第45話 チェイン人民共和国制圧戦③

 予測はしていたが、やはりという感じだ。旧ブリザンド星系帝国領内で、市民団体が武装して蜂起した。

 すでに国内のチェイン人は排除されているから、洗脳を受けた人員が事前計画によるものか、新たな向こうからの工作員によるものである可能性が高い。


 これに対してこちらとしては非殺傷弾の類、電子銃などを利用して制圧をはかった。

 即殺さなかったのは、情報を得る為という側面が大きい。

 量産型アンドロイド兵にそれなりの損害は出ているが、予定の範囲内といえる。


 ノトス州やボウスウ州などの星域にセツラなどの反政府組織の武器の蓄積所があり、また、一部のケイシ学院というブリザンド各地の大学内に作られたチェイン・ブリザンド友好協会の建物などにも少数だが保管されていたらしい。

 スター・パシフィックオーシャン・アゼイン研究所という表向きは民間シンクタンクのふりをしていたチェイン共産党軍の下部組織の実態も明らかになってきている。

 この学術研究組織はブリザンド星系帝国のテレビ局などでコメンテーターを行う人員がおり、ブリザンド星系帝国のメディアを経済的に支配したあとのブリザンド星系帝国内でのプロパガンダと洗脳放送を行わせるために存在していた組織のようだ。

 この研究所の設立にブリザンド議会の諮問機関ブリザンド学術会議の関係者が関わっており、何度か、研究所と共産党宇宙軍との関係が暴露された結果、学術会議自体が権威と信用を失っている状態にある。

 もともと学術会議は、研究・教育問題における諮問機関としての役割を果たしていており、直接権益とならない基礎研究などの支援などを継続させるために設立された側面がある。


 しかし、度重なるモリアーニ家の権益との関係でのセツラの活動によっての腐敗がが蔓延し、最近では、その役割を果たしているとは疑わしい状態になっていた。


 モリーアニ家の派閥からでた宰相に対する基礎研究に関する取扱いへの改革案への抵抗ができなかったのがその主要原因らしい。

 この結果、基礎研究の予算が減らされ、ブリザンド星系帝国の学術レベルは下がる一方となった。


 学者の権威付けに利用される組織となっており、ごくまれだが場合によっては、若手研究者のレポートを盗み取ることすら行われていた形跡がある。


 このため一般国民からは老害組織扱いを受けていた。

 私としてはブリザンド学術会議の正常化をさせて、一部権利を廃止するのが適当だと考えている。監査組織がうまく動いていなかった側面も大きいだろう。

 宰相の任命権で任命される組織であるはずが、ブリザンド学術会議側が推薦する名簿の人間はすべて宰相が受け入れるという慣例がまかり通っており、宰相の任命拒否に対して抵抗するというとんでもないこともやっていた。

 ブリザンド学術会議の会員の選任権は宰相にあるのが法律的にも正しいはずだ。

 我が国に組み込んだ以上、抵抗するならいくら何でも一度廃止にせざるを得ない。


 確実に元宰相のモリアーニ家の権威をもって宰相を押さえつけようとしていた。


 この背後や内部にセツラの関係者がいたことから、チェイン人民共和国側の意図も見え隠れしている。

 ブリザンド星系帝国の技術開発能力を奪う為にブリザンド学術会議を老害組織に誘導したとしか考えられない。


 ブリザンド星系帝国各地の大学にケイシ学院が設立されたのも、学術会議の権威と認証があったためだ。


 その結果として現在内乱が起こされた。


 旧ブリザンド星系帝国領の立て直しをしつつ、洗脳された若者たちをどうするかが課題だ。


 すでに教育機関には教育用のAIを多数派遣し、各種学校の立て直しを開始はしていた。

 しかし、いたるところで抵抗を受けているのが現状だ。

 私はもとより【ルエル連邦】では学内自治は一切認めていない。それ自体が腐敗の温床となるからだ。

 現状の学校組織を改編して、【ルエル連邦】基準に持っていくというのはあきらめた方がいいかもしれない。


 まったく別の教育組織を作り、そこへ義務的に通学させるほうが合理的だろう。


 なんにせよ、これでチェイン人民共和国によるブリザンド星系帝国内における反政府組織の全体が見てきた。


 シャンペーを消滅させた影響は大きいようだ。


 現状我が軍はシャンペー宙域の複合要塞化を終えて、首都星系ペイジン宙域へむけて軍を編成中だ。


 その一方、旧ブリザンド星系帝国領に対する艦隊攻撃を仕掛けてきていたノクトフェリア民主主義人民共和国の軍事星系であるニンポーへ攻略艦隊が派遣され、現在戦闘中だ。


 現地の映像を見る限り、こちらの優位性は崩れることはなさそうだが、ノクトフェリア民主主義人民共和国の艦艇に交じってチェイン人民共和国の艦艇が存在していることを確認した。

 おそらく事前に義勇兵という扱いで送り出した共産党軍の一部だろう。


 ニンポー星域はかなり整備されており、大麻と、覚せい剤の合成でお金を国家運営の資金をどうにか稼いでいるノクトフェリア軍にしては整備の具合が半端ではない。

 さすがに移動型要塞はないようだが、固定式の要塞があちらこちらに配備されている。

 チェイン人による遺伝的侵食をノクトフェリア国民が受けていなければよいのだがこの調子だと期待は持てない。


 ノクトフェリアへの侵攻に関して、こちらも予想通りだが、ブリザンド星系帝国内のトージェイン家の関係者が動いている。

 今まですぐに戦争にならなかったり、旧皇家のことを『政変の際に成り代わったフェリア人』だとモリアーニ家と一緒に喧伝していたトージェイン家のロジックが見えてくる。

 ノクトフェリアに頼まれて、ノクトフェリア批判を抑えるように方々へお金を配ったり、右翼団体に圧力をかけて動かしていたのがトージェイン家だ。

 トージェイン家としてはノクトフェリアに薬物の違法輸入をとめられると経済的に行き詰るからだろう。

 つまるところノクトフェリア人を取り締まれないのは皇家のせいだということにして、実際はトージェイン家が司法機関などを動かしていた事実を隠すのを目的としていたわけだ。


 自分たちに都合の悪いことを皇家の性にするのは大戦前にトージェイン家から帝国宰相になった人物以来の伝統なのだろう。

 いやな伝統だなと私は思う。

 ノクトフェリアを堕とせば、トージェイン家の勢力は減退するだろう。覚せい剤の合成工場や、大麻の畑や大麻樹脂の製造工場が見つかれば、トージェイン家の関係者を潰す大義名分が手に入る。

 もっとも、現状旧ブリザンド星系帝国領は軍政をしいているが、その期間は伸びそうではある。

 ニンポー星域を堕とせば、ペイジン星域へのルートが増える。

 戦争は次の段階へ進みそうだ。

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