第24話 ブリザンド星系帝国の反撃
【銀河ユニオン歴】19年7月30日、パルド星系で、AIイプセル率いる要塞破壊工作艦隊が、パワール辺境伯家軍と交戦に入ったと連絡が入った。
会議室に向かうと、いつものメンバーが現地の戦闘の状態を正面にあるスクリーンで眺めている。
「いまのところこちらが優勢ね。」
レイナが考えながらそう私にいってきた。
こちらの部隊はタナトス級戦闘コロニー艦を前面にだして、そこから遠距離砲撃を繰り返している。
相手の部隊は飛距離が足りず、いまは加速前進しているだけだ。
そのうち相手の要塞建造現場にも砲撃が加えられた。第五惑星の周回軌道にある要塞の建造筐体にむけて、公転面に対して垂直の方向からタナトス級5隻が接近しながら砲撃を加えている。
要塞を防御しようと辺境伯軍は艦隊を向かわせようとするが、すでにおそい。タナトス級320番艦レニエルの砲撃が敵要塞中心を貫通し、敵要塞はその建造筐体とともに爆発を連続でおこしながら崩れていく。
目的を達した我が軍は後退をするために、敵艦隊前面にレーザー核融合ミサイルとともに艦載機を射出。
いっきに相手を殲滅にかかった。
このままきまるかとおもっていたら、突然画面が白濁した。白濁がおさまるとタナトス級312番艦ケイオスが上面を削り取られてた。あれはだめだなと思った。
イプサムの冷静な声が聞こえる。
『敵艦隊・・・・いや、20万km級敵要塞が三機こちらにむかってきています。こちらのオプションとしては、敵要塞一つを行きがけの駄賃に砲撃しすり抜ける案、このまま退避する案、全滅覚悟で殲滅を図る案がありますが、どうしますか?』
レリアがめずらしく呆れた声をあげた。
「最初から答えがきまっているのなら三択にしなくてもよいでしょうに。」
『さすがにAIクイーンは厳しいですね。まあ、一番がおすすめですね。情報を得て逃げるのがよいと思いますから。』
お前の好きなようにやってみろと私が声をかける。
『アイアイサー!』
イプサムは艦隊を分散させながら要塞のひとつに砲撃を集中するというAI艦隊でないととれないような離れ業な方法をとった。艦載機のほうはパワール辺境伯家艦隊に張り付けたままだ。
ペルセウⅥ型が後方からさらに強襲降下艦を射出している。
捨て駒と割り切ってアンドロイドと強襲降下艦を使い捨てにするつもりらしい。
先ほどダメージをうけたタナトス級ケイオスが砲撃をしながら、別の方向の敵要塞に突っ込んでいく。
「おい・・・・イプサム、ケイオスをどうするつもりだ?」
『ぶつけた後、花火にします。4500kmと200000kmでは質量差がありますが、運が良ければ15次元縮退炉の暴走爆発で始末できるかもしれません。』
使い捨てにされたケイオスのまわりにいる艦隊もケイオスとともに突入コースにはいっている。
縮退炉の暴走爆発を起こすと、おそらく第五惑星くらいまで放射線の収束放射に巻き込まれる。
「まさか・・・・・星系事つぶすつもりか?」
『まあ・・・・・こちらの損害も甚大ですが、ただでやられるつもりはないということです。相手要塞を潰せれればめっけものぐらいに考えてください。』
我が軍の本隊から砲撃を受けていた敵要塞があちらこちらで爆発を起こす。
『次回の侵攻時にはタナトス級の投入数をふやせwるでしょうし、あんな中途半端要塞なんぞに負けません。』
イプサムはけっこう負けず嫌いらしい。
『それより、タナトス級の防御をあと30パーセントあげることができれば・・・・相手要塞の砲撃は無力化できます。』
かるく30パーセントとかいわれても困る。1%あげるだけでどれだけ工夫が必要だと思っているんだ。
『ラグナから伺っている防御ナノマシンの改装型への使用を進言します。・・・・・さて敵要塞一個は始末しました。我々は撤退します。ケイオスのクルーAI達に敬礼!!』
ケイオスの率いる艦隊は次々と敵要塞に突入していく。ケイオスの速度が落されが、それは本隊の脱出の為だった。
次元跳躍を行い、本隊の艦隊はパワール星系から1800光年先に跳躍を確認。
その瞬間、ケイオスの次元縮退炉すべてが連鎖暴走に入り、巨大な爆発が発生した。
爆発のプロミネンス火焔が一気に広まったあと、今度は逆に爆発点に収縮してく。マイクロブラックホールの出現だ。
