第199話
【199話の登場人物(名前だけを含む)】
○剛田武人(主人公)
高校2年生の16歳
武装女子ボーカル(タケト)
保護官1人
妻5人、婚約者5人、婚約者仮(仮)2人
子ども1人(花音)
○肥田竹人(タケヒトくん)
高校2年生17歳
タケトの大ファンで髪型や服装を真似る
婚約者(仮)肥田晶の弟
保護官1人
妻4人(堤先生を含む)、子ども3人
○尾根井三蔵(サンちゃん)
高校2年17歳
理由があり女装している
保護官1人
妻?人、子ども?人
○東条麗香(東条先輩)
高校3年生17歳
東条家、現当主の孫
沢風和也の元婚約者
タケトに興味があり転校してきた。
サーヤ(会員)
○海東加恵(海東先輩)
高校3年生17歳
東条麗香のお付き兼護衛
サーヤ(会員)
○横似大(ヒロシくん)
高校1年生16歳
母親が元レディース総長
母親の元チームメンバーと結婚
結婚後茶髪おデブ体型からぽっちゃり体型になっている
保護官1人、妻15人
○芽立泰我(タイガくん)
高校1年生15歳
金髪おデブ体型
保護官1人
妻0人
○春花花子(春花会長)
高校3年生18歳
生徒会長
サーヤ(会員)
○西条葵(アオイさん)
西条グループ役員
一部子会社の社長
大学生、22歳
現当主の長女
タケトの婚約者(仮)
◯西条朱音(アカネ)
西条グループ役員、西条家の次女
大学生(飛び級)15歳
一時期、かなり太っていた
前世の記憶が戻る前からゲーム仲間
タケトがやらかした時に心配して色々と動いていた経緯があり、ゲーム仲間でもあったS級保護官の面堂未留(今は妻)を派遣
タケトの世間体を心配して『ぽっちゃり男子』をプロデュース、他
タケトの婚約者
※コロナに罹ってしまいました(2回目)。皆さまも気をつけてください。
—————————————————
————
——
——おお……
今までもサイコロを操作してなんとなく思っていたことがあった。
それは同じサイコロでも微妙にクセがあること。
パワーだったり、トップスピードに乗るまでの時間だったり、速度を上げ下げした時(緩急時)に生じる機体のブレなんかもそう。
他にもサイコロを細かく左右に動かすフェイントやフットワークに、コーナーリング時のふらつき、飛行やホバーリング時の安定性などにもちょっとした違いがある。
でもこの機体(サイコロ・T試作1号機)はそれがより顕著に感じられる。
やっぱり開発先が違うからだろうね。
規格はサイコロSに合わせてあるらしいから同じはずだけど、いつも操作しているブジン(サイコロS)よりも力強く感じる。
でも、その反面、念力エネルギーの消費が激しいような気がするし、カーブもちょっと外側に流される感がある……
でも、それがすごく楽しい。
「あはは」
この先、こういったサイコロが増えるかも……そんなことを考えるだけで、ワクワクがとまらない。
「サイコーです東条先輩! あ、でも規格はサイコロSと一緒なんですよね」
「え? ぇえ、そ、そうですけど、どうしてそう思ったのかしら?」
ホバーリングさせていたサイコロの出力を上げて飛行させてすぐに、東条先輩の方に顔を向けると東条先輩と目が合ってしまった(VRゴーグルをつけていない)。またじーっと見られていたらしい。
たぶん、俺がサイコロに夢中になり、はしゃぎすぎていたからかも。ちょっと恥ずかしいな……
でも、一つ言い訳をするとすれば……
「よし、行け! 俺のサイコロ!」
「タケヒトちゃん、甘い甘いわよん!」
「ふん。今日初めて動かしたあんたらに負けるわけねぇよ」
「ちょっ、待てって。てかお前ら操作ミスって転べよ」
タケヒトくんやサンちゃん、それに1年生のヒロシくんやタイガくんだって同じようにワイワイはしゃいでいるんだよね。
いつの間に仲良くなったのか。海東先輩にレースの審判を任せて俺以上に4人は盛り上がっているんだ。
「よしっ! 俺の勝ちだ!」
「あたしは2位ね」
「ちっ、もう一回だ」
「だーっ俺がビリかよ〜。くそっ次だ、次こそは」
みんな(男子生徒)、とても楽しそうだ。サイコロは間違いなく男性からも人気が出るだろう。
「タケ……んん、剛田様?」
おっといけない。東条先輩の声にハッとして視線を戻すと、飛行させていたサイコロがバランスを崩してグラついている。
