第15話 新首都建造計画
【ルエル連邦】の新首都建造計画が始まった。レリアの案では、現在の【ルエル】を新しい首都の、専用格納庫に収容する案が出された。
確かにそれなら大規模な引っ越しは必要ない。
クーレリアの頭脳ユニットをどうするかが課題だったが、それならまるっと解決する。
その上で、専用格納庫で大規模オーバーホールを行う予定らしい。
建造予定の新首都は1500億kmを超える超々巨大コロニーとなる予定だ。
首都の形状について、いままでのルエルと同じ戦艦型、他空母艦型、球形型などの案が出されたが、合理的に判断するなた球形だろうと私は考えていた。
しかし、意外にも戦艦型であるのを推す声が多かった。
街割りや、居住区の区分けなども行われたが、大体、現在のルエルを踏襲する形で案がまとまった。
建造についての話し合いは何度も持たれ、戦争が推移する中、議論はふかまっていってた。
戦争のほうは現在258の国と地域を陥落させ、あと600くらいの国と地域が残っている。さすがに物量があるとはいえ銀河の半分をそう簡単には占領できなさそうだった。
イワントキヤ大同盟直下の直営宇宙軍というものができているそうだが、基本的にベールゼン血盟の所属国を攻めていることが多い。ベールゼン血盟の所属国は352あるのだが、陥落したのは12にとどまる。逆に血盟側がイワントキヤ大同盟に攻め込み陥落した数は25とおよそ倍あり、レリアの調査報告によると、イワントキヤ側は国民向けにベールゼン血盟の陥落した国の一部を【銀河ユニオン】の所属国と喧伝し、戦勝しているかのように情報操作しているそうだ。
基本的にうちに攻め込んだ艦隊は一隻残らず壊滅させている。そのため艦隊からの情報がイワントキヤ大同盟に届いてない可能性はある。
アッケンダール同盟についてはほぼその残存勢力を駆逐したと言っていいだろう。183の国と地域を我が軍が攻め滅ぼし、併合している。
【銀河ユニオン歴】4年5月10日現在、ここのところ、偽装艦隊の報告が相次いでいる。
ベールゼン血盟の識別信号をもった、イワントキヤ大同盟の艦隊から攻撃を受けるという事件が頻発している。
我が方の艦隊を偽装したものは残念ながらないようだが、これは友好勢力間の偶発的な衝突を狙っった離間の計だ。
ベールゼン血盟のほうにはその都度報告をあげているが、どうも襲撃を受けて陥落した国家から識別信号が盗まれた可能性が高いと返答が返ってきていた。
識別信号を偽装するというのは国際関係上、重大なマナー違反行為になる。
なんというかイワントキヤ大同盟は何をするにしても手段を択ばない気がする。
昨今、ベールゼン血盟と我が国や【銀河ユニオン】所属国との接触が増え、その友好関係が発展しているのに危機感を抱いているという感触だ。
Θセクターのベールゼン血盟との交易路に、私掠艦隊を送りこみ、交易船を襲うという事件も頻発するようになってきている。
これに対して我が方としては巡回艦隊を設立し、対応に当たっていたが、交易路のすべてを巡回警備するにはまだ艦隊の数が足りていなかった。
問題はこちらの領有領域なら相手が拠点を構築しても対処は行えるが、最近はベールゼン血盟所属国の領宙に、私掠艦隊の拠点を構築し、領内を荒らすという手に出てきている。
ベールゼン側に相手の対処を個別に依頼して対処してもらっているが動きが鈍い。結果として我が国の交易船に被害が出るということも発生していた。
ベールゼン血盟側の国家も一枚岩ではなく、我が国に敵対的な国家も複数存在する。そういった国家が、意図的にイワントキヤの私掠艦隊拠点を造らせている事例もあった。
この場合はベールゼン血盟本部に相手の場所、勢力の通知を行い、場合によっては強硬策で我が国の打撃艦隊を送る場合も出てきていた。
もちろんこの場合、ベールゼン側がから抗議が来たが、我が国の交易船の被害を賠償するように求め、我が国側は一歩も引かない断固たる態度を示している。
そのせいで敵方につくベールゼン血盟の国家が増えてきている。同盟もベールゼン側から求められて結んだが、失敗だったかといまさらながら思い始めているところだった。
この日の議題は、ベールゼン血盟との同盟継続か否かが論題に挙げられていた。
