第46話 チェイン人民共和国制圧戦④

 制圧戦が五カ所からの侵攻制圧に変わり、進行速度ははやくなっている。

 一方、旧ブリザンド星系帝国の旧体制司法組織への調査は妨害などがあるなか進みつつあった。

 AIによる調査でざっと見た限り、チェイン人民共和国の細胞になっていた司法関係者のほとんどが、合法・非合法の借金があることが明らかになってきた。

 それ等に対し、セツラの細胞といえる警察官などが指示を下していたことが明るみに上がってきた。

 また、やらせ捜査での冤罪事件で主要な役割を果たしていた証人などの人物なども、本人ないし家族が借金をしており、それが基点となっているようだった。


 借金を背負った原因についても捜査させているが、それについてもマッチポンプ的な罠にはまった例が頻発している。

 刑事が誘惑されて、関係をもったあと、相手女性が未成年だったりして、美人局で、弱みを握られ、現金を吸い取られて借金を背負った例もあった。大人びた服装(そこそこのブランドものの服)と化粧でごまかされてしまったわけだ。

 この誘惑をした未成年女性はもちろんセツラの構成員だ。


 こういう汚いやり方でチェイン人民共和国は侵略中の国家へ細胞を広めているようだ。細胞が細胞を生む。悪循環もいい話だ。

 モリアーニ家が保守系の家でありながら共産主義に蚕食されたのもこのやり方をされて嵌められたことが原因のようだ。

 だが顕職にありながら、それを止める義務を怠った罪は重いだろう。国と家をかけて、家をとり、結果として国家が滅ぶ方向へ導いた。



 ペッターニ王国の植民都市とされていた歓楽都市マーカも占領した。

 実質、チェイン人民共和国の闇マネーの中心がここにあった。

 タックスヘイブン、つまり無課税の都市だったが、その内情は賭博のみならず、薬物売買などを外部に対して行う交渉場になっていた。

 闇金融の中心都市といえた。

 ペッターニ王国からは抗議が届いていたが、無視である。自国で管理もしきれないような都市にした責任は向こうにある。

 もっともチェイン国民党とチェイン共産党を結ぶハブの役割もこの都市ははたしていたようだ。

 チェイン国民党は内戦に敗北し、旧ブリザンド星系帝国領のターチェイン星域を占拠して国家をつくったが、内実、チェイン共産党と深くつながりがあり、傘下のコンピューターコア企業であるTSMコアにダンピング輸出をさせることで、周辺国のコンピューターコア事業を廃業に追い込み、そのうえで、コンピューターコアの輸出を絞りに絞った。

 一方で、チェイン共産党には安定供給を行い、軍事産業の下支えをしている。

 問題なのがそのTSMコアが、コンピューターコアの供給と引き換えに、ブリザンド星系帝国内のベアード星系に閉鎖的な生産区画を設立したことだ。

 この生産区画はチェイン人でなければ管理職になれず、ブリザンド人は単純労働者しか受け入れてない事だ。

 実質的なチェイン人民共和国の植民地と化している。

 これをブリザンド星系帝国の国策として行わせた与党内のチェイン共産党の細胞がいることだ。


 現在この区画は我々が侵攻した時に厳重に調査を行い、チェイン人を拘束し、侵攻計画がどのようなものか追及している。

 工場長自体がチェイン共産党軍の幹部であるから、ほぼターチェイン国の意向を無視して行ったものだと言えるだろう。

 まあ、ターチェイン国も過去の虐殺で本来の住民がかなり殺されており、チェイン人が幅を利かせてりたり、経済を握っている状況なので、ブリザンド側としても扱いに困っただろう。


 現在、ターチェイン国への出兵準備を開始している。チェイン人の外部との窓口はできる限りつぶさなければならない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る