第34話 犯罪組織レポート①

 私はこのところ、部下から上がってきている旧ブリザンド星系帝国領における犯罪組織のレポートを読んでいることが多い。それというのもこの組織がバビール銀河の国際関係において無視できない規模だからだ。



 最初にセツラを名のる組織から説明していこう。この組織はスェツランと名乗る女性が始めたとされている。



 この女性は平民初等学校の9歳から12歳のクラス担任をしていたが、彼女が属するツジェーン家の指示でセツラを組織したとされている。



 それはチェイン人民共和国の組織運営方法を使ったやり方で、クラス内に見せしめとガス抜きの為のイジメられ役を設定し、ほかのクラス生徒にイジメさせるという、冷酷な方法だった。


 しかし、この効果は高く、クラスの生徒たちへの統制は完璧に近かったようだ。まあ、だれしも見下されるようないじめられ役にはなりたくはないだろう。



 ツジェーン家はブリザンド星系帝国の名門家の一つだが、もともとバビール銀河で信じられるクロス教の分派が作り出した家だとされている。問題はこの分派がクロス教の原理主義的組織で、ほかの宗教を排除・排撃するので、ブリザンド星系帝国では取り締まり対象となり、ツジェーン家はずいぶん存続させるのに苦労したらしい。


 おまけに本家のクロス教正教派からは非難されている、別の神を信仰している。




 話は戻して、セツラは女性を幹部に置きつつ組織化され、男性は組織内部では下位におかれているようだ。


 これは大本のチェイン人民共和国における男尊女卑の考え方から逸脱している。おそらくスェツラン個人の嗜好や、フェミニズム系の団体を取り込むための方策としてこのようになったと考えられる。



 組織化が進むにつれて、公務員にもぐりこむための人材の育成も行われ始め、ブリザンド星系帝国の司法試験を突破して司法組織に入り込む人間も出てきていた。


セツラでは平民初等学校の3年次から、共産主義の洗脳教育を開始するが、セツラの中で、女性は五階級に分けられている。


 エクセレント、エリート、マスター、スレイブ、グスライティングである。


 各階級を説明する。


 エクセレントは将来の共産主義政権の政治局員を目指す階級でセツラ内部における幹部であり統括とも呼ばれる。



 エリートからは塗れば営業と呼ばれる売春行為が付随する。ただし階級により相手が異なる。エリートはモリアーニ家や政治家や銘家、官僚などの有力者を売春行為の相手とする。また、エクセレントの指示により誘惑や誘導行為も行う。


 モリアーニ家と連携をとるのもこの階級だ。



 マスター階級は、その下のスレイブ階級を指揮する階級ではあるが、主にエリートが相手をしたくない相手などに濡れ場営業をしたりする。



 スレイブは捨て駒的に使われることが多い。名前の通り奴隷階級であり、セツラ内部の男性を統制する為に、性を提供させられたりする。


 スレイブのさらに下にグスライティングかあり、これが組織内におけるいじめられ役である。


 男性はモリアーニ家などの協力銘家の関係者でもない限りエリート階級に就けない。大抵がマスターかスレイブだ。


 グスライティングには非協力的な関係にある銘家や、末であっても皇帝の血筋の男性が充てられる事が多い。


 モリアーニ家は男尊女卑であり、そこからあぶれる女性はセツラに所属していることが多い。モリアーニ家への統制や、モリアーニ家からの情報収集に使われている。ただ、階級はエリートまでしかつけないようにされている。



 そしてセツラの男性はエリート階級が最大とされ決してエクセレント階級に上ることは許されない。


 警察や検察などの司法組織にもぐりこんでいるのはたいていマスター階級の男性であることが多い。女性もいるにはいるが、こういう場所へ出されるのはセツラ内部では左遷扱いされている。



 犯罪組織セツラについてはこれくらいだろう。

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