第40話 物事の本質

 ブリザンド星系帝国の巌窟王という資料を私は手に取った。


『 ある一つの事象について、正誤を判断しようとしているとしよう。

 そのとき必要となるのはバイアスのかかっていない、正確で正しい情報だ。

 権力者に阿って、意図的捜査と意図的情報操作が行われた調書では正確な事象はとらえられない。



 そして一見枝葉にみえる情報も、きちんと正確に集めていけば、別の面が本質であることがみえてくる。


 拇印をおしてもいない内容の調書がでてきて驚いた。


 これを検事が正確な資料と判断しているなら、私の起訴は確定だろう。


 だが、現実におきた事実は、真実は違う。


 チェイン人民共和国の情報をすっぱ抜いたり、批判をネットワーク上で行っていた結果、チェイン共産党から、セツラへ私の排除命令が下り、モリエール家にはモリエール家の邪魔になる無能ものとしてセツラから報告された。



 その結果モリエール家が警察と検察に圧力をかけ、本来発生していないはずの、強制猥褻あるいは強姦といった事柄が起きたとされた。


 その当時、付き合いがあったのは別の女性で、そのときの彼女は友人の一人だった。


 かつてはつきあったが、恋愛がよくわからないという彼女に驚かされつつも、友愛に近い恋愛をはぐくんだだろう。しかし、環境が悪すぎた。彼女の両親は恋愛を一切認めないという。だから隠れて付き合うしかないというのが彼女の言だ。


 しかし、私は彼女と結ばれながら、破綻することが見えてきて、自ら別れを告げた。


 しかしそれが警察の調書では。私が思いを募らせて彼女に告白して振られたあとも彼女に思いをつのらせ、今回の凶行にはしったとしるされていた。


 断じて私はそのような調書に拇印は押していない。


 ここまでくるとモリエール家の圧力の半端のなさが感じられる。悪意すら感じる。


 検察官はモリエール家のことは調べる気がないようだ。どうも警察でもモリエール家のことに言及するたびに言葉を遮られた。これは相当深くまでモリエール家が司法機関に入り込んでいると考えていいだろう。


 本質はチェイン人民共和国によるブリザンド星系帝国のチェイン人民共和国に批判的な人物の排除に警察や検察をモリエール家が利用して実行に移された冤罪事件だ。


 しかしこの事実は、それこそチェイン人民共和国が滅びでもしない限り証明する機会はこないかもしれない。


 私も年だ。懲役で牢に入れられたらたぶんそこで終わりだろう。刑務所内部で始末されることも計算に入れなくてはならない。


 うちの家はモリエール家とフロント家の家臣団どうしで敵対関係にあったリッチモンド家の本家筋の分家という微妙な立場だ。モリエール家は執拗にリッチモンド家を排撃してきた歴史がある。口実があればよろこんでやるだろうことも予想できる。


 この要素も検察は考慮してくれないだろう。早期結審をはかりたい裁判所はなおさらだろう。


 明日が来るのが怖い。byトーマス・アレイ』



 読み終えると私は思索にふける。

「これは現実に実力行使しないと・・・・理解してもらえんかもな。しかし、いちど実力行使すれば、状況がおちつくまで行使しつづけるしかなくなる。

 直接の凶悪犯罪はモリエール家はあまり起こしていない。むしろその補助だ。その意味で権力行使で凶悪だともいえる。」


 隣に来たレリアがさらっという。


「シャンペイへの砲撃を進言するところですね。あそこがつぶれれば帝国内のセツラは機能の大半をとめざるを得ません。」


「惑星事焼くしかないのか?」


「都市惑星を全滅させた方があとあと楽ですよ。AIの開発拠点でもあるみたいですし。あちらの据え置き型のコンピューターはそうそう動かしようがないですしからね。うごかしたとして・・・・。おそらくほかの国の間諜に奪われるでしょうから。」


 結局私はシャンペーへの砲撃と核攻撃の書類にサインした。


「グランドバスター型のレーザー核融合ミサイルもしようしてみましょう。」


「めんどうそうだな。地下900階のシェルター構造だっけ・・・・よくもまあそこまで掘り進めたもんだ。」


「むこうの吉数の9で止めている部分も彼ららしいですね。」

 

いやらしい話だ。

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