第19話 惑星上文明との衝突

 三日後の返答期限が迫る中、トランキア政府は、トランキアを中心とする、ベナトリア統一戦線の結成をベナトリア連盟で宣言。我が国への徹底抗戦を表明した。

 彼らが最初に標的にしたのは我が軍が最初に占領を行ったバウンゼ社会主義連邦ら、社会共産主義同盟国の領土だった。

 陸海軍を連携させて、国境線を一挙にこえてきた。

 最初の戦地になったのはバウンゼ社会主義連邦の赤道方面にある国境都市ディガランドだった。

 この都市は人口が多い為、付近に建設したコロニー都市への移動がまだ完了していなかった。

 海軍の航空母艦からの戦闘攻撃機が爆弾を都市部に無差別に投下し、都市のビルを破壊していく。

 都市部から3kmはなれた山林にある半径30kmの半球形のコロニー都市への攻撃はこの時点ではなかった。

 我が軍のほうは、民間人の避難誘導をしつつ、陸上戦力での反撃を開始した。

 強襲降下艦に艦載されているBER542地上戦車がうなりをあげて、強襲降下艦から発進していく。この戦車は半重力制御によって、空中に浮かんでいる戦車だ。

 主砲はレーザーと荷電粒子の切り替えが可能であり、放射線汚染が気にならない地域では荷電粒子を使い、今回のような放射線の被害が生じると問題があるばあいはレーザーを使う。

 そのほか、質量弾を電磁加速するコイルガンも装備されており、こちらは大規模目標に充てることを主眼にしている。質量弾だから補給が必要なのであまりつかいたくないという理由もある。

 対空または地上掃射用の機銃は基本的にレーザーか荷電粒子の切り替えだ。


 地上戦車の映像から地上の状況を眺めているうちに、相手方のロケット砲による面制圧攻撃が始まった。

「・・・都市部に面制圧のロケット砲を使うとか正気か!!?」

 わたしの漏らした声にレイナは少し考えた様子で口を開く。

「もともと仲が良くなかった社会主義国家の住民だから気にしないという線が高そうね。」

 その言葉に私は苦い思いに駆られる。

「・・ナーデシア連邦には攻撃はあるのか?」

 レリアがいまのところないと答えた。ただと続ける。

「・・・現状、ナーデシア連邦を攻めると、我が国との交渉のチャンネルが使えなくなるので・・・むこうの計画ではおそらく最終段階でなければ攻めないでしょう。」

 こちら側の戦車隊はとくに被害は受けていない。ただし、住民の避難誘導にあたっていたアンドロイドに被害が出ていた。戦地に派遣しているのは量産型のアンドロイドばかりだが、それでも苦い思いにかられる。

