第2話 ツトムの世界
ツトムは幼いころから体が弱かった。
弱かったどころか難病指定された病気にかかっており、十三年の生涯で学校に行けたのは数日のみ。
そして十四歳を迎える前に老衰で死んでしまったのだ。
病室で診察を受け、昼過ぎからは寝て一日が終わる。
そんな生活の中で体調の良い日はゲームをやっていた。
アクションゲームは無理だったがシミュレーションゲーム、特に都市開発のゲームが好きでよくやっていた。
だからその感覚で恒星系開発ゲームをやるつもりのようだ。
「さてと、まずは恒星を作らなきゃな」
太陽型の恒星をイメージすると雲のような霧のような細かい粒が集まり始める。
しかし動きが遅い、あまりにも遅いので動いているように見えない。
「あ、これはリアルタイムなんだ。早送りとかないのかな」
そう思うと雲の動きが速くなり、雲の中のあちこちで強い光が放たれる。
その光が一か所に集まり始め、遂に小さな小さな星が誕生する。
ほんの数秒に感じるが、実時間で約百万年が過ぎていた。
さらに時間が過ぎて複数の小さな星が誕生し、それぞれが複雑に絡まり円盤状に、遂には一つの大きな恒星が誕生した。
恒星の引力で落下しなかった離れた場所のガスやチリは恒星の周囲で輪になり、それが時間をかけて衝突を繰り返し十三の惑星が誕生した。
ここまでですでに二億年が経過している。
「おおー星が生まれた! 名前を付けなきゃね、そうだな……大きさがわからないけど太陽でいっか。惑星はどうしよう」
宇宙空間に漂う様に存在するツトムだが、自身の体は存在しておらず意識だけがそこに存在していた。
なので自身の考えている事は実際には存在していないがツトムには色々なものが見えていた。
「命名のアイコンはどれだろう、あったコレか」
ツトムにはゲーム画面の様に様々なアイコンやステータスなどの状態が見えており、本来は存在していないシステムがツトムの意思によって構築されていく。
「他の惑星は……
そして各惑星に名前を付け始める。
第一惑星ダヴィド、第二惑星ヨアン、第三惑星アビボス、第四惑星シオ、第五惑星ヨセフ、第六惑星アントン、第七惑星タデウス、第八惑星ピロス、第九惑星イセ、第十惑星ステバン、第十一惑星イシドル、第十二惑星ミカエル、第十三惑星ゼノン。
この中からだと地球型の惑星が誕生する可能性、ハビタブルゾーンにある惑星は第五惑星ヨセフと第六惑星アントンだ。
第五惑星ヨセフは非常に地球に近いが、第六惑星アントンは地球に似ているといった程度だ。
「さてっと、後はこのまま放置するしかないのかな。五億年程時間を進めよう」
惑星の公転が高速になり、太陽に十三本の輪が発生した。
そして時間とともに公転が遅くなり輪から複数の点に、点がまとまり通常の時間に戻った。
「五億年が数秒で進むって、ゲームだったら人類が滅んでるね」
各惑星のステータスを確認すると、第五惑星ヨセフにはバクテリアらしきものが発生しており、生命が誕生したといって問題ないだろう。
しかし第六惑星アントンにはまだ何も誕生していない。
「う~ん、ヨセフは完全に地球型だから進み具合が地球に似てるのかな? あ、今気が付いたけど僕の考えてる時間はヨセフがベースになってるんだね。自転が一日で公転が三六五日になってる。アントンは自転〇.九五日で少し早く、公転四九一日になってる」
第五惑星ヨセフより外側にある第六惑星アントンは公転周期が長く、一日が短い。
これが生命や他の違いへと繋がっていく。
「でもバクテリアが誕生してても僕が出来る事なんてないし、二十億年程進めよう」
また太陽に輪が誕生し、今度は少し長く輪が続いて通常時間へと戻る。
「あ! 微生物? プランクトンみたいなのが海にいっぱいいるし、
そしてさらに時間を進めると、クラゲ、三葉虫、海藻が誕生していた。
それからはゆっくり、といっても千年単位で時間を進めていくと魚や見た事もない生き物が沢山誕生し、そして滅んでいく。
そして遂に。
「上陸した! 植物や虫、両生類かな、陸に上がった!!」
そしてさらに時間が進み、遂にツトムが待ちに待っていたものが現れた。
「恐竜……恐竜だ!」
最初は小型が多かったが、次第に巨大化し、遂にはT-REXが誕生したのだ。
「さ、触りたい!」
そのツトムの意思により、ツトムの意識は急速に第五惑星ヨセフに引き寄せられ、大森林の中にポツンと一人の人間が誕生していた。
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