第41話 シャンペー星域破砕戦
我が軍が標的にしたシャンペー星域は、無人星域をはさんでそれに隣接するようにナンケン星域というチェイン人民共和国の主要都市星域がある。
チェイン人民共和国は大きく三つの大星域と辺境の岩石惑星星域から成り立っている。
クーエン領域と呼ばれる交易に使われ、ブリザンス星系帝国と隣接している領域にシャンペーはある。ただ、その間にそれなりの距離のある空白領域がある。
シャンペー付近には人民宇宙軍の駐留星域であるパイネーがある。
ブリザンド星系帝国側から出兵するれば、チェイン空白領域と呼ばれる場所で鉢合わせすることになるだろう。
そこで今回、別の場所、つまり銀河天頂領域と天底領域から艦隊を送り込み、いっきに星系を破壊するという作戦をとることになった。
私個人としてはいきなり星系事破壊するような兵器を設計したり準備することになろうとは思っていなかった。
今回投入されるのは4500kmタナトス級の改修型で主砲を50km収束型プラズマ砲に換装したものになる。
クラフターAIのラグナがはりきってこの砲の開発をしたのは想像に難くない。
遠距離砲撃行う為、プラズマの空間分散崩落を防ぎつつ、標的を完全に貫通して破砕する必要がある。
そのため、発射されるプラズマは砲身からまっすぐにしか飛ばせなくなったが、380光年さきから命中させれる精度となった。
また惑星の地下推定4000mあるとされるシャンペー地下シェルターの共産党情報統括本部兼共産党対外工作実施省の施設を完全に破砕できる能力を与えられた。
もっとも全力攻撃すれば、惑星の公転軌道をゆがめる可能性もある。星全体を破砕することも予定にはいっているため今回は実施に踏み切られたわけだ。
地球で同じことを他の勢力を保護しつつするなら、公転軌道計算の上で、角度をかえつつ多方面から砲撃することになるだろう。
それに加えて、今回グランドバスター型の三重水素レーザー核融合ミサイルも用意されている。
バンカーバスターの後継でさらに深いところを攻撃できるというのでグランドバスターという名前だ。
今回用意されたのは重力推力ではエネルギリアクターを乗せる必要がある為、縮退炉型の小型エネルギーリアクターを使うもの。イオンプラズマモーターで飛翔するタイプのものなどが用意された。
地面の破砕方法も、破砕用の限定的な核融合を発生させたうえでつっこんでさらに背面部分の核融合爆発装置を中へ侵入させて爆発させるもの。
着弾面からドリルで掘り下げるもの。
と、これらの組み合わせで、いろいろなタイプのグランドバスター型核融合ミサイルが準備された。
なんとなくラグナが狂喜して開発したことが目に浮かぶ。
重力推進型では、さらに縮退炉の暴走爆発もさせる仕組みのミサイルとなっている。
暴走に巻き込まれれば惑星は壊れること請け合いだ。
そしてこの日イスカンド星系からチェイン人民共和国の壊滅を目的とした艦隊が出航した。
迂回するとはいえ、そうたいした時間ではないだろう。
ちなみに有大気惑星内へ普通の荷電粒子砲を放つと、熱伝搬がいっきにおこり、大気が過熱される。そして大気内の上面で巨大な爆発が発生し、プラズマが熱崩落をしつつ、一気に拡散する。
そのような理由で単なる荷電粒子砲では地下はおろか、地上設備の破壊も難しい。もちろん上空からの電磁放射による電子部品の破砕は広範囲におこるが。
しかし、我々の持つ荷電粒子砲は背後からレーザーで標的に命中するまでエネルギー供給を行うほか、レーザーにより外部との接触を無くす技術もあるので、それも利用し、標的にあたるまで熱崩落がほぼ起きない仕様となっている。
光速を越えた速度で飛来して、標的の部分では減速し、エネルギーを伝搬させる仕組みとなっている。
したがって大気のバリアがあっても突き抜けられるわけだ。
【銀河ユニオン歴】20年10月27日。我が軍の艦隊は所定位置につき、チェイン人民共和国の交易星系兼軍事星系であるシャンペーへの攻撃を開始した。
私たちは会議室で戦争の様子を眺めていた。
最初に交易惑星シャンペーの都市シャンヘーの砲撃が開始された。
都市のビル群が次々と焼け落ちて崩壊していく。
まずは上物を破壊して、地下設備への攻撃を楽にするという作戦だ。
近辺の宇宙軍基地のある星系にはすでに別艦隊がブリザンド星系帝国側から進軍し、相手の艦隊を引き付けている。
シャンペーへの直接攻撃に対して共産党人民宇宙軍は有効な手を持っていない様子だった。
上物の破壊が終わると、今度は各種ミサイルによる地下施設への攻撃の開始だ。ビルの残骸や道路につぎつぎとミサイルが突き刺さり、地下へミサイルが進んでいく。
最初につかったのはドリル型のミサイルだったらしい。
地下でなんども爆発が起きているようだ。
その次は二段式の核融合ミサイルだ。だいたい地下1800mくらいまでは破壊ができている様子だ。
トドメの重力推進型ミサイルを撃つ前に、改修タナトス級の50km収束荷電粒子砲による砲撃が開始された。
相手の都市が丸ごと焼き尽くされ、それがさらにちかの施設へと伝搬していく。
結果的に相手の地下施設の破壊は予定通り完了できたらしい。
しかし、さらに重力推進型核融合ミサイルが発射された。
このミサイルはシャンヘーの破孔から内部へ侵入し、そこの最下層近くで縮退炉の暴走を発生させた。
ブラックホールが形成され、いっきにまわりのものを収縮していく。
惑星全体に亀裂がはいり、そしてブラックホール中心部に吸い込まれていく。
最後にパルサーを発生しつつ、急激な爆発を起こして、惑星シャンペーは消し飛んだ。ブラックホールの急速蒸発によるものだった。
γ線放射やα線放射、β線放射などが強烈に発生し、シャンペー星系はいっきに死の星系となった。
電磁放射が激しい為、生きている生物はほぼいないだろう。
わたしとしては普通の戦争とは違って、なんともいえない後味の悪さを感じた。
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