第203話

【203話の登場人物(名前だけを含む)】


○剛田武人(主人公)

 高校2年生の16歳

 武装女子ボーカル(タケト)

 保護官1人

 妻5人、婚約者5人、婚約者仮(仮)2人

 子ども1人(花音)


◯面堂未留(ミルさん)

 施設育ち

 S級保護官

 タケトの妻

 オッドアイ

 26歳


◯新山美香(ミカさん・ミカ先生)

 希望ヶ丘学園

 教諭(2年)タケトの担任

 タケトの妻

 25歳


◯中山綾子(アヤさん)

 武装女子会

 武装女子兼タケトのマネージャー

 沢風和也の元マネージャー

 タケトの妻

 25歳


◯君島沙織(さおり)

 武装女子のサリ(ギター)

 作詞作曲

 ・『微笑みを君に』2曲目

 学級委員長(2年)

 婚約者、高校2年


◯深田夏菜子(ななこ)

 武装女子のナコ(ベース)

 作詞作曲

 ・『春〜来い濃い恋』4曲目

 副委員長

 テレパスが使える

 婚約者、高校2年


◯霧島つくね(つくね)

 武装女子のツク(キーボード)

 作詞作曲

 ・『君の側で』1曲目

 ・『あきらめないで』5曲目

  (サイキックスポーツイメージソング)

 アイドル好き

 婚約者、高校2年


◯牧野幸子(さちこ)

 武装女子のチコ(ドラム)

 作詞作曲

 ・『頑張る君と』3曲目

  野原建設CMソングでもある

 さちまきチャンネル(登録者10万人)

 親がネグレスト

 婚約者、高校2年


※武装女子

企画『夢応援プロジェクト、君の歌を歌います』他。

①作詞作曲 夢追い女子(ペンネーム)

『底辺だって悪くない』

②作詞作曲 健康花子(サイキックスポーツ協会)

『サイキック体操で今日も元気』

③作詞作曲 サイコロ子(サイコロイメージソング)

『サイコロ・ビクトリー』


◯南条静香(南条さん)

 南条グループ役員

 複数の会社の代表

 24歳


◯ 南野万理様(マリさん)

 南条グループ(部長クラス)

 南瓜芸能事務所

 シャイニングボーイズマネージャー

 28歳

 こっそりサーヤ


◯北川彩葉(きたがわいろは)

 北条家の…

 学級委員長(1年)

 高校1年16歳

 サーヤ


—————————————————

————

——

「タケトくんよ」

「タケトくんが来たわ」

「きゃータケトくん」

「タッケトくーんっ」


「タケト様失礼します」


 返事をする間もなく、俺はおデブモードのミルさんに抱き抱えられてその場を離れる。


「あっ」

「待ってよタケトくーん」

「タケトくーんっ」

「あーん、もうっ」


 こうなった理由は分かっている。そう『みんな輝け』が放送されたからだ。俺がテレビ出演した回のね。


 それからというもの、OLのお姉さんや女子学生さんから待ち伏せされている。

 たまに小学生くらいの子やおばあちゃんたちもいたりするけど……


 ミルさんが大丈夫だと判断した時には普通にサインや握手をする。それこそ昨日とか、普通にサインと握手して、一緒に写真まで撮ったよ。


 でも、今日のみんなはダメだ。俺が一目見ても分かるほど目が血走っていて、サインなんてしている雰囲気じゃなかった。


 俺がリラクセーションを使えば問題なく解決できるんだけど、それをミルさんが良しとしない。


 理由は教えてくれないけど、ミルさんが女性関係で口を出してくることはほとんどないから、関わるとよくない人たちなんだろうと思っている。


「もう大丈夫です」


 ミルさんはそんな人たちを一瞬で振り切り、学校の正門近くで俺を降ろしてくれた。


 自分で走ればいいんだけど、こういう時のための保護官です。気にされてはいけません、とミルさんにいつも言われているからつい頼ってしまうんだよね。


 流石に学校の中までは追いかけてこないか……

 しかし、いつもだったらこんな騒動も落ち着いているところなんだけど、今回はちょっと長引いているんだよな……


「ミルさんありがとうございます」


 お礼を伝えるとミルさんは口角を少し上げてこくりと頷いてくれた。


「あなたたちっ。ダメなものはダメなの、早く教室に入りなさいっ」


 ——あっ……


 そうだった。今年の1年生には俺の熱狂的なファンだと言う生徒たちがいて(ミカ先生に聞いた)、ミカ先生を悩ませている。


「一目見るだけだし、いいじゃない」

「そうよ別にいいじゃん」

「新山ちゃんこそタケト先輩を独り占めにしたらダメだよ。タケト先輩はみんなの癒しなの」


「新山ちゃんじゃありません。キチンと先生と呼びなさい。それに予鈴はとっくに鳴っていますよ、早く教室に行きなさい」


 うーん、昨日も見た光景だね。今日もミカ先生が1年生の子たちに注意をしているけど、響いてなさそう。


 ミカ先生が俺と結婚していることはすでに知られている。

 俺が妻や婚約者を大切にしていることはSNSにも上げたことがあるし、学校のタブレットにもそう登録しているからよっぽど俺が恨まれていない限りはちょっかいを出されることはない。と思っているけど、こんな場面を見るとちょっと心配になる。


「予鈴? そんなの聞こえな……あっ!?」


 やばい見つかった。


「きゃー、タケトせんぱーいっ。おはようございますっ」

「タケト先輩、おはようございまーすっ」

「お、おおはようございましゅ」


「あはは……おはよう」


 昨日はすぐに身を隠して事なきを得たけど、心配でミカ先生と1年生のやり取りを見ていたら隠れ損ねてしまったよ。


「きゃー」

「あーんすき。タケト先輩だいすきですっ」

「か、噛んだ……」


 ——これは……


 ミカ先生と一緒に教室まで行きたかったけど今日は無理かもしれないない。


 ちなみに、ミカ先生とアヤさんが一緒に暮らすようになった今でも、ミカ先生は正門に立って待ってくれている。

 

 そんなミカ先生の朝は当然早く、俺が起きた頃には朝の準備を終えて家を出て行く。


 そういえば、初めていってらっしゃいのキスをした時にはびっくりさせてしまった。


 これがウチの普通だよ、って伝えたら顔を真っ赤にしながらハグで返され、それからもずっと続いている。


 それにしても、今にでもこちらに駆け出してきそうな雰囲気になっている、あの1年生たちはどうしようかな。


 とりあえず握手をしてから、リラクセーションで落ち着かせて、遅刻になりそうだよって伝えてみようかな……


「あなたたちは、こんなところで何をしているのかしら?」


 そんな時だ。今にもこちらに駆け出しそうな彼女たちに向かって声をかける女の子がいた。


「あ、委員長!」

「北川委員長」

「なんでここに委員長が!?」


 委員長? 北川? どこかで見たことがあるような子だけど……あ、思い出した。あの子、新入生代表で挨拶した子だ。


「昨日も同じようなことで注意されたと思うのですが、懲りてないようですね。今日は反省文でも書きますか?」


「え」

「それはちょっと……」

「あはは……」


 目に見えて慌て出した彼女たち。何度か俺の方に視線を向けてきたけど、結局は『タケト先輩、今度サインください』と言い北川さんから逃げるように校舎の中に入っていった。


 「ウチのクラスの子たちがご迷惑をおかけしました。すみません」


 1人残された北川さん。1年生の女の子たちが校舎の中に入ったのを確認してから俺とミカ先生に向かってペコリと頭を下げた。


「正直助かりました。ありがとう北川さん」


「私、学級委員長ですから」


「そうね。北川さんは学級委員長でしたね。でもそろそろ教室に戻らないと遅れるわよ」


「はい。では私はこれで失礼いたします」


 ——へぇ……


 流石、学級委員長。キチンとした子のようだと思っていたら、突然俺の方に振り向き、


「あ、あの私もサインはほしいです」


 恥ずかしそうにしながらもはっきりとそう言い、俺から逃げるように校舎の中に入っていった。


「あぅ」


 途中、躓いて転んでいたけど、見なかったことにした方がいいよね。


「今日は特に賑やかだったわね……おはようタケトくん」


「おはようございますミカ先生」


 ミカ先生の顔がちょっとだけ疲れているように見えたのでヒーリングとリラクセーションをかけてつつ教室に向かったよ。


 ————

 ——


「主な活動内容は、発声練習、筋トレ、インプロ(コミュニケーションをはかるための簡単なゲーム)、エチュード(場面を設定しての短いアドリブ劇)、演劇DVDの鑑賞、あと脚本作成などもするらしいよ」


 サイコロ部に入ったタケヒトくんとサンちゃんの目を盗んで、素早く近づいてきたさおりがメモを見ながら言う。


「あとは文化祭や演劇の大会などが近づくと、芝居に必要な舞台装置や大道具、小道具などを作成したりもするそうよ」


 これは演劇部の練習内容だ。同じクラス(2年生)の演劇部の子にさおりたちが聞いてくれたのだ。


 ドラマにゲスト出演することはまだ伏せられているからね。


 ほら、俺が直接演劇部の彼女たちに尋ねると不思議に思うだろうし、勘のいい子だったらたぶん気づく。だから正直助かった。


 ちなみにタケヒトくんとサンちゃんは俺の隣の席でサイコロが載っているホビー雑誌に夢中だ。俺も後で見せてもらおう。


 でも今回に限ってはあまり心配しなくてもよくなった。


 というのも、俺がゲスト出演することになっている『ドクターコトリ』と『桐の花学園II』の役なんだけど、どちらも剛田武人として出演すればいいらしいのだ。


 つまり、セリフは覚えないといけないけど、演技はする必要がない。いや、演技はするんだけど、普通に自分らしさを出していけばいいらしい。


 なるほど、と思ったよ。それでもアクションシーンや歌を歌うシーンはあるようだから精一杯頑張ろうとは思うけど、ちゃんとした演技を学ぶ時間がなかったから気持ちはかなり軽くなったよ。


 強引に見えた南条さんだったけど、ちゃんと俺のことも考えてくれたんだね。


 南条家は女性至上主義だと何度も聞いているから不安があった。

 でも、マリ(南野マネージャー)さんだけじゃなく、南条静香さんも男性に対して優しいのかもしれないね。

 

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