交易船を運用しているレイナのほうはかなり頭にきている様子だ。交易船の乗り組み員に少なくない死傷者やそのほかの被害者が生まれている。
身代金の請求なども行われているが、我が方はテロリストや犯罪者と交渉しない方針なので、相手を武力席圧するかたちの救出しかおこなっていない。
レイナとしてもそのあたりは一線を引いており、交渉は持たない事にしているようだ。それだけに部下が殺されたりして怒り心頭というわけだ。
先日も交易船が襲われ、乗り組み員に対しての身代金請求が、ベールゼン血盟の国家であるグワドリア王国の仲介で呼びかけられた。これに対してレイナは断固拒否し、部下に命じて武装艦隊である交易防護艦隊をグワドリア王国の交易コロニーグラワーに送り込んで、宙賊の一斉摘発を行い、乗組員の救出を行ったばかりだ。
グワドリア王国側は武力行使だの、国権侵犯だの騒いだようだが、レイナのほうはグワドリアとのすべての交易を停止し、交易路も我が国の正規艦隊を派遣して封鎖してしまった。
さすがにこのことにクワドリア側は慌てて、ベールゼン血盟本部に報告し、抗議をおこなったが、こちらとしては犯罪組織を領内のコロニーに飼っていたことに対して強い怒りを感じており、ベールゼン側へクワドリア王国の血盟からの除名を要求した。
ベールゼン血盟側は友好国がまだ多いこともあり、対応に苦慮した様子だが、クワドリア側に我が国への損害賠償を求め、そのかわり我が国へ封鎖を解くように求めてきた。
そして今回の会議の議題がベールゼン血盟との同盟を維持するか否かという話になる。
わたしとしては戦争になっても対処はできるので、正直どちらでもいいという考えだ。
ほかの面々は、ベールゼン血盟のまとまりのなさに怒っている面々が多いようだ。
結局こうなったかと思うような議決がなされた。
ベールゼン血盟に一週間後、同盟破棄を通告、それと同時に宣戦布告し、虫食い状態だったΔセクターやΘセクターの領宙を、塗りつぶし、勢力圏を確保するという方針できまった。
クワドリア王国に対しても宣戦布告後、すぐに艦隊を送り込み制圧するということになった。
戦争は新たな局面を迎えることとなる。【銀河ユニオン】による銀河統一が現実味を帯び始めた。
一週間後の【銀河ユニオン歴】4年5月17日、ペールゼン血盟に対して同盟破棄と宣戦布告を通知、これに伴い、準備していた三十四の艦隊を一斉に侵攻させた。
ちなみにこの間もイワントキヤ大同盟への侵攻は続いている。
我が国の強硬な対応に、ベールゼン血盟側は特使団を結成し、すぐに【ルエル】へ派遣してきた。
ヘンリック連邦の時のように拒絶はせずに、特使団を入港させた。
特使団とは先にレイナが対応を行った。
その日のレイナは不機嫌そうだった。特使団との会合で、向こうがあまりにも無礼な対応をとったらしい。
「もうお話にならないわ。宣戦布告を取り下げないなら、イワントキヤ大同盟に合流するだの、交易船の数を増やせだの、今回の事に対して賠償金を支払えだの。自分の立場が分かっているのかしらね?」
この間に、クワドリア王国の完全制圧が完了。すべての王族や貴族は一族郎党公開処刑を断行。
これに対して、血盟諸国は、すべての王族や貴族の処刑は例がないと大反発。ルエル連邦は文明を滅ぼすのかとベールゼン血盟は異例の声明を発表
うちの国が普通の国なら王族や貴族は温存するだろう。彼らは社会を支える重要な歯車だからだ。だがうちはAIやそれがインストールされたアンドロイドでその歯車を代用できる。
むしろ残すと社会システムが歪んでしまう。我が国にも貴族領はあるが、通常の領土とは別枠状態で存在している。私としても虫食い状に貴族領を存続させる意義はない。
盟友としてともに戦ってきたバールデン共和国の貴族ならともかく、縁もゆかりもない王族や貴族だ。しかも、今回の犯罪組織とつながっている証拠もあがっている。もちろん、犯罪とは関係ない貴族もいるだろう。だが、今回は特権意識のある存在は一人も残せない。再独立の旗頭になる可能性は一人として認めるわけにいかないからだ。
二週間が経ち、あちらこちらで王政国家が制圧されて行っている間、特使団はとにかく私との面談をはかろうと躍起になった。トップの言葉を得られれば助かると見込んだのだろう。
