第211話
「うーん。それはやめた方がいいと思うわよ」
「私もかおりんと同じ意見かなぁ」
ミカ先生のことについて自分の考えを話すと、香織とネネさんはすぐに首を振った。
「そう、なの……」
「そうね」
理由は、なんでも思い通りになると勘違いさせるから。他にも何か言いたそうだけど、さ、先にアヤさんの意見を聞いておこうかな……
「そうですね。私も香織さんとネネさんの意見に賛成ですね」
「そうなんだ……」
「あ、タケトくんの考えでも問題解決できると思うんですよ?
ただ、それだと真面目に校則を守っている生徒さんまで問題児になる可能性がありそうだなと……」
「え」
話を続けるアヤさん。その話に耳を傾けていると、俺が考えている握手会は、何も問題が起こっていなければ考えもしなかった話で、今回、俺が握手会を行えば、そのキッカケを与えたのは1年生の問題児グループとなってしまう。
そのような問題児は次も同じような事を繰り返すだろうという事と、そのような行動を真面目にしていた生徒が見ていれば何かしら思うだろうと。
最悪は問題児グループと同じようなことをすれば自分たちも握手会をしてもらえると思い、同じような問題を起こすのではないかと、アヤさんは言いたかったらしい。
そして、その対象は妻であるミカ先生だけでなく、婚約者でもあるバンドメンバーになってもおかしくないと。
だから、もうしばらくは様子を見た方がいいと思ったそうだ。
「そっか……よく考えたらそうだよね」
みんなから意見を聞いて自分の考えが浅はかだったと反省する。
リラクセーションを使えばどうにかなると簡単に考えていたんだ。ダメだな俺。
みんなに聞いてよかったと思っていると……
「ちょっと言いにくいんだけど、タケトくんが慌てて動かなくてもすぐに解決すると思いますよ」
「私もそう思うわよ」
「え、それはどういうことですか?」
アヤさんがそう言えば香織が頷く。
俺が不思議に思っていると今度はネネさんが口を開いた。
「えっとね、タケトくんが登校してから今まで男子生徒が登校できなくなる事って1度もなかったじゃない? これって学校側にとっては大問題なはずよ。
あとは、まあ、生徒会や他の生徒たちも黙ってはいないでしょうね」
言われてみれば、俺が学校に行くようになってからこんな事は1度もなかった。
でも大問題というにはちょっと大袈裟な気もするけど。なんてことを考えていたら……
ピロン♪
ピロン♪
ピロン♪
ピロン♪
不意にMAINメッセージが届いた。
「誰だろう……」
みんなにごめんと言ってから、スマホを取り出し確認してみれば、さおりたちからで、4人が同時に送ってきていた。
さおり『例の1年生は停学になるみたいですよ』
ななこ『朗報。問題の1年停学』
つくね『問題のあの子たち停学になったみたいだよ』
さちこ『騒いでいた1年生は停学だって』
しかも同じような内容だ。俺がミカ先生の事を心配していたからすぐに教えてくれたのだろうね。みんな優しい。
しかし、参ったな。俺があれこれ悩んでいるうちに問題が解決してしまった。
これは時間をもらった妻たちにも申し訳ない。
とりあえず、さおりたちに『教えてくれてありがとう』とお礼を伝えて、MAINメッセージの内容を妻たちにも教えると、やっぱりといったような表情を浮かべてすぐに納得していた。
その後、妻たちはいつでも相談に乗るからねと言って仕事に戻った。
それで俺はというと、学校に乗り込む気満々だったから、ちょっと身体を動かしてスッキリしようとミルさんと鍛錬をすることにした。
夕方には顔色の良くなったミカ先生が、さおりたちを連れて帰宅した。
「生徒会と風紀委員会がすごかったよ」
「すごい剣幕だったからちょっと怖いくらいだったけど」
「そうそう。問題児のところまで案内していた1年生の子はクラス委員長だと思うけど、生徒会と風紀委員会の迫力にちょっと涙目になってたもんね」
「うん。小刻みに震えていて可愛そうだった。トラウマにならなきゃいいけど」
さおりたちの話では、昼休みに校庭でたむろっていた例の問題児のところに生徒会と風紀委員会が突撃。
有無を言わさずどこかに連行していったらしい。
それからしばらくして生徒会から全校女子生徒に向けて、問題を起こした生徒についての処分が伝えられたらしい。
生徒会から伝えられた内容は、女子生徒に向けてのものだったらしく、詳しくは教えてくれなかったけど、このような事が続くと男子生徒の登校がなくなるのでやめましょう、といったような内容だったらしい。
一之宮先輩が会長の時も規律がキチンと守られていて過ごしやすかったけど春木先輩もやる時はやるんだね。ちょっと意外だな。
ちなみに、停学になった1年生は前回お世話になった香織の会社が預かり、夏休みが明けた新学期には、北川さんもびっくりするほど真面目な生徒になっていたとかいないとか……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます