第201話 肥田晶視点
【201話の登場人物(名前だけを含む)】
○剛田武人(主人公)
高校2年生の16歳
武装女子ボーカル(タケト)
保護官1人
妻5人、婚約者5人、婚約者仮(仮)2人
子ども1人(花音)
◯『シャイニングボーイズ』(南条家、かじゅう組)、南瓜芸能事務所
長身で優れた容姿の男性4人組のグループ。
デビュー曲『シャイニングパラダイス』
◯南条相(アイキ)
南条家かじゅう組
南瓜芸能事務所
シャイニングボーイズリーダー
相輝(あいき)
17歳
年上だがタケトのことをアニキと呼び尊敬している
妻0、子ども3人
◯南条海(なんじょうかい)
南条家かじゅう組
南瓜芸能事務所
シャイニングボーイズ
海輝(かいき)
17歳
年上だがタケトのことをアニさんと呼び尊敬している
妻0人、子ども4人
◯南条彩(サイキ)
南条家かじゅう組
南瓜芸能事務所
シャイニングボーイズ
彩輝(さいき)
17歳
年上だがタケトのことをアンちゃんと呼び尊敬している
妻0人、子ども3人
◯南条大(ダイキ)
南条家かじゅう組
南瓜芸能事務所
シャイニングボーイズ
大輝(だいき)
17歳
年上だがタケトのことをタケ兄と呼び尊敬している
妻0人、子ども5人
◯紫ゆう(紫さん)
南瓜芸能事務所
女優兼シンガーソングライター
30歳、独身
女子も好き
ドラマ初主演『ドクターコトリ』
◯崎宮麻子(崎宮さん)
南瓜芸能事務所
大学生
21歳、独身
女優兼歌手
『桐の花学園II』
◯肥田晶(スケボー先輩、肥田先輩)
高橋屋本社勤務
ムーブプレイヤー(高橋トゥールス)
タケトの婚約者(仮)
肥田竹人の姉
18歳
◯早川邦子(クニコ)
高橋屋本社勤務
同期18歳、独身
ショットプレイヤー(高橋トゥールス)
◯大場雅子(マサコ)
高橋屋本社勤務
同期18歳、独身
パワープレイヤー(高橋トゥールス)
〈念体を使う競技〉
◯『サイキックパワー』個人技(1人)
パワー測定マシン(パンチングマシンのようなもの)を使ってその破壊力の高さを競う。
◯『サイキックムーブ』団体(5人)
中央に準備されている鉄アレイ(鋳鉄製の重し)などを自分の陣地に移しその重量を競う。
◯『サイキックショット』ダブルス(2人)
競技用の念導具(銃タイプ)を使い目標物を撃ち抜く。的は貫通させないとポイントにならない。的が厚くて遠くなるほど獲得ポイントは高くなるが、その獲得したポイントの合計で勝敗を決める
◯『今月のサイキックさん』という15分の短い番組。
pリーグで活躍する選手にアポなしで突撃リポートする番組。
—————————————————
————
——
「あ〜早く始まらないかな」
「時間までもう少しあるから夕飯先に食べてようよ」
「クニコ、アキラ、遅れてごめん」
「マサコ遅いよ座って座って」
「うん。一緒に食べよ」
僕は肥田晶。4月から高橋屋という家電量販店の本社に勤めている。
高橋屋は全都道府県に展開し、量販店ならではの安さ、豊富な品揃え、配送ネットワークで暮らしのサポートをしている企業だ。
そんな高橋屋には「高橋トゥールス」というサイキックスポーツチームがあり、僕はそこのムーブプレイヤーとして所属している。
学生の頃と違い仕事とプレイヤーとしての生活は大変だけど、時々送られてくるタケトくんからのMAINメッセージを励みに頑張っている。
ちなみにパワープレイヤーが15人、ムーブプレイヤーが15人、ショットプレイヤーが6人の全体で42人のプレイヤーが所属するチームだ。
今の成績は8試合が終わり、0勝6敗2分、8チーム中7位だからもう少し頑張りたいところだけど、先輩たちの話によると、これがなかなか難しいようだ。
順位 クラブ 試合 勝 分 負 得点
1 北条ホワイズ 8 7 1 0 15
2 南条ブラックス 8 6 2 0 14
3 東条レッズ 8 6 1 1 13
4 西条ブルズ 8 6 0 2 12
5 佐藤ビークルス 8 2 0 6 4
6 鈴木ビジネス 8 1 1 6 3
7 高橋トゥールス 8 0 2 6 2
8 田中オフィス 8 0 1 7 1
同期は今一緒に食事をしているクニコとマサコの2人。初日から気が合い仲良くなった。
マサコはパワープレイヤーで、クニコは元々ムーブプレイヤーとして入社したそうだけど、ショットの才能が高かったらしく、ショットプレイヤーに転向している。
面接で聞いていたとおり、同期はもちろん先輩方もみんなお胸が大きく念力量も高いようだった。
お胸の大きさ=念力量はあながち間違いでもないのかも。
そのため先輩方はもちろん、僕たち新人にも育乳のメニューは普通に組み込まれている。
一流のサイキックプレイヤーになるためには必要なことなので、タケトくんにはMAINを使って伝えたら『頑張って応援しているよ』と返事がもらえた。うれしかった。
ん?