慌てて体勢を整えつつ着地させる。
「すみません。みんなのレースが目に入ったもので」
「ふふふ。そうでしたか。随分と白熱しているようですわね」
「はい……」
俺もちょっと参加してみたい、なんてことを思っていると、東条先輩からちょいちょいと袖を軽く引っぱられた。
「?」
「先ほど何か言いかけていたのは、我が社のサイコロに何か問題があったのではないですか? そうであればすぐにでも改善させたいのですが……」
ちらちらと俺に視線を向けてくる東条先輩。これは試作機だもんね、気になるよね。
「ああ……」
でも、問題なんてない、ただ単に嬉しさのあまりテンションが上がってつい東条先輩に話しかけてしまっただけのことだ。
心配させて申し訳ないと思いつつ、正直に答える。
「その、問題はないです。ただ同じ規格なのに個性というかクセが出ていて楽しくなったというか、うれしくなったというか、すみません。テンションが上がってしまったんです」
そんなことを言葉にしつつ、自分でも少し子どもっぽかったなと反省していると、
「かわぃ……ん、ん、こほん。あ、謝る必要はないですわ。正直な感想はとても貴重ですもの。
よろしければ、参考までにもう少し詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「ええ、そんなことでよければ……」
俺は正直に、専用機(サイコロSブジン)との違いを伝えつつ、その違いが楽しくもあると答える。
「ふふふ。そうでしたか、そのような楽しみ方もあるのですね。
では、もうしばらくお待ちいただければ、今の万能型と違ったタイプのサイコロも開発していますので楽しみにしていてくださいね」
そう言って笑みを浮かべ東条先輩だけど、今のタイプと違うサイコロって何? パワー型やスピード型のサイコロを開発しているってことかな?
——あっ!?
思い出した。そういえば1ヶ月前くらいに、アオイさんもそれっぽい事を言われたような……
でも、今はやることが多いからもう少し先の話になるだろうって……
あの時は、今度の大会に向けて(歌を歌う)早くブジンの操作に慣れるのに必死だったから聞き流してしまった。
たしか、その後アオイさんはリスみたいに頬を膨らませながらも俺の隣にずっと座っていたんだよね……
アカネは気にしなくていいって言っていたけど、もしかしたらあの時から開発は進められていて、もっと興味をもってもらいたかったのかも。
そうだとしたらアオイさんに悪いことしちゃったな。
「そうですわ。タケ……剛田様の専用機を我が社からも贈らせていただいてもよろしいですか? 今使っているモノとは違うタイプですのできっと楽しめると思いますの……!? もちろん皆さまもです」
思い出したように東条先輩がそう言うと、
「え!」
「まあ!」
「マジかっ!?」
「やりっ!」
こちらを見て、俺たちの会話をちょうど聞いていたらしい、タケヒトくんやサンちゃん、ヒロシくんにタイガくんの4人が、三者三様の反応をする。
ガッツポーズだったり身体をくねらせたり、ハイタッチしたり、自分の専用機と聞いて、みんなとても喜んでいる。
タケヒトくんとサンちゃんはよほど嬉しかったのか、サイコロ部に入部すると決めてしまったし、でも俺は……
「その申し出はうれしいのですが……遠慮しておきます」
「ど、どうしてですの?」
俺の言葉に東条先輩が驚き目を見開く。
理由は2つ。自分の専用機がもらえると喜び、テンションの上がった4人は再びサイコロを動かしはじめていたが、そんなみんなから距離をとり東条先輩に理由を話す。
「それは……」
1つは入部する意思があるタケヒトくんやサンちゃんと違って俺は忙しくて入部できないから贈ってもらう理由にならない。
もう1つは東条先輩は沢風くんの婚約者であり、俺は直接、DMだけど、釘を刺されているからトラブルになりそうな事はなるべく避けたいと思った。
そのように伝えると東条先輩がぷるぷると肩を震わせた。
「そ、それはいつの話をしているのかしら? たしかにわたくし東条麗香と沢風和也様は婚約関係にありましたが、すでに婚約はなかったものになっております。
それなのになぜ、今になってそのようなことを、そんなにわたくしのことがお嫌いですか? 気に入りませんか?
