期と重なる。
ある意味現状の元凶といっていい人物かもしれない。ただ、それ以前の歴史でトージェイン家やツジェーン家が薬物売買などを行う共産主義シンジケートの母体組織があったからできたことともいえる。
どの点で、線引きをするかは歴史家というより、個人個人の感性による違いが出るだろう。
公安警察が無力化された原因はこの人物だと断言できる。その結果として、警察組織内にチェイン共産党のシンパが生まれていく。
トーマス・アーレイ氏が冤罪で刑事告訴された遠因もこの人物だろう。
書類仕事を終えて首を回すとコキリと音がした。痛くはないが、けっこう嫌なものだ。
資料を読み進めていくと、ブリザンド星系帝国は選帝侯の群雄割拠状態なうえに、中央は中央でチェイン人民共和国に侵食されていた。
結局いつの時点かでチェイン人民共和国と戦争になっていただろう。
現状だと、チェイン人民共和国の残党がいる星域で、粛清のあらしだそうだ。
粛清の罪状は国家情報が仮想敵国に洩れて、国家を危機に陥れたことらしい。
まあ、共産主義国らしい反応だ。危機的な状況に陥るとなぜか粛清祭りを実行する。
ひょっとしたら例の人工因子のせいでそのような政治構造になっているからかもしれない。
どちらにせよ残るチャオスー星域なども順次破砕処理をしていく予定だ。
問題はローディシアに逃げ込んだチェイン人だ。
共存できない以上、ある時点でローディシア連邦内部で反乱がおきる可能性が高い。首謀者のチェイン人は表に出てこないだろうが、ローディシアがそれを見抜けるかだ。
もっとも見抜けても、先に仕掛けられた以上こちらとしては滅ぼすしかないのだが。
ローディシアを征服すれば、このバービル銀河での戦争も一息つけるかもしれない。そのことに期待しよう。
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