しかし、わたしは決して幹部クルー区画から出なかった。
余計な言質を与えないためだ。
後に【銀河ユニオン歴】4年からの10年間の事が、断血の十年間と呼ばれることになる。
ΔセクターやΘセクターの王侯貴族が一人残らず処刑されたことからその呼び名が定着した。
特使団は三カ月粘ったが、彼らの祖国が制圧されたのと同時に特使団そのものを捕縛。クワドリア旧領で公開処刑に処した。
制圧とともに、ΘセクターやΔセクターの交易路や兵站線が整理されてより効率的に進軍を行うことができるようになった。
その結果、派遣できる艦隊の数も増やすことができ、より侵攻が早まった。
特使団の公開処刑のあと、おそばせながらイワントキア大同盟とベールゼン血盟は和解と同盟締結を宣言。組織的にルエル連邦に抵抗していくことを決意したらしい。
彼らは、焦土戦術を使い始め、例の超新星爆発宇宙船もたびたびつかうようになった。こちらのペルセウス級やタルタロス級に被害がでるようになってきたが、大量生産される艦船である以上、全体の戦略に影響はなく、むしろ彼らの経済圏が消失し、市民からの非難を彼らの政府は受けるようになってきた。
【銀河ユニオン歴】14年2月1日 首都コロニー【ルエル】クルー区画、商業区、バー・マゼンダ。
「大統領閣下もはでに戦争をしてるな~~。」
最近イワン・カイ・フォグラムトとよく会話することが増えている。二人でこのクルー区画のバーに飲みに行って、愚痴を言い合ってることも少なくない。
彼は祖国の軍を引退したあと、ルエルの第六居住区に家族と引っ越してきて生活している。リエルとのとりひきでそうなったと彼は語っていた。
「好きで戦争しているわけじゃないんだがな・・・・。」
私の言葉にイワンは肩をすくめた。
「まあ、好きで戦争する奴のほうが少ない。誰しもが、火の粉を払うだけで精いっぱいだ。ま、それはともかくΘとΔを統一したら次はどうするんだ?」
「とりあえずは戦争の後始末が先だな。そのあとユニオン憲章の制定作業とかがあるかな。」
「残ってる国はどうする?」
「話し合いで統合に向かうことにはなっている。俺としてもこれ以上ドンパチはゴメンだ。」
「軍は・・・・といってもうちの国はAIだもんな。」
「機械型AIが多いから、仕事であぶれるという事は少ない。今後は銀河内の未踏破区域の開発に向けることになる。正直そういうところの開発を考えると軍の規模としてはまだ足りないくらいだ。」
「銀河内の開発ね~。」
「やっと内政パートだ。」
「内政ねぇ。そういや小耳にはさんだんだが、別の銀河へいく手段の開発に成功したそうだな?」
「ああ、5年前には実用化できてた。だが発表をしてなかったのはドンパチにいそがしかったせいだ。別銀河の探査を行う探査船団の編成中だ。」
「結局、そとにいくんじゃねぇか?」
「とはいってもな・・・ほかの銀河がどうなっているか調べる必要がある。相手が攻めてきました、対応できずに滅びましたじゃおはなしにならんだろ?」
「まあな。」
「正直、そろそろ後進に大統領の座を渡すことも考えている。」
「後継者か・・・・。」
「もっともうちの息子は反抗期でな、二人とも連邦大統領にはなりたくないそうだ。それに世襲でやると問題があるから、別の人物を当てようかとも考えているんだが・・・・・なにせ、いまのところ国民政治学校を開いたのは二年前で、有資格者がでるまであと四年はかかる。その間次善の策として娘にでも押し付けようかと考えている。」
「引退したら、お前さん、何してるんだ?」
「そうだな。こうまで恨みをかってるとなかなか旅行というわけにもいかないしな・・・・探査船団に参加しようかと考えている。」
「かぁ~~わかいっていいねぇ~!次は冒険家か!!」
ロックのウィスキーを私はあおった。
「お前も来るか?」
「おれねぇ。まあ、こっちに来てからナノマシンの補修きのうとかで長生きできそうだからいってもいいかもな。」
「よしじゃあきまりだな。」
俺はウィスキーの瓶からウィスキーをイワンと俺のゴブレットに継ぐと、二人で乾杯をした。
「あらたなる冒険に!!」
「おう!乾杯!!」
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