「よかった間に合った」
「あんたが、ゆっくりお風呂に入るからでしょう」
「だって、ゆっくり浸からないと疲れとれないじゃん」
「そうだよ。お風呂はゆっくり浸かりたいもん」
3人で食事をしていると先輩たちがぞろぞろ食堂に集まってくる。
——そう言えば今日は……
あっという間に先輩方だけじゃなく、寮母さんや食堂のスタッフさんまでもが席に着く。
でも、これは毎週のことなので見慣れた光景でもあった。
「そうだった、今日は『みんな輝け』があるんだったね」
「忘れてたの? 私はアイキくん推しで毎週楽しみにしてるから絶対忘れないよ」
マサコが思い出したように言えば、クニコが信じられないと首を振る。
僕はタケトくん一筋だからシャイニングボーイズには興味がない。
だけど、僕だけ部屋にいてつまらないし、孤立するのもイヤだからね。
「今日のゲストって誰?」
「アイキくんさえ出てれば誰でもよし」
「ええ! まあ私もカイキくんが見れれば誰でもいいんだけどね」
あまり話しかけても悪いので私もテレビの方に目を向ける。
ここは社員寮の食堂で、クニコやマサコを含めたみんなの視線はすでに65型のテレビに釘付けになっていた。
元々、社員食堂には24型のテレビが設置してあったそうたけど、シャイニングボーイズが初めてMCを務める番組『みんな輝け』が始まってすぐに、寮のみんなでお金を出し合って入れ替えたんだ。
僕はお金に余裕がなかったから初任給が出てから後で払ったんだよ。
♪〜
「きゃー」
「アイキー」
「カイキ!」
「ダイキくーん」
「サイくーん」
番組のオープニング曲『シャイニングパラダイス』が流れると同時に食堂は黄色い声援が飛び交う。
収録された番組なんだけどグッズ商品の団扇をパタパタ振っている人もいるからちょっと笑っちゃうんだよね。
シャイニングボーイズがスケートボードに乗って登場すれば食堂はさらに盛り上がる。
「きゃー」
「アイキー」
「きゃー」
「カッコいい!」
『……ぱらだ〜いす〜〜♪』
歌い終わりの決めポーズにみんなはうっとりするんだよね。
ちなみにこの番組は毎回録画されていて、好きな時に見れるようになっている。僕は見ないけど。
『きゃーアイキく〜ん』
『カイキ』
『サイちゃーん』
『ダイキくーん』
テレビ画面の方(観覧者)からも黄色い声が聞こえてくるのはいつものことだけど、先輩たちもいつかスタジオに行ってみたいと言って、毎回スマホを使って観覧者に応募している。残念ながら誰も当たった人はいないようだけど。
『みんな〜元気してたかな』
『今日も、俺たちシャイニングボーイズが頑張っている君(女性)を応援するからな』
『ちょっとカイキ。応援したいのは俺っちたちだけじゃないよ……ほ、ほらよく見てよ。来てくれてるよね? 今日のゲスト』
『そうだな。おいアイキ』
サイキくんが噛むとサイキくん推しの先輩が可愛いと悶えていたが、それもすぐに収まる。なぜなら……
『そうだね、ではさっそく! 本日のゲストは……』
『どうも〜紫ゆうです』
今日のゲストが紹介され始めたからだ。ゲストはギリギリまで伏せられているから、みんな興味津々なんだ。
ゲストで登場した紫ゆうさんが両手を振っている。
「わー」
「ゆうちゃんだ」
「ゆうちゃんかわいい」
そっか、4月から『ドクターコトリ』というドラマが始まっているからその番宣に来たんだね。
紫ゆうさんは歌も上手くて演技もできるからすごいんだよね……そんなことを考えている間に、
『崎宮麻子(さきみやあさこ)です』
次のゲストである崎宮麻子さんが映っていた。
崎宮麻子さんもドラマの番宣を兼ねているっぽいね。
構えたけん玉はドラマと関係あるのかな? あ、ドラマは見たことないけどCMでちょっとだけ見たことあるよ。たぶん武器だ。
「おっ、崎宮ちゃんだ。カッコいいね」
「うん。崎宮ちゃんは綺麗だよね」
「この前ドラマみたけどアクションシーンもすごかったよ」
いつも思うけど、この番組は流れるようにゲストを紹介するんだよね。
シャイニングボーイズの彼らを映する方が視聴率がとれるからだってみんな話している。
あーあ。崎宮麻子さんがけん玉を構えている途中で次のゲストに移ったよ……
!?
でも、その最後のゲストがテレビに映ると僕は驚くと同時に胸がドクンと高鳴った。
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