第29話 超巨大要塞対決

「状況はどうなっている?」

 会議室にはいってきた私の問いに、オペレーターの一人が答える。

「最初の砲撃で我が方の艦隊に1割の損失が出てます。相手要塞砲の出力は測定では三京ヨクトジュールを越えてます。」

 数字が大きすぎてわかり辛いが、こちらの要塞主砲の五倍程度の出力は向こうにある。

 そこに修一が慌てた様子ではいってきた。

「ガリムスをトンド王国が運用開始したってほんとか!!?」

 その場の皆が頷く。

「くそ!!裏切り者が出てたか・・・・・。」

 レリアが諜報機関の調査結果を述べる。

「予断は多いですが・・・・【バースト】の関係者がナトリア選帝侯のイクスタール領で全員捕縛され、その一部がガリムス要塞の再起動の為に、トンド王国に移送され、再起動作業に従事させられていたとのことです。それと要塞砲の新制作も行われていたとのことです。」

 修一はやるせのない思いに駆られている様子だ。

「凍結処理ぐらいじゃ甘かったか・・・・・・いつか奪還するつもりでのこしたのが不味かった・・・。」

「それは結果論です。あの時点でトンド王国が要塞を再起動、運用する確率は3パーセント以下でした。なんらかのブレイクスルーがあったものだと考えられます。」

 修一が席に座ると、イワンが口をはさむ。

「一応、ネメシスは三機とも一気にやられないように分散配置して砲撃を開始する予定だが・・・・・。あの要塞砲はまずい気がする。なによりナダトールの連中が邪魔だ。」

「・・・・・防壁の性能は?」

 レリアが修一に聞く。 

「ナグワイヤー単原子複合装甲板を一層あたり30枚外壁に用いている。それ以外に、シールド出力は当時でも要塞砲の半分は出力できる。」

「概算ですが・・・・要塞三機の要塞砲すべてを一点集中して、突破はできます。ですが・・・・・。」

 イワンが渋い顔で続ける。

「艦隊の対応が後手に回るな。それに相手の要塞砲が当たった場合、ネメシス級が耐えれるかだな?」

「要塞砲はコデンサーチャージ式だった。今どうなっているかわからないが・・・・改造したとしても連射はできないはずだ。」

 修一の意見は考慮に値するが、実際、いまの調子でバカスカ要塞砲を撃たれれると不味い。

「ネメシス予定位置につきます。」

 イワンが会議机のほうからオペレーター席のほうにいって、相手要塞の一定を指定する操作をする。

「このA地点に全要塞砲を集中砲火だ。」

 イワンの言葉にオペレーターが復唱する。

 その後、最初の砲撃がこちらのネメシス要塞から放たれた。


「しかしなぁ・・・・・あの要塞が第三回ギルド対抗戦の優勝賞品か・・・・。最大級の要塞とは聞いていたがあそこまででかいとは思わなかったな。」

 私のその言葉に修一は息を吐くように言った。

「あれは・・対抗戦には投入できない縛りがあったんだよ。」

「だからうちの【ルエル】みたいに表にでてなかったのか?」

「ああ。だが・・・・ギルド本部としては広くてたすかっていたんだが・・・・・それに思い出も色々ある。」

 そこにオペレーターの報告があがる。

「ガリムス要塞の防壁が過熱している事を観測。突破まであと三十秒・・。」

 しかし、そうは問屋が卸してくれない。ガリムス要塞の主砲がネメシス級三十番艦テーリエルにむけて発射される。一瞬、画面が白濁する。

「・・・・テーリエル本体の第二層まで貫通を確認。本体の損傷は想定値を下回っております・・・ですが、浮遊要塞主砲タレットの三割が使用不能です。またほかの対空タレットにおいては七割が使用不能。」

 浮遊砲台タレットの被害は想定外だ。要塞主砲タレットが使えなくなればこちらの反撃手段がなくなることを意味する。

「バールエルの展開艦隊トンド王国の展開艦隊と交戦を開始。」

「敵要塞壁面に破孔を確認。」

 イワンがよしといった。

「艦載機群および、強襲降下艦群を全力出動。敵ガリムス要塞の破孔から内部に侵入を開始せよ!!」

 イワンもまた無茶な作戦をつかうな。

 修一があきれ顔だ。

「おぃおぃ、この距離で艦載機つかうと艦砲射撃のまとにされないか?」

「近寄れるならとっくにやってる。消耗も織り込み済みだ。ネメシス級要塞は駐留艦隊を射出しつつ、後方に退避を開始。」

 まあ、最悪ダメそうならネメシス要塞を衝突させるしかないだろう。

 余剰艦隊も出撃させた結果、戦場は混戦模様だ。相手要塞の主砲砲撃はあれから止まっている。トンド王国はさすがに、味方事撃つという方法は良しとしなかったようだ。

 しかし、攻防戦はややこちらに不利だ。かといって混戦化させた以上、こちらも要塞砲を用いれない。


 黙ってたレイナが口を挟む。

「恭介、今現場に向かってるネメシス級を、こことここの星系にまわしてもらえない?」

 盤外戦術か。戦略的には正しいな。イワンも頷く。

「レイナの嬢ちゃん、そいつはいい案だ。」

「わかった。命令を変更させる。」

 しかし、この星系での戦争は負け戦だな。適当なところで撤退させるべきか?

「敵要塞の掌握率三割を超えました。」

 オペレーターの声におやと思った。

「両敵艦隊撤退に入りました。敵要塞は沈黙。」

 私はほっと息を吐いた。イワンが言った。

「今回は痛み分け・・というには損失が大きすぎるな。」

「最大級の要塞を取得できただけマシと考えるべきかな・・・。」

「敵ガリムス要塞司令部から降伏宣言がだされました。」


 

 それから二週間後、トンド王国のすべての領宙が我が軍により制圧された。レイナの手配通りだ。

 王族や貴族関係者は丁寧に追跡して、すべて捕縛後、慣例通り公開処刑に処した。

 修一曰く、情け容赦ないとはこのことだなとのことだったが、別段好き好んでしているわけではない。長期的にみて死人がでないならその方がいいが、こういう叛乱の目はあらかじめ摘んでおくに限る。

 残しておけば、無関係の市民に犠牲者が出る。


 その後、ナダトール選帝侯家から降伏の申し出があったが、我が方は受諾せず、軍を追加投入し、徹底的に殲滅を行った。

 制圧後も、調査アンドロイドを投入して、徹底的にトンド王国との関係をもつ人間を摘発。

 この指揮は修一の部下の浪岡女史がやらせてくれというので任せたが、彼女は冷徹だった。隙もないくらいに包囲戦を仕掛け相手の組織をつぎつぎとつぶしていった。

 【スリースターズ】の幹部である彼女にしても、今回の騒動に関してのトンド王国は絶対に許せない相手だっただろうことがわかる。

 現地ではブラッディカーペットの浪岡という名前がまことしやかなに噂されているそうだ。


 我が軍は次々とブリザンド星系帝国の残りの領宙を制圧していっている。残る選帝侯家はワールデン家のみだ。

 バービル銀河全体の星系支配率は40パーセントを越えた。このまま銀河全体を支配できるとは考えていないが、今のところ技術的に優れていた勢力は【スリースターズ】関連以外では出てきていない。

 ただ、この銀河で見つかる種族は、哺乳類系人類だけでも多種多様な様相をいせている。そのほかにもブリザンド帝国系人類のような爬虫類からの人類もいる。

 果たしてこれが何がを意味するかはいまだ不明だが、治世としてはいろいろ考えなければいけない事が増えそうだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る