第36話 犯罪組織レポート③

 次に私が手に取ったのはモリアーニ家についてのレポートだ。


 モリアーニ家はブリザンド星系帝国の本領から離れた、ノースランド星域に領地をもつれっきとした名門貴族家だ。


 だが、貴族家としての歴史は浅い。


 もともとはフロント家に武装家臣として仕えていた。そしてフロント家の領地を実質的に政変の際に奪った家でもある。

 これにより貴族としての立場を得たが、簒奪家であるため、それまでの貴族家からは評判がお世辞にもよくない。


 武装家臣の流れであり、武断をよしとする家風だ。

 その一方で、当主は非常にバランス調整能力が高い人間が多く輩出されている。


 それと国産主義者であり、製品は国産にかぎると運動を展開するほどの保守系の家系でもある。


 フロント家家臣であったころからなにかとリッチモンド家と諍いが絶えない家でもある。


 政変の前の時期にリッチモンド家を謀略により、排除するという強硬手段すらとった。

 どうもリッチモンド家が皇帝家の分家筋だということをモリアーニ家は理解してなかったらしい。


 この件により皇帝家の分家筋からはずいぶん冷ややかに見られているらしい。それに加えて国の政変時に主家フロント家を裏切り、乗っ取りを仕掛けたことで悪名を轟かせた。


 そのためブリザンド星系ではモリアーニ家はあまりいい評判が聞けない。


 武装家臣の流れで、男尊女卑の考え方で、家長がトップのピラミッド型の本家優先、分家は本家より離れるほど身分がしたという組織構造をモリアーニ家はもっている。


 モリアーニ家はリッチモンド家の関係者への執拗な嫌がらせや押し込みによるサナトリウムへの収監などによるリッチモンド家の断絶工作はともかく、大戦でブリザンド星系帝国が敗北するまではわりにお堅い家ではあった。


 しかし、大戦時の混乱で資産を失ったことが、トージェイン家からの資金援助をうける原因となり、それがもとで、戦後保守系でありながら共産主義組織を支援するという奇妙な状態に置かれていた。


 何代か前の帝国宰相を継いだ時も、その前の宰相との会話が問題視されている。病院に二人きりのきに前の宰相メイク・スモールに枕をおしつけて殺害したなどと噂がツジェーン家とトージェイン家により広められた。


 彼らにしてみれば、殺害が事実かどうかはどうでもよく、それを噂することで弱みにしてしまうのにこのような策をとったらしい。


 そして、セツラへの政府機関をつかっての支援などを行い、犯罪の隠蔽に協力してきたのが現在のモリアーニ家である。

 わりと最近に宰相になったということが政府機関を動かせる原動力となっている。


 一報モリアーニ家は与党の内の政敵を潰すのにセツラを利用したりもしてきた。セクハラで更迭された宰相が出た一件にもかかわりがある。


 そして、与党内でモリアーニ家の後継者として宰相を二度も務めた人物をチェイン人民共和国の意向で暗殺させた下準備を行わせたのもモリアーニ家だ。

 チェイン人民共和国の陰謀を阻止する為に、その暗殺された元宰相の議員は努力していた。

 それが邪魔になったチェイン人民共和国は暗殺をするように細工をして、暗殺者が逆恨みで暗殺を行わせるように指示をセツラに下したわけだ。

 結果的に実行犯はディスライティング階級の洗脳をうけた人物だった。いわゆる鉄砲玉で、証拠がのこらないようにされていた。


 モリアーニの当主はふざけるなと暗殺を断ったらしいが、家中にいる裏切り者により、当主の命令として暗殺計画が立てられ実行された。


 モリアーニ家の家中は家長には制御不能といっていいだろう。その制御はセツラが主に行なっている。


 モリアーニ家はいくつかコンサルタント会社を経営しており、各学校の備品や建造物の建造などを一手にひきうけている。

 いわゆる教育利権というやつだ。

 その延長線上で、セツラの薬物売買を黙認させていたりする。

 セツラの一部は「マリファナは合法だ」なんて嘘っぱちを学校内に流し、販売を違法でないという印象操作すらしている。そしてそれをモリアーニ家がセツラ以外の教師に圧力をかけて黙認させている。


モリアーニ家に関するレポートは以上だ。

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