眠れずに四時を迎えた君は★

眠れずに四時を迎えた君は風船を道連れに家を出た。うぐいすの囀りから遠ざかるよう道を行き、蛙の合唱に出会って引き返した。謳歌をよそに月がまどろむ。早朝の奏者が休符を飛ばす。君は藪の中で踊る雀を一羽残らずバットで打ちたくなる。が、持っているのはお人好しの風船だ。


人ひとり見かけないが、まだ眠っているのか近隣住民は。身を横たえて水平思考。夢の中では垂直思考。真っすぐ立てない不眠症者は藪睨み。まどろむ月を妬んでる。


交差点の中心で風船を割ったら月の眠りを破れるなんて、アスファルト色の静けさを汚せるなんて正気だろうか。そんな疑念も浮かばず君はせっかちにボールペンを振り下ろす。手早くオナニーを済ますみたいに。


車一台来ない通りで親指を立てる間抜けの振りを日が昇るまで続ける仕事。空を渡る烏を数える仕事。雀をバットで打ち落とす仕事。あくびを捕まえる仕事——僕が本当にやりたい仕事。

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