たしかに東条家は武装女子の音楽が世間に注目された時に……妨害をしました。
その理由の1つには、他所に取られないための駆け引きも含まれていましたが……いましたが、そう、ですね。
それは剛田様や武装女子の皆さまにとってはチャンスを潰されたも同然、ですわよね。わたくしはなんてことを……今さらこのようなことに気づくなんて……
剛田様、その節は大変ご迷惑をおかけしまして申し訳ございませんでした」
はじめこそ淡々と語っていた東条先輩だったが、途中、何かに気づいてからの口調は弱々しくなり、最後には頭を深く下げて謝られてしまった。
「え、いや……」
かなり驚いた。正直忘れていたくらいなんだけど、たしかにそんな事があった。
でも、そのことがあったから今の形(武装女子会)になり、結果的にはみんなの働き口ができてよかったとも思っている。
ヘタな事務所に所属していればこんな勝手はできていなかったかもしれないし……
というか沢風くんと東条先輩って婚約関係じゃなかったの? 俺の女に手を出すなって何? 誰の事を言っていたんだ? 俺がそんなことを考えていると、
「剛田様、わたくしにできることでしたらなんでもいたします。どうか、もう一度だけチャンスをいただけませんか? お願い致します」
「東条家に仕える者として私からもお願い致します」
再び頭を深く下げた東条先輩の隣には、いつの間にいたのだろう、同じように頭を深く下げている海東先輩が立っていた。
——どうしよう。
さすがに先輩2人に頭を下げさせているこの状態は居心地が悪い。
っていうか、なんで春花会長はにやにやしながら俺の隣に立ってるの、めっ、ってしたら、この世の終わりかと思うような顔をして、春花会長まで頭を下げてしまった。何してるんですか。
「許すも何もとりあえずみなさん頭を上げください。じゃないと俺帰ります」
そう言えば、しぶしぶだけどなんとか頭を上げてくれた3人。
「えっと、当時は色々と考えたりしましたが、今は困っていませんし気にもしていません(忘れていたくらいだし)……と言ってもその顔は納得できていないって顔ですね。
では、みんなにも同じように謝っていただいてもよろしいですか。俺よりみんなの方が落ち込んでいましたから」
「それはもちろん。皆さまにも謝罪いたします」
「そう。じゃあ俺はそれでいいかな」
今はうまくいっている。ここで無茶な要求をして下手に東条家と揉めてもいいことなんてないしな。
「それではわたくしが納得できませんわ。なんでもいいのですよ。お金や仕事なんでも。なんならわたくしとカエが剛田様の妻になり生涯面倒をみるなんてことも……ええ、剛田様の未来を潰そうとしたのですから、それくらいがちょうどいいですわね。カエもそう思いますよね?」
「はい。私もそれがよろしいかと」
「いやいやいや、冷静になろうよ。自己犠牲はダメですって、お2人とも、もっとご自分を大事にしてください」
まだ納得していない彼女たち。ここは、一度、話題を変えて落ち着いてもらった方がいいだろう。
「と、ところで本当に沢風くんとは何もないんですか? あ、これは嫌がらせでもなんでもないですよ、彼から直接、東条先輩は俺の女だってDMが来ていたから……」
「わたくしが彼の女? あり得ませんわ。絶対にあり得ません。たしかに彼はウチの芸能事務所に所属して、深い関係になっている者(ウチの関係者)もかなりいますが、わたくしとは何の関係もありませんわ」
と言いつつも、そのDMはいつ来たのかと尋ねてきた東条先輩の迫力はすごかった。笑顔だけど目が笑ってないんだ。
——あ、あれは3月の終わりだったはずだ……
素早く、そのDMを探し出して見せるとそこには般若がいたよ。
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