第37話 犯罪組織で行われる洗脳方法のレポート
私は今日もレポートを読んでいる。その日手に取ったのはブリザンド帝国における犯罪組織かつチェイン人民共和国の工作機関でもあるセツラで行われている洗脳についてのレポートだった。
セツラは階級が五つに分かれている為、それぞれの階級における教育方法が異なる。
また地球で有名な『ヘルバルトの段階的教育法』に似た、段階的教育を行う。
幹部クラスのエクセレントやエリートは自主的に思考し動けるように教育する。
その一方で、マスターやスレイブは指示がないと動かないように教育される。
私が気になったのはガス抜きに使われたり鉄砲玉に使われるグスライティング階級だ。
グルライティング階級は基本帝に、やることなすこと全てにケチをつけるようにマスターやスレイブに行わせる。
結果的に何をやっても評価されない為、自助努力を精神的にできないようにされてしまう。
何度も肉体的苦痛や精神的苦痛を与える事で、努力すれば逆に酷い目に合うと無意識野に刷り込むのだ。
そうすると本人が努力して能力をあげようとしても、ものを覚えれなうなったり、いくら反復してもなかなか学習能率が向上しないようになる。
結果的に無能になり、それは周りからさらに下げずまれたり、差別される状態を生む。
そしてセツラに関係ない人間にも差別されるように形作っていく。
能力が上がらないのはトラウマにより、覚えたり能力をあげると苦痛を味会うということがくりかえされることで、フラッシュバックを無意識に発生させてしまうからだ。
そのため努力しているという意識がないことは意外におぼえれるケースもあるようだ。
そして怨恨が強い。周りにいる人間に対する恨みの意識が強い。
鉄砲玉にされやすいのは、周りにいる人間に、自分が不幸になった原因を、暗殺対象のせいだと刷り込まれるからだ。
この階級の人間は様々な刷り込みが事前に行われているので、ある意識を一つに集中させると、意外なほど簡単に恨みの対象をつくることでき、そして、暴走し、相手を殺す。
恨みが向いている身近な人間の名字が同じ要人などについて刷り込まれるとこの効果は高い。
日本で反社会的勢力が同じようなことをやっていたと聞いたことがある。家族丸ごと、洗脳下におき、対象が恨みをもっているだろう父親などから鉄砲玉の対象者についての情報を刷り込む。
例えばS・K氏という恨みの対象者がいて、それと同じようなH・K氏という要人がいたら、この要人のせいで日本がダメになっているとか吹き込む。
あるいは、M氏という名字の人物がいて、その人物とな名字の、対象者が恨みをもっているR・M氏がいたとすると、それが原因で暴発を起こさせることができる。M氏は実はまったくかなけいないのにだ。
余裕がなくなると人は容易に関連付けを行ってその方向に暴走するのだ。
本人を処分する為に行う場合もあるから、必ずしも要人が対象とは限らないが、しかし、その方法論は確立されている。
恨みが足りない場合は、恨みの対象者を拡散させつつ恨みを蓄積させて、そのうえで誘導する時に一人に集中させる。
まあいずれにせよ外道のやることだ。
こういう思考が偏向されている人物が多いと社会は腐敗していく。共産主義が自滅するのもそもそもこの問題があるからだ。
自己批判を行わせて、自立性を失わせる。
命令にのみ従順なロボットをつくりつつ、「それだから無能なのだ。自分で考えない。」とか原因のくせにそれを言ったりする。
社会は自主的な動きによって支えられている。
自分で考え、動かなければ、その作業や思考の効率は自主的な場合に比べて2割程度しかないという研究もある。
そのため自主性を失わせることは社会の効率を堕とし、生産性を失わせる。生産性が失われれば、直結するのが食料生産などの必須産業における生産量の低下による、飢えの発生だ。
それは極端に人口を減らすことにつながる。そして社会構造も崩壊する。
最悪は文明の崩壊だ。
私はそういう意味で地球における共産主義は文明の敵だと考えている。
生活の最低限を保証する形は必要だ。だが、努力した分報われる仕組みも同時に必要なのだ。
この両輪のバランスを欠いてはいけない。
努力した人間だけが報われるのでは、極端な結果主義、成果主義に陥り、結果的に極端な特権階級化を生み出す。
逆に生活の保障だけでは、人の自主性が失われるだけになる。この場合も一部の特権階級化が著しく進む。
平等をうたいつつその実、かなりの階級社会である共産主義は地球には必要ないだろう。そして今私がいる宇宙においてもだ。
邪魔者だからと冤罪で人を社会的に消そうとする、反社会的組織もいらない。それを行わせている別の国家はもっと存在自体が絶対悪だが。
私はチェイン人民共和国への出兵の計画を立案する為、船団会議の招集を連絡した。
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