第17話 砲艦外交
【銀河ユニオン歴】19年3月10日。この日、初めてバービル銀河の文明との外交が始まった。とはいっても、例の惑星上文明との接触なので、文明レベル的には下の相手だ。
惑星文明の国家は御多分に漏れず、いくつもの国家や地域に分かれている。内密に接触するなら、それら一個一個の国や地域と接触を図らなければならない。
外交手的バランスを考えると非常に繊細なことになる。
どうせ保護国化してしまうのだから、ここは最初にガツンといったほうがいいという意見から砲艦外交に調査開拓船団会議で決まったのも、むべからくかなと言ったところだ。
そしてこの日、イカロス型ではなく、3700kmのペルセウスⅤ級を旗艦とするする、1523隻の通常艦艇からなる艦隊が堂々と、第四惑星の衛星軌道上に分散侵入した。
現地の言葉120カ国語で、
「我々はとなりのイエール銀河を統一した【銀河ユニオン】に属する【ルエル】連邦である。この惑星の住民の方々に問いかける。平和的に我が国の保護国になるか、それとも戦争による挑戦を行うか判断して頂きたい。返答期日はこの問いかけから、惑星が30自転しおえた時とする。返答がなければ戦争を選択したものとみなす。返答は国や地域ごとで構わない。」
と脅しを含んだ呼びかけが行われた。
私は通知の前の日から地上の有力国家とみられる資本主義国家らしい国家トラントキアのニュースを傍受して翻訳してみていた。
通知前では、特に変わったことはなく、世界各地の紛争状況などをどの放送チャンネルも流していた。
『ルゲラート共和国で発生した内乱ですが、隣国イストリアが介入を開始し、戦闘が泥沼化している模様です。』
それが通知が行われると、
ニュースチャンネルの一つであるトワイライトでは、一瞬画面のうつっているスタジオが騒がしくなり、画面が、空に映る我々の宇宙艦隊の映像を映し出す。
『・・・・ええ、緊急ニュースが入りました。信じがたいことですが、宇宙人が来訪したとのことです。現在、報道局が情報を集めておりますが・・。宇宙人から各国への呼びかけが行われた模様です。その内容ですが・・・。』
ニュースキャスターが我が国の呼びかけを流し配はじめたとたんに、画面が切り替わり、臨時番組と表示される。
『緊急放送です。この放送はトランキアのすべての放送局で同時におおなわれております。』
そう女性の声が聞こえてから画面が映る。壮年のスーツに近い服装をした男性が映った。ネクタイはないようだが、たすきのようなものを身につけている。
『トランキア大統領、ベグリアシア・ハウゼです。今回我が国、いやベナトリアのすべての人間にとってショッキングな事件が起きました。宇宙人が来訪しました。繰り返します、宇宙人が来訪しました。私も正直この言葉を言っている自分が信じられません。そして彼らは従うか、戦争をするか選べと選択肢を突き付けてきました。我々は一方的な服従は認めるわけにいきません。緊急のベナトリア連盟総会の開催を呼び掛けてますが外交チャンネルを閉じるつもりはありません。彼らは我々と同等かそれ以上の知能をもつ存在だと思われます。であるなら交渉が可能なはずです。我が国は連盟議長国として、彼らと交渉を行うつもりです。国民の皆様はくれぐれも・・・・・・・』
正確な情報は伝えていない印象が強い。
そんな状況の中、通知の三日ほどあとにベナトリアの独裁国家のいくつかが、我が国の艦船にむけて核ミサイルらしきものを発射した。一挙に攻撃したところを見ると、その独裁国家の連合は結論を出しているということだろう。
ミサイルは艦船に着弾し爆発したが、これといった被害はない。
重水素か重ヘリウムの核融合ミサイルだったらしいが、あの程度の威力なら、現行標準の軽戦闘機でも耐えれそうだ。まああれはドッェルグ達クラフトAIが悪乗りした超防御性能の機体になっているから余計だが・・。
それらの独裁国家に対しては、首都と軍事都市や軍港に対し、艦砲射撃を限定的に行なった。
とはいっても一発当たるだけで都市がクレーターに変わったが。
降伏をおこなわせるなら首都を更地にする必要はないが、最初の一発だ。ガツンといこうとはイワンの言葉だ。要するにほかの国家への示威的行為をしたわけだ。
独裁国家の罪のない国民を犠牲にしたことは心が痛まないかと言われると痛むが、いちいち気にしてられないだけの理由はある。
攻撃の後、独裁国家に対しては強襲降下艇を下し、全土制圧戦を開始した。そのまま放置して無政府状態にする理由もない。
占領には一日もかからなかった。物量とは恐ろしいとは今更ながら思う。
現地にはすでに地上用コロニー設備の建設を開始した。立ち退きが必要な現地住民には説明会をひらきつつ、仮設住宅に一時うつってもらい、そのあとで地上コロニー内の住宅に移ってもらった。
地上用都市コロニーを造る理由は、他の国から攻撃されて現地住民に被害を出さないためだ。占領地はすでに我が国の領土であり、住民は国民だとの認識からだ。
一方、ベナトリア連盟総会は荒れていた。
我が国への平和的降伏を望む国家が少数いるぐらいで、あとはどの国も戦うということで固まってはいるが、戦争のイニシアチブをトランキアがとることに反対していたり、ボイコットしたりしていたりと様々で、まとまりがない。
そんな中、一般国民には、我が軍の艦砲射撃の映像が出回り始めていた。インターネットのような国際ベナトリア網というものがあり、それはベナトリア連盟の外郭団体が管理しているが、実質野放図状態だ。そのなかのいくつかのソーシャルネットワーキングサービスの映像チャンネルでの拡散が起きていた。
映像チャンネルの一つ、ベナトリアナウのチャットはあれにあれていた。
一人は世界の終わりだと騒ぎ、一人はここまで戦力の差があると戦うのは無謀だと力説し、まただれはこの程度ならまだ勝てると反論。百家騒乱とはこのことだと言えた。
滅んだ独裁国家はどれも社会主義国家で、厳しい階級差が存在していた。我々はそれをまるっと排除した。旧来の特権階級を振りかざすことは禁止し、それに反すれば懲役刑に、振りかざしたうえでほかの国民に重症以上の被害が出れば死刑にと明確な基準を作った。
ここも我が国がAI国家だからできる力業ではある。
そんななか、南半球の国家のひとつナーデシア連邦が保護国化に同意すると返信を送ってきた。
我が国は艦船を下すことを通知し、地上工作艦を25隻送り、その護衛に15km級標準航宙母艦を5隻と護衛艦艇を120隻送った。
ナーデシア連邦は国土が広い大陸国家だが、国土の開発があまり進んではおらず、地上コロニー都市の建設には向いた国だった。
ナーデシア連邦の首都バナスクの大統領府では段階的に国家統合後の参政権取得までのロードマップを示し、話し合いが行われた。
向こうは言語の切り替えに若干難色を示したが、技術支援と地上コロニー都市の建設をこちらの無償援助で行うことを示すと、かなり驚いた様子で受け入れてくれた。
ナーデシアの大統領ショーン・マクフォルトはまだ壮年で金髪の男性だった。いわゆるイケオジといえそうな雰囲気の男性だ。
国家統合条約の調印を行ったあと、向こうの希望で、私と直に面会することとなった。
言語が違う為翻訳デバイスつきの会談になるが。
日程をすり合わせ、一週間後にその会談は調査開拓船団総旗艦ヴァンスで行われた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます