第202話 肥田晶視点
【202話の登場人物(名前だけを含む)】
○剛田武人(主人公)
高校2年生の16歳
武装女子ボーカル(タケト)
保護官1人
妻5人、婚約者5人、婚約者仮(仮)2人
子ども1人(花音)
◯『シャイニングボーイズ』(南条家、かじゅう組)、南瓜芸能事務所
長身で優れた容姿の男性4人組のグループ。
デビュー曲『シャイニングパラダイス』
◯南条相(アイキ)
南条家かじゅう組
南瓜芸能事務所
シャイニングボーイズリーダー
相輝(あいき)
17歳
年上だがタケトのことをアニキと呼び尊敬している
妻0、子ども3人
◯南条海(なんじょうかい)
南条家かじゅう組
南瓜芸能事務所
シャイニングボーイズ
海輝(かいき)
17歳
年上だがタケトのことをアニさんと呼び尊敬している
妻0人、子ども4人
◯南条彩(サイキ)
南条家かじゅう組
南瓜芸能事務所
シャイニングボーイズ
彩輝(さいき)
17歳
年上だがタケトのことをアンちゃんと呼び尊敬している
妻0人、子ども3人
◯南条大(ダイキ)
南条家かじゅう組
南瓜芸能事務所
シャイニングボーイズ
大輝(だいき)
17歳
年上だがタケトのことをタケ兄と呼び尊敬している
妻0人、子ども5人
◯紫ゆう(紫さん)
南瓜芸能事務所
女優兼シンガーソングライター
30歳、独身
女子も好き
ドラマ初主演『ドクターコトリ』
◯崎宮麻子(崎宮さん)
南瓜芸能事務所
大学生
21歳、独身
女優兼歌手
『桐の花学園II』
◯肥田晶(スケボー先輩、肥田先輩)
高橋屋本社勤務
ムーブプレイヤー(高橋トゥールス)
タケトの婚約者(仮)
肥田竹人の姉
18歳
◯早川邦子(クニコ)
高橋屋本社勤務
同期18歳、独身
ショットプレイヤー(高橋トゥールス)
◯大場雅子(マサコ)
高橋屋本社勤務
同期18歳、独身
パワープレイヤー(高橋トゥールス)
〈念体を使う競技〉
◯『サイキックパワー』個人技(1人)
パワー測定マシン(パンチングマシンのようなもの)を使ってその破壊力の高さを競う。
◯『サイキックムーブ』団体(5人)
中央に準備されている鉄アレイ(鋳鉄製の重し)などを自分の陣地に移しその重量を競う。
◯『サイキックショット』ダブルス(2人)
競技用の念導具(銃タイプ)を使い目標物を撃ち抜く。的は貫通させないとポイントにならない。的が厚くて遠くなるほど獲得ポイントは高くなるが、その獲得したポイントの合計で勝敗を決める
◯『今月のサイキックさん』という15分の短い番組。
pリーグで活躍する選手にアポなしで突撃リポートする番組。
—————————————————
————
——
でも、その最後のゲストがテレビに映ると僕は驚くと同時に胸がドクンと高鳴った。
『武装女子のタケトです』
『サリです』
『ナコです』
『チコです』
『ツクです』
「きゃー」
「うそっ! タケトくんだよタケトくん!」
タケトくんだ。タケトくんが映っている。今度出るって聞いていたけど、今日の放送だったんだ。
「タケトく〜ん。愛してるよ〜」
「私たって大好きだよ〜」
「タケトく〜ん」
タケトくんがいる訳じゃないのに、食堂内が途端に騒がしくなったけど、テレビに映るタケトくんはやっぱりカッコよかった。
そんなタケトくんが微笑んでいるのを画面越しに見る。
「ああ〜んカッコいい」
「こっち、こっち向いて」
「笑った、今私に笑ってくれたよ」
「私だって」
テレビに向かって先輩たちがおかしなことを言っているけど、先輩たちがそうなるのも理由がある。
先輩たちの話によると、タケトくんがサイキックスポーツのイメージボーイを務める前までは、経費は年々削られ、ここの社員寮も老朽化が酷かったそうだ。当然、メンバーの補充はなく人数は減る一方。
それがタケトくんがイメージボーイを務めるようになってからすぐに『高橋トゥールス』を応援する声が増えるわ、他の社員からの当たりも柔らかくなるわ、経費は増えて社員寮もきれいにリフォームされるわ、でガラリと環境が変わったのだとか。
だから、タケトくんのことを神のように崇拝している先輩もいるし、この食堂にもタケトくんの写真が額縁に入れられ飾られていたりもする。
みんな口にしないけど、その写真に向かって『今月のサイキックさん』という15分番組で、タケトくんが突撃リポートしてくれないかと毎日のように祈っているんだよね。
もうお分かりだと思うけど、僕が入社できたのもタケトのおかげだったんだよね。
タケトくんには助けられてばかりだね。僕の心もそう。あの日の出来事は今でも鮮明に覚えている。
——『先輩、いや、晶さん。俺待ってます。晶さんのブレスレット……俺、楽しみに待ってますから』
——『!? ぐすっ……ぅん。僕、絶対に代表選手になるから。だから待っててよ』
1日だって忘れたことはない。僕は絶対に代表選手になって君に……
あっ、テレビに映るタケトくんに見惚れていたら画面が変わった。
『紫さんと崎宮さんは女優だけでなく歌手としても活躍しているんですよね』
『そうそう。俺っちたちシャイニングボーイズが所属する事務所の先輩で、今日は俺たちのために来てくれたんだよね』
今はタケトくんたち武装女子からシャイニングボーイズが映っている。少しがっかりしていると、
「もしかして、アキラもタケトくんのファン?」
一緒の席に座っていたクニコからそう声をかけられる。答えは決まっているけどね。
「うん。僕はタケトくん一筋だよ」
