第35話 犯罪組織レポート②

 次に私が手に取ったのはトージェイン家のレポートだった。


 ブリザンド星系帝国は一度外征戦争で負けている。その裏切りにより敗戦へ招いたのがトージェイン家だ。


 トージェイン家のそのときの当主はグッタイミンガ・トージェイン。


 彼はブリザンド星系帝国が進出した現在のチェイン人民共和国にあったチェイン国の領宙を越えたとところにローデシア社会主義共和国連邦会議がかつては存在していた。


 ブリザンド星系帝国はこのローデシア社会主義共和国連邦会議と激しく対立し、ローデシアのシーアヌス宙域に出兵して激しく戦闘になった。


 しかし、当初はブリザンド星系帝国はコラーリア合衆国という国家の財閥による軍事。資金双方の支援を得て戦闘を優位に進め、バイクル恒星系まで進軍そこの要塞化作業に手を付けていた。


 当時のコラーリア合衆国大統領はブリザンドは我が国の為に戦っていると発言するくらいだった。


 占領地のうち、航路の主要領域は支援の見返りにコラーリアに引き渡す外交的取り決めがあった。


 そのかわり切り取ったシーアヌス宙域はブリザンド星系帝国のものにするという約束だった。


 状況を重く見たヨシワール・ホシランという当時のローデシアの指導者は、ブリザンド星系帝国の内部の協力者に指令を出し、ブリザンド星系帝国のシーアヌス宙域駐留軍を壊滅させる作戦を策定し実行させた。

 このとき壊滅させtるために、現場指揮官を殺害する役割を果たしたのがグッタミンガ・トージェインだ。

 グッタイミンガは憲兵隊に選ばれるほど優秀とされていたが、ほとんどはローデシアの工作員の成果だ。情報工作、不正試験とやれるだけのことをしでかした。


 そして憲兵隊になったグッタイミンガ・トージェインはバイクル恒星系に一個小隊規模の憲兵隊とその護衛隊を編成して送る。


 現場指揮官の捕縛容疑は、軍用物資の着服だ。実際は、グタイミンガ達が荷止めして、その物資を売り払って活動資金にするという自作自演のマッチポンプを行い、その責を転嫁したわけだ。


 結果的に、ブリザンド軍は後方のホースタウン星系まで撤退させられたあげく、そこで激戦になり、ここでも無駄に突撃させられて無辜の兵士たちが摺りつぶされている。


 ここで仕事を終えたグッタイミンガ・トージェインはかねてから、後方のブリザンドの総督府がおかれたチョンラン宙域でマリファナを大々的に、戦争の結果得た資金で栽培を行わせ、それをチェイン国内でローデシアの工作員などをつかいながら売りつけていた。


 それまでのチェイン国はブリタース王国の属国で、そこにおけるアヘンのシェアをほぼ100パーセントもっていた。

 ちなみにブリタース王国もブリザンド星系帝国を準同盟国として支援していた。


 トージェイン家はこうしてブリザンド星系帝国と同盟関係にあったコラーリア合衆国とブリタース王国との関係を決裂させることとなる。一方でローデシアとはつながりを強化していった。


 この当時からトージェイン家は皇帝家を過去の政変の際に成り代わったチョンラン族だという偽皇帝説を広めていく。


 ローデシアの意図としてはブリザンド星系帝国で革命を起こしやすいように皇帝家の求心力を奪おうとしていたようだ。


 そしてトージェイン家はチェイン国内でマリファナの栽培も開始する。


 結果的にそれがトージェイン家の最大の収入源となる。


 それに加え、チョンラン星域ではマリファナにかわりケシ栽培からアヘンの生成も始める。


 一方、コラーリア合衆国と外交上の取り決めが守られなった事からブリザンド星系帝国は戦争になる。


 この戦争は全面降伏することになり、ブリザンド星系帝国は軍の解体と非武装化の憂き目をみる。


 この軍の解体と非武装化はローデシアの組織が世論を操作してコラーリア合衆国にやらせた。

 当時はコラーリア合衆国の管理下にブリザンド星系帝国が置かれたため、それを奪う為にこのような小細工が進められた。


 一方、コラーリア合衆国は戦争犯罪法廷を開き、ブリザンド星系帝国の政治家や軍人らを処罰した。


 戦争中に宰相をつとめたグッタミンガ・トージェインもさすがに逃れるすべはなく、A級戦犯として処刑される。


 しかし、その後、トージェイン家は、薬物売買の関係で関係が深かったブリザンス星系帝国衛生保険省に資金を送り、戦争犠牲者慰霊をおこなっているトウ教の戦没者慰霊神殿に、神殿の反対を押し切り名前を刻み付けさせる。

 この時の資金はチェイン国とローデシア国から出されている。


 そしてチェイン国での内乱は共産党が勝ち取りチェイン人民共和国となる。

 しかし、この当時からトージェイン家はチェイン人民共和国と関係が深く、チェイン人民共和国の国内でケシとマリファナの栽培許可を得ていた。


 これがその後のトージェイン家の再興につながっていく。

 そのなかで同じように共産主義に賛同していたツジェーン家ともつながりが強化され、ツジェーン家が国内への違法薬物の運び屋をやることとなる。

 また、資金難にあえいでいたモリアーナ家を支援することで、警察や教育機関にその違法薬物販売の触手をトージェイン家は伸ばすこととなる。


 そしてセツラの結成後、教育現場での違法薬物売買は一手にセツラが担うこととなる。

 教員と生徒が組んでいる以上、露見しにくいのである。


 薬物の取りひきの瀬渡しはツジェーン家が取り仕切っており、警察の情報はモリアーナ家、薬物取締局の情報はトージェイン家が担う形となっている為、摘発がなかなかされない。


 これにより薬物取引における三大巨頭同盟が確立されたわけだ。


 これらの流れで表では選帝侯家が成立していく。選帝侯家は皇帝を選ぶ立場であるため、独立性を徐々に高めていく。それにともないトージェイン家による薬物取引は広がっていく。


 トージェイン家の情報は以上だろう。

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