爆発に辛うじて耐えていた要塞の半分が今度は落リたたまれて押しつぶされていく。最後にγ線パルサーを発してから、マイクロブラックホールは蒸発した。
第5惑星の地表面には想像を絶する放射線が降り注ぎ、その方向面でいき残った者はいないだろう。居住型惑星ではないが、コロニー都市がいくつかあったが、その都市はいくつもが沈黙をしている。
思わず私はつぶやいた。
「超新星爆発よりひどくないか?」
「範囲は限定的です。爆発の範囲をイプサムが絞ったのでしょう。まともに全力でやれば星系事蒸発ですから。」
レリアが事務的に答える。
「しかし、今回の作戦は実質失敗ですね。」
「艦船の半分を失ったしな。まさか相手がさらにでかい要塞3っつも投入してくるとは思わなかった。」
「どこで調達したかが気にかかりますね。」
「第三国の関与の可能性か・・・・・。」
「はい。事前の偵察記録を見た限り、あの要塞を建造できるブリザンス星系帝国の勢力はいませんでした。また、砲の形状も異なっております。地上固定配置のタレット式の主砲になっていました。」
「設計思想が違うか・・・・・・。」
「わたしとしては、3000万km級移動要塞のイスカンド星系とクサカベ星系での同時建造を進言します。また、要塞防壁は防御ナノマシンをあさいところでも深度120km以上になるように充填。主砲は半重力式移動砲台とするべきです。」
「ガチで打ち合いするつもりか?」
「大艦巨砲主義は好ましくはないですが、物量戦をしかけるにしても現状だと損失が大きすぎます。ラグナだけでなくドュエルグ達のチームにも協力してもらって、砲の小型化と口径の調整にはいってもらいましょう。」
「砲台のサイズは?」
「いまのところ強化型5km砲とすべきと考えています。」
「それだと射程が短くないか?」
「報告をうけたかぎりだと・・・相手の35km口径砲の範囲外からの射撃が可能です。安全マージンは12光年ほどかと。」
「それだと弾数で勝負だな?」
「連射性能は高くなりますからね。」
こうして、我が国初の敗戦の結果、新たに巨大移動要塞を建造することとなった。
工期は一カ月を予定している。これだけ早く作れるのもAIによる休みの無い建造が可能だからだ。
イスカンド星系のボーバル銀河調査開拓船団総旗艦ヴァンスの外側の公転軌道でエーセックス級超巨大要塞の建造筐体の製造が始まった。
要塞の名前は名前に困って、アメリカ合衆国が日本攻略のために主力空母として建造した船の名前をいただいた。
エーセックス要塞は【ルエル】を超える最大級の移動要塞となる。日本人としてはタケミカヅチとかでもよかったのだが、これまでフランス系の名前やらドイツ系の名前をつかってきたので、気分転換の意味でもあった。
主砲については強化5km口径だけだと、面白くないと、ラグナから具申があり、レリアとラグナの間で喧喧囂囂のやり取りがあり、作れるならと40km口径三連砲塔を12タレット作ることにきまった。これに伴い、要塞の防護ナノマシンの最低深度が1200kmに増やされた。要塞の大きさも増えることになり、5000万km級要塞となることで本決まりした。
この間、侵攻計画は自粛はせず進めていた。理由としては兵力や物量が加速度的に増えているのもある。
追加で占領したベルザンド星系帝国の星系は42に上る。だが残りの星系は、いずれもが選帝侯家の直轄地などであり、現在、前線の引き直しや、警戒線の設定などを行い、兵力の増加分を防衛に充てることとなった。
レリアの予想通り、あの巨大要塞は別の国が建造したものをパワール選帝侯家が購入したものだと判明した。
現在その相手の国家の特定と調査作業を開始したところだ。
購入した三機の要塞のうち二機は完全に破壊され放棄された。残るは一機だが、これについても損傷が多く、現在修理できる星域へ移送中らしい。
驚いたのはパワール選帝侯家に要塞を売却した国はどうやら次元航行の技術をもっており、要塞を次元航行で運んでいることだ。
そして、調査をすすめるうちに驚くべき事実を我々は掴むこととなる。
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