「とりあえず、うるさい艦載機の母艦を沈めちゃいましょう。海軍の艦艇に衛星軌道上の艦船から艦砲射撃を開始するよ?」

 レイナの言葉にレリアも頷く。

 艦砲射撃で、敵艦隊のほとんどは消滅する。入念に航空母艦は沈めた。

「相手側の強襲揚陸艦がディガランド東部の海岸に上陸を開始。この艦の周辺を艦砲射撃で一掃します。」

「付近の住民は?」

「救うのは無理かと・・・・・。」

「そうか。」

 ここで甘いことをいって犠牲を許容しなければもっと被害が出る。私は思わず机をこぶしで叩いた。

 周りにいた面々は少し驚いた様子だが、イワンが私の肩を叩く。

「落ち着け。お前さん、ちょっと感情移入しすぎだ。軍の指揮官なら、今は犠牲を数字でとらえろ。それより、高みの見物をしている連中を叩くべきだろ?」

 イワンが指をさしたのは惑星ベナトリアの別の大陸カーストリアの北部だった。ここにはトランキア連邦がある。そしてベナトリア連盟の本部のある首都トランだ。

「・・・かたき討ちというにはでかいが、一度連中にわからせた方がいい。どうせこっちはAIで政治システムはすでに構築済みだ。頭をぶっつぶしても、交渉すら必要ない。」

 イワンの提案に乗って、首都トラン、陸軍本部のあるフラル、海軍本部のあるエーゲシア、空軍本部のあるラトリアの四か所を砲撃する。

 特に首都トランは入念に砲撃し、更地にした。

 そのあと一気にトランキアへ、強襲降下艦を四万五千隻を下す。いっきに全土制圧戦だ。

 トランキア連邦は州に分かれており、州軍という軍事組織がある。制圧戦ではそれらの抵抗を受けたが、数の暴力で一日もしないうちに抵抗能力を奪った。


 地上のニュースを傍受してみると、トランキアの放送局がまだ生きており、首都などの消滅を驚きをもって伝えていた。

 現地の管理はAIのトムランがとっており、トムランがトランキア連邦の併合を宣言し、それを各地の放送局の電波をジャックすることで通知した。

 


 トランキア大統領のベグリシア・ハウゼは、どういうわけか、首都消滅の難を逃れて、イルトキア共和国の首都ヘルゼンから、声明を発表、全世界が一丸となってこの星を守るためと称してベナトリア・レジスタンスの結成を宣言した。

 すでにスパイロボットの浸透は図られていたため、ベグリシア・ハウゼは極地にある地下施設ベグナイ1に潜伏していることを突き止めた。

 このベグナイ1は半径18kmほどあり地下5kmに存在する巨大地下施設だ。核融合炉による発電やその電力による植物の育成プラントなども備えており、籠城されれば面倒になりそうな施設だった。

 もっとも地下5kmにあったとしても、それを破壊する手段はある。レイナの指示で、荷電粒子砲の精密射撃が行われた。

 うちの国が運用している荷電粒子砲は収束度を変えれる。また、この二十年の間に進歩しており、大気中でもあまり減衰せず標的にあてる技術の開発がおこなわれてきた。

 そのため地下5kmにある施設にも十分に到達させることが可能であり、それが実行に移された。

 導通路が確保できた時点で、戦艦主砲による多重砲撃が加えられた。

 核融合炉にダメージがいったらしく、内部で爆発を引き起こした。

 ベグリシア・ハウゼによる定時放送の時間帯にその攻撃は行われた。傍受していた放送の画面の中でベグリシア・ハウゼは振動で吹き飛ばされ、蟀谷をきったらしく血を流していたが、次の瞬間、なにかの光で画面が白濁し、そして通信が切れた。

「後始末はしっかりできたようね。」

 レイナがほっと息を吐いた様子だ。

「しかし、巨大地下要塞なんて建設しているとは・・・。」

「まあ権力者の考えそうなことでしょ。私たちには無駄だったけど・・・。」

 にべもない返事だった。

「判明しているレジスタンスの拠点に対して、強襲降下艦による降下制圧を行います。その対象地域は強制併合致します。」

 レリアの指示も隙が無い。

「それに加えて、明日零時をもって、返答期限とし、全土の制圧にかかります。」

 惑星ベナトリアはこうして我が国へ併合された。結局、保護国化したのは十二カ国に限られた。そのほかの国は徹底抗戦の構えで話し合いの余地もなかった。

 イワン曰く、話し合いの余地を残して通告したのがよくなかったのではないかとのことだった。

 かといって最初から問答無用で制圧というのも筋が違う気がする。

「まあ、こういうのは道義をとるか人命を取るかの選択になるって話だ。国である以上道議を取らざるを得ないのは事実だ。だが、それによって失われる人命もまたある。おれは軍人あがりだから、道義より問答無用で制圧を取るがね。まあ、考え方次第だ。」

 今回、文明レベルが低い相手でありながら、被害を出した。ほんとどが現地住民の被害だが、それでも被害は被害だ。

 これが同程度や、同じような恒星間国家相手となると、以前のように問答無用で制圧したほうがいいかもしれない。

 別の銀河だからと慎重になりすぎた気がする。


 現在、我が国はこのバービル銀河の十分の一を占領開発中だ。残念ながら、まだほかの文明との接触はない。

 次回の文明との接触までに対応をよく考えておかなくてはいけないなと心の中でため息をついた。

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