第20話 偶発的といいつつも必然的な遭遇
惑星ベナトリアの制圧が終わって間もない、【銀河ユニオン歴】19年4月2日の早朝、私はレイナにたたき起こされた。
「・・・おきなさい!!」
眠い顔を振りながら、ベッドで上半身を起こすと、
「もたもたしてないで、緊急会議よ!」
時計を見るとまだ午前四時を過ぎたところだ。
「なんだよ?こんな朝っぱらから・・・。」
「・・・別の文明同士の衝突場面に遭遇よ!」
「ということは・・・・宇宙文明か!!」
私はワイシャツ着て、ズボンを穿くと、洗面所にいって洗面をすませて、スーツを着てネクタイを締めて、タイピンをとめてから、パブリックスペースの会議室へ急いだ。
正直なにか口にしたいところだ。糖質がたりない朝に何も食べないでいると判断ミスしそうだ。いつの間にかとなりに来ていたレリアにブドウ糖が多い高カロリーの携帯食をわたされた。行儀が悪いが、それをかじりながら、会議室へ急ぐ。
会議室につくと、現地の映像がすでに正面スクリーンに映ってた。
向こうからの攻撃をすでに我が軍は受けていた。被害らしい被害はまだないが、油断はできない。
「・・・やっときたか。」
イワンの言葉に面目ないと返事をする。
「まあ、それはともかく、相手から攻撃をうけてるが、こっちからは反撃は今のところ行っていない。
とはいうものの・・・・解析した結果、向こうの主砲はこちらと同じ荷電粒子砲だ。リアクターが小さい艦船や機体の防御だと貫かれる。まあ・・・こっちの移動戦闘コロニー艦には通用していないがな。一応半球型陣形を強襲型の艦艇で固めてはいるが・・。向こうがじれて艦載機を送り込んでくると面倒だ。」
レリアが補足するする。
「我が方に攻撃している艦隊の勢力をΓ(ガンマ)とし、Γが同時に攻撃を仕掛けている、コロニーや惑星の勢力を∑(シグマ)とします。」
総旗艦艦長のマイエル・フェルブスナーが肩をすくめた。
「攻撃してきている以上、私は反撃してもいいとはおもうんですがね。イワン副団長がまてとうるさいのですよ?」
まあ攻撃をうけた以上、反撃をするのは当然だが、イワンが何を問題にしているか分かった。
∑の勢力に肩入れしていいのか、纏めてつぶすのかという話だ。
「できれば友好的にいきたいのが本音だが・・・・・現実的には通告して双方とも制圧だろうね。」
「ぶっ壊すのはいくらでもできる。いまは相手の情報を得るのを優先すべきだと俺は考えている。」
「副船団長、本気ですか?この激戦のなか相手の船を拿捕しろと?」
マイエルが呆れるのは仕方がないが、艦船の消耗を覚悟すればできない事もない。
「・・・・・強襲移乗艦は現地の部隊に在庫はあるか?」
「船団長、マジですか?」
マイエルは驚いた様子だった。
「艦船の消耗はこの際目をつむる。どうせ追加の部隊は派遣してるんだろ?」
「まあ・・現地の戦闘コロニー艦はほとんど該当恒星系外でほぼ待機しているので、増援はいくらでもおくれます。追加の部隊も明日には到着予定です。」
「ならきまりだな。」
イワンが締めた。
現地の恒星系に進出しているペルセウスV級三隻から、直接、強襲移乗艦と、その護衛として小型戦闘機のルイヴェント戦闘攻撃機が大量に射出された。
「相手の船の足を止めるには重戦闘機もだしたほうがいいかと・・・・。」
マイエルの言葉に頷いて、追加でヴァノン重戦闘機も出した。ヴァノンは大型の機体で75mもある戦闘機だ。
相手の艦船も30km級のおそらく航宙母艦や戦艦もあるようだから、今までの戦闘とは難易度が異なるだろう。大きさイコール技術力の部分が宇宙では多いからだ。構造材や装甲の制作に特別な原子の構築が必要になる。単原子プレートなどその最たるものだ。
「ま、あとは結果を待つだけか。」
レリアが頷く。そして報告をあげる。
「後方のペルセウス級やタルタロス級からの増援が到着しました。150km航宙母艦サイラス級二百番まで現地に到着。防衛艦載機ならびに、強襲移乗艦、半数射出します。」
相手方はこちらの艦載機の射出に焦った様子で、艦砲射撃をしてきている。
大体は陣形の外側の強襲突撃艦や強襲戦艦のシールドに幅前れるが、運が悪いと中の遠距離砲撃用の戦艦や航宙母艦にあたり、被害が出始めていた。
もっとも数の優位は崩せない。こちらは艦砲射撃を味方に当てないために自粛している。せいぜい砲撃しても相手の戦闘機や攻撃機相手の防空戦闘ぐらいだ。
紡錘陣形を組んでいたΓ方は陣形が崩れ始める。こちらの強襲移乗艦が接艦し、艦体に穴をあけて艦内へ侵入を開始している。
相手の総旗艦と思われる80km級、航宙母艦に次々と強襲移乗艦がアタックを開始した。その周りをその護衛戦闘機と、相手の護衛戦闘機がドッグファイトを繰り返している。
一方、我が軍は恒星系の外縁部に哨戒網を敷き、相手がどちらに逃げるか追跡ができるように体制を整えつつある。
我が軍の戦闘機が相手の戦闘機とすれ違いざまに、艦載荷電粒子銃のタレットで相手を追尾し射撃を加える。
AI制御なので後ろだろうが前だろがお構いなしだ。
相手の戦闘機は三角翼の戦闘機だったが、こちらのタレットからの攻撃で、翼が切断され、そのあと爆発する。
レリアがさらに報告する。
「こちらが有利とはいえ、二割の戦闘機の消耗は確実ですね。もっとも相手を文字通り殲滅に必要な損害がですが。」
会議室に現地の旗艦コベール・ジャン・シャッホから連絡がはいる。
『Γ勢力の戦艦一隻を制圧完了しました。』
エレーナ・カイナスン大佐からの連絡にマイエルが頷くと、指示を伝える。
「護衛の戦闘艦をまわせ。防御が弱くなるが、強襲艦を抽出してまわせ。」
『よろしいのですか?損害がふえますが・・・・・。』
「かまわん。船団長の指示だ。責任はこちらがとる。」
『了解しました。』
「相手の人間かなにかしらんが・・・・その文明生物には丁重に対応してくれ。」
『報告によると、人型なので、人種とよんでさしつかえないかと・・・。現在言語の解析を始めたところです。サンプルが足りない為、時間がかかりそうです。』
「わかった。お前さんは指揮に集中してくれよ。ガイデンマールみたいに前に出られるとな・・・・。」
まだ二十代に見えるエレーナが苦笑した様子だ。
『銀河統一戦争の時のあれは・・・・。さすがに弁護できませんね。』
「特に今回の相手は舐めてかかっていいあいてじゃない。AIとよく相談して指揮してくれ。」
『わかりました。』
通信はオンラインのままだ。
「・・そろそろ相手の総旗艦と思われる母艦の制圧がおわるころかと。相手の船からの脱出艇はどうします?」
「回収できたら回収程度でいいじゃないか?無理に回収する必要はないと思うぞ。今の時点でサンプルは確保できているだろうしな。」
イワンがレリアに答える。
「わかりました。あと問題は∑勢力のコロニーですが・・・こちらも制圧を開始しました。第六惑星の軌道上の、今回の騒乱場所のコロニーに我が軍がとりつきました。」
Γ勢力の艦隊が算を乱して方々に逃げ始めた。こちらがとりついて制圧にかかっているのは三割といったところだ。制圧中に自爆したと思われる艦艇もいくらかあった。
Γ勢力の艦隊は大体一両日後に恒星系から撤退をした。こちらのスパイロボットやアンドロイドが入り込んでいる艦艇もいくらかある。
二つの勢力との対応となったわけだが、その日のうちにさらに連絡がはいり、別の勢力の惑星と思われる場所を発見したが、すぐに交戦にはいったと連絡が入った。
正直、船団トップだけで判断し続けるのは無理なので、そちらは別のチームを編成して対応してもらうことになった。今後の事も考えあらかじめチームは作っていたから、その対応はスムーズにいった。
今回の騒乱の星系を∑1星系とした。おいおいあとで現地の言葉などで名付け直す予定だ。
∑1星系の各惑星のうち第四惑星が居住型惑星で、青い海が広がる地球のような惑星だった。陸地の面積は少ないが、海底に海底都市を構築したり、地下都市が発達している様子だ。
ほかの惑星のうち三っつがいわゆる岩塊惑星で、二つがガス惑星だった。
ガス惑星にはガス採取用のコロニーがいくつもあり、かなり発展している星系のようだ。
∑勢力の文明生命も人型であり、哺乳類型だが、耳の形が犬や猫と同じタイプで頭の上についていた。ファンタジー系小説で出てくるいわゆる獣人といったかんじだが、体毛はないようで、服装も私たちに近い。軍人らしき人々は詰襟の灰色の服装をしている。
一般人の服装はフォーマルが詰襟で、前はジッパーで止める服のようだ。
前回の失敗があったので、今回は強引に星系の全制圧にかかった。
居住惑星制圧の途中で相手が黒い×マークがついた赤旗を振っていたので、攻撃をとめると、わらわらとでてきておなかを上にして両手を縮めるポーズをした。
レリア曰く降伏のポーズではないかというので、そこで戦闘をとめて、こちらのアンドロイド部隊を差し向けると、みな降伏のポーズをして、武装解除してくれた。
文化の差が如実にでるなと思った。こちらだと白旗は降伏か、軍使の印だ。だが彼らによると戦い開始の印らしい。
二ヶ月ほどかかって、ようやく∑勢力の言語を完全に解読できた。その間、もう一方のΓ勢力の追跡なども行っていたが、いまだにΓ勢力の星系に敗退した艦隊はたどり着いていない。次元航行能力があるのかと思っていたがそういうわけではないらしい。
捕虜にしたΓ勢力の言語も不完全だが解読ができた状態だ。
【銀河ユニオン歴】19年6月1日現在、判明したのは∑勢力の国の名前がマッカード宇宙連邦で、彼らは猫に類似の哺乳類から進化した人類らしい。
首都星系の情報は取得に苦労したが、彼らの船で二年はかかる場所に首都星系があるそうだ。具体的な場所は把握できたので、そちらの方面に軍を向けるか、Γ勢力側へむけるか、考えなければならない。
考えることが一気に増えてきた現在だ。
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