第7話 人は……人間はいないのか!?

 リザードマン達がT-REXを倒し、表情からでは判断できないが満足げに空を見上げている。

 そしてツトムの所に戻っていく。


「守り神よ、あなたの助言で我々は生き延びることが出来た。我々はあなたへの忠誠を誓おう」


「べ、別にいいよそんなの。僕も久しぶりに会話が出来たし、それにせっかくの知り合えたのに絶滅されるのも嫌だから」


 しかしそれではリザードマン達は納得せず、忠誠の代わりに種族を超えた友人として接する事になった。

 今はそれで妥協したようだが、リザードマン達は心の中で忠誠を誓っていた。


 リザードマンの件は片付いたが、実はこれが世界の大きな変化に繋がる。

 リザードマンの他にも人型の生命は存在しており、それらは例外なく魔力が多くなっており、リザードマンとT-REXの戦いを見ていた者も複数存在する。

 それにともないツトムの立場も変化する。


翌日には犬の人型、コボルトと呼ばれる種族がツトムに会いに来たのを皮切りに、猫の人型ケットシー、鳥の人型ハーピー、イノシシの人型パイアなどが次々に会いに来たのだ。


 どうやら氷河期や隕石の衝突が無い世界では、各種の進化ルートに人型があるようだ。

 それぞれが接触してきた理由は単純で、やはり人型は身体能力が劣っているので狩られる対象になりやすい。

 なのでリザードマンの様に新たな力を授けてもらおうというのだ。


 リザードマンに教えて他の種族に教えないわけにもいかず、それぞれの特性に合った魔法を実演して見せる。

 それにより今までは逃げていた人型種族は狩る側にまわった。

 すると次はどうなるか……元々の獣型が会いに来るのだ。


 獣型は魔力が少ないので攻撃魔法を教えても効果が薄い。

 なので身体強化、防御力や攻撃力を効率よく魔力で向上出来るように教える。

 しかし魔力の強い獣型もいるので、そちらには特性を見て魔法を教えた。

 その結果、恐竜時代は魔法が飛び交う世界になってしまった。


 空を舞うプテラノドンは風の魔法を身に纏い地上の敵に特攻し、陸の亀は大地の槍で相手を串刺しに、人型は集団で目標に魔法を放っている。


「……僕の知らない恐竜時代だ。地球じゃないからまあいいや」


 しかしツトムは別の事を期待していた。

 獣系の人型が居るのなら、その内人間が現れるのではないかと。

 しかしふと気が付く。

 今のツトムはすっ裸、獣系の人型はまだいいが、自分と同じような人間が出てきた場合は変態扱いされるのではないか?


「こうしちゃいられない! 下半身を隠さないと!!」


 と言ってもツトムに裁縫どころか布の作り方を知らない。

 なのでお手軽に済ませる事にしたようだ。


「えっと、恐竜時代に服は無いし原始時代でもいいや、そういったスキルでも作ってみよう」


 ツトムの前にゲーム画面が表示され、画面の一角に『製作』のアイコンが現れる。

 それをクリックすると現在製作可能な一覧が表示された。


「えっと腰蓑こしみのは……スカート? ズボン? 意外と普通の服が作れるんだな」


 その中でこの時代のイメージを損ねないものを選ぶと必要な素材として動物の皮、石、木の皮、獣の牙が表示された。


「木の皮と獣の牙? 一体何に使うのかな。まぁ集めてみよう」


 木の皮と石はそこら辺の物を集め、動物の皮と獣の牙は探して狩る。

 集まったのでスキルを使用すると自然と手が動き出す。


「うわわ⁉ ああ、木の皮をなめして紐にするのか。そして獣の牙は針の代わりに使うんだね」


 石を砕いて鋭利な物を選び動物の皮をカットしていく。

 といっても単純な構造なので石で切り木のひもで縫い合わせるだけだ。


「できた! 皮のスカートだ!」


 これで丸出しから一歩前進し原始人へと進化した! いつ人間が現れても変態扱いされる心配はなくなった。

 だが待てど暮らせど人間が現れる事はなく、それこそ魔法を教えた種から食べ物を貢がれる生活が続いて行く。


「おっかしいな、少し時間を進めてみようかな」


 千年、二千年、三千年と時間を進めるが、地上のどこを探しても猿から進化したような人型は見当たらなかった。

 しかしこの世界になれてしまったツトムは気付いていなかった、ホモ・サピエンスはまだ先の話しだが、すでに人類の祖先である猿人は誕生していたのだ。

 だが見た目が猿やゴリラなので気付いていない。


 なので一旦神モードに戻って一億年程進めた。


 するとどうだろう、あれよあれよと文明が誕生していく。

 人間らしき生き物は木で柵を作り村を形成し、稲作や農耕まで行っている様だ。

 細い木と茅葺かやぶき屋根の住居まである。


「人間だ! 僕が作った腰蓑よりもいい服を着てるぞ! えっとえっと、似たような服を作って……よし行こう!」


 皮を巻いただけの腰蓑を捨て、麻布のシャツと半ズボンを履いていた。

 そして村の側にある林にたどり着くと……頭の上にカゴを乗せた少女に出会う。

 

 

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