「おお! アキラも言うねぇ。でも分かるタケトくんカッコいいもん。私も好き」
「タケトくんなら私も好きだよ。いいよねサイキックスポーツのイメージボーイにもなってくれたし、カイキくん推しの私でもタケトくんだけは別なんだよね」
クニコと話していたらマサコまで入ってきた。2人もタケトくんは別腹で、好きだと聞いてちょっと複雑。
「あ、アイキくんだ。サイキくんも映ってる」
「アイキくんか……私的にはタケトくんをもっと映してほしいかも」
「ちょっと。アイキくんだってカッコいいんだから」
「まあまあ、今はテレビだよ、テレビ。ね」
険悪になりかけていた2人をどうにか宥めて、再びテレビの方に顔を向ける。
『そうそうみなさん知ってますか? この番組には初めて来てもらえましたが武装女子のみなさんとの共演は2回目なんですよね』
『武装女子のみなさんの曲はどれもサイコーで俺たちも大ファンなんですよ。ボーカルのアニ……タケトさんの歌声がホントサイコーで痺れます。聞いたことないみんなは是非聴いてみてください。
他にも最近ではサイキックスポーツのイメージボーイに抜擢されて活躍されていますね。
実は俺たちもサイキックスポーツには興味があったんですよね。必要な時には是非声をかけてください』
カイキさんの言葉に他のシャイニングボーイズのみんなが頷いている。
「へぇ、カイキくんもサイキックスポーツに興味があるって」
「頷いていたけどアイキくんもかな」
「それならサイちゃんも頷いていたね」
「なんかうれしいな……」
どちらかと言うと肩身の狭い思いをしてきていた先輩方は、彼らのそんな言葉に感動していた。
代表選手になりたい僕からしたらあまりやる気になってもらっても困るけど、やる気がない人よりもいいか。僕だって負けないもん。
『それでは、早速輝たい君を俺たちみんなで応援したいと思います。今日の1人目の輝たい君は!』
デンッ!
デンッ!
デンッ!
応募者の悩みに共感したり、頑張りたいと前向きに行動しようとする姿勢に勇気をもらったり……
紫ゆうさんや崎宮麻子さんの応援ソングに元気をもらったり……
でもやっぱり1番は武装女子が歌う応援ソングだった。
特に武装女子が歌っている時は、画面の下半分にサイキックスポーツをやっているタケトくんの凛々しい姿が流れていて涙が出た。
先輩たちもそんな感じだった。みんなサイキックスポーツを応援してくれるタケトくんに感動して涙を流していたからね。
今日の練習は終わっているのに、また身体を動かしたくなったのか、そわそわしていたんだ。かくいう僕もね。
今すぐにでも、ムーブの練習がしたくたまらなかった。
楽しい時間はあっという間だ。夢中になってテレビを見ていれば番組は終わりを迎えようとしていた。
『いつも思うけど1時間なんてあっという間だね。
俺たち……輝きたい君(女性)たちをちゃんと応援できたかな……?』
不安そうな顔のシャイニングボーイズに向かって先輩たちが、
「応援できてたよ」
「元気でたよ」
「カッコよかった」
毎回こうだ。こちらの声が届くことはないと分かっていても先輩たちは「終わらないで」「もっと見ていたい」といった声を上げる。
でも今回はタケトくんが出演している神回だから泣いている先輩もいる。僕だってちょっと泣きそう。
『……それじゃあ、エンディングはいつもの『元気120%』でお別れするけど、今回は武装女子のタケトさんとのコラボバージョンだよ』
『俺たち一所懸命歌うからね』
うそ、エンディング曲をタケトくんも歌うんだ。うれしい。
「え!」
「うそ」
「タケトくんも歌うの」
そう思ったのは僕だけじゃなくクニコやマサコ、先輩たちもそう思ったみたい。みんな姿勢を正してやや前のめりになる。
『シャイニングボーイズwithタケトで『元気120%』です。どうぞ!』
ゲストのみんなで声を揃えると、タケトくんが小さく手を振っていた。
思わず僕も手を振り返してしまったのは内緒だよ。
って、クニコには見られていたらしく笑われてしまったけど……別にいいもん。
僕がタケトくんを好きだという気持ちは変わらないから。
♪〜
すぐにエンディング曲の『元気120%』が始まり、スケートボードに乗ったアイキくんが画面に飛び出してくる。
わ、タケトくんだ!
すぐにスケートボードに乗ったタケトくんも飛び出してきたけど、ちょっと違和感が……
あれ、気のせいかな?
スピードに乗ったアイキくんの後をタケトくんは一定の距離を保ちつつ着いていく。
みんなが一定の距離を保ちスケートボートを走らせる様は一つの大きな生物を表現しているようで惹きつけられる。
先頭のアイキくんが舞い上がるとタケトくんも同じように舞い上がり鋭いターンを繰り返す様はとても美しい。
スケートボードで舞い、笑顔で歌うタケトくんから目が離せない。
やっぱりタケトくんはすごいや。僕はタケトくんの念動レベルが1だと知っているから余計にそう思う。
タケトくんは男性なのに必死に練習したんだよね。カッコよくて優しくて僕の尊敬できる人。僕も早く追いつくからね。
テロップが流れていよいよ番組も終わりとなるけど、ウチの食堂ではみんなが立ち上がり涙を流して拍手をしていたよ。
笑っちゃうよね、でも僕も同じように拍手をしていたよ。
タケトくん待ってて、僕も頑張るからね。
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