第157話
うーん? ん? んん!? 何度か目を擦って瞬きしてみるが結果は同じ……
みんなのスカートの丈が短くなってる、と思うんだが……
断言できないのは、みんなのスカートの丈の長さなんてまったく覚えていないから。
ほら、モラル的に(前世の記憶の影響)女性のそういうたころはじろじろ見るものじゃないと認識していたので、俺はなるべく相手の顔の辺りを見るようにしていた。
なぜ今になってそんな事を考えているのかというと……
「どうかしたの?」
「いや、なんでもない。それより、みんなの意見が少し聞きたいと思って」
「サイキックスポーツの事だったよね」
そう、俺もイメージボーイになったからには何かできないかと思いったのもあるが、純粋に念力を使って何かをやる事にすごい興味があるからだ。
それでみんなから意見を聞きたくて、武装女子会(会社名)の事務所までやってきていたんだけど、事務所での俺の席は事業が落ち着いてからは3人がけ用のソファーへと移り、やらせてもらえる仕事は無くなっていた。
元々男性が働いている事自体珍しいこの世界だ。事務所にいる時くらいはゆっくりしてほしいとみんなから気遣われた結果こうなった。だから決してハブられているとか、仕事ができなくてお荷物扱いになってるとかじゃないから。
現に、俺の腰掛けているソファーの両隣にはさおりとななこが座って俺の話し相手になってくれている。
ただ今はさおりとななこが座っているというだけで、10分くらいすると交代して別の誰かが座ってくる。俺としては仕事の邪魔をしたくないので一応は断ったけど、仕事に対するモチベーションが違うからとそのままずるずると彼女たちの好きにさせているが……そんな彼女たちのスカートの丈が短く感じていて、確かめたいけど確かめにくいもどかしさ。
普段から見ないようにしていたから記憶が定かではないが、たぶんみんなは膝上10cmくらいだったはずだ。それが今は膝上20cmくらいにはなっているような……
事務所内を歩いているみんなをちらちらと見ては、そんなことを考えている俺だけど、両隣に座るさおりとななこはもっとまずい。
座っていると余計に短く感じてしまうから、目のやり場に困るというか、意識しないようにしても気になってついちらちら見てしまう。
俺の知らないところで、クラス女子のスカートの丈が毎日1cmずつ短くなっており今日でちょうど10日目だった。
隣のななこがなぜかドヤ顔で親指を立ててるけど、何かいいことでもあったのかな?
『あった。やっぱり間違いなかった』
そう? ってまた漏れていたのか。じゃあ、あれ? スカート丈のことも漏れてた感じ?
『大丈夫』
そっか、ななこにはダダ漏れだったか。あ、ミルさんもか。でもいつもと態度の変わらない2人に感謝しつつも、とりあえず謝っておこうと思ったが、ちょっとストップ。ななこにはバレてる。ならば確認してみてもいいかも。
『ねえななこ。ちょっと変なこと聞くけど、ななこのスカートの丈って、短くなった?』
『どこか変?』
『変じゃないけど……』
不思議そうにしてるってことは俺の勘違い? 勘違いなのか。でもどうしてこんなに気になるのだろう……
『なんかごめん。変なこと考えて。よくよく考えたらみんながわざわざ短くする必要なんてないし、俺の勘違いかも。ということで、このことはみんなには内緒でお願……ってななこはなんで目を逸らす。え、ミルさんまで』
『気のせい』
『気のせいかと』
まあいいや。それはそうと、こうして仕事をせずにこっそりとリラクゼーションやヒーリングを使いつつ、みんなと会話ができるのも、就職予定でまだ就職先が決まっていなかった3年生の先輩たち(10人)が入社してくれたからだ。
それでも部活をやっていないクラスの子の負担はかなりのものだろうからリラクゼーションとヒーリングはかかさずしている。
でも秋内さんはすごいね。会社設立して1ヶ月そこらでよく形にしたよ。グッズ販売がかなり好調だから余計に思う。
本来ならもっと人員が必要になるところだけど、秋内さんが製造元(外注先)から直接お客様に送付してもらうよう交渉してくれていたから経費は増えたが送付作業や在庫管理の必要ないんだ。だからこの人数で回せている。
「タケトくん? ぼーっとしてるけど大丈夫?」
会話に入っていないさおりが俺の顔を覗き込んでくる。実際はななことテレパスしてたんだけどさおりは使えないから不思議そうにしている。
「あ、ごめん。ちょっと考え事してた」
話がそれてしまったが、昨日の帰り際、協会長さんに不思議に思っていたことを尋ねてみたんだ。競技人口を保ちたいというのならば、なぜ若者受けしそうなサイキックスポーツを新たに作らないのかと……
でもすぐに察してしまった。国が許可してくれなければ作れない、と答える会長さんの少し残念そうな顔を見て。俺でも簡単に思いつくことなんて誰でも考えていたってことだ。
ちなみに念力を使用しない競技(スポーツ)にはそんな許可なんていらないから、ちょっと調べてみただけでも、アウトドアスポーツ、アニマルスポーツ、格闘技、武術、アクションスポーツ、自転車競技、射的競技、水上競技、スキー競技、スケート競技、ソリ競技、 体操、団体競技、パワースポーツ、マインドスポーツ、モータースポーツ、ラケット競技、陸上競技など100種以上あった。
前世ではもっとあった気がしたけどこの世界の競技者は女性だけだからかな?
それに対して、サイキックスポーツは昔から変わらずたったの3種しかない。
最近では地方自治体なんかが高齢者向けの健康スポーツなんかにも力を入れていたり、町おこしの一環で楽しむための簡単なスポーツなんかのアイデアを募っている地域だってあるようだから、この差はどんどん離れていくだろう。
だから、今のサイキックスポーツの人気がでるように頑張りつつも、みんなで盛り上がれる新しいサイキックスポーツが作れたらいいなって思っちゃたんだよね。
ちなみに香織やネネさんにも今のサイキックスポーツについてどう思っているのかを尋ねてみたら、自分でやる分には念力の鍛錬にもなっていいだろうけど、観戦するにはちょっと退屈だと言い、思い出したように、香織たちの子どもの頃は普通にテレビ中継されていたが、面白くなくてすぐにチャンネルを変えていたのだとか。
大人になった今でも退屈だと思うのなら、子どもだと余計にそう感じるか。
最近姉妹仲良くログインしてくる葵さんとアカネにももちろん聞こうと思ったけど、今日放送された『ぽっちゃり男子』の話題で盛り上がり聞き忘れてしまった。また今度だな。
「実は、もうすぐ新曲が出来そうだからあまり無理してほしくないけど……ほら、武装女子チャンネルの登録者ずっと増えてるし、新曲を楽しみにしているって声も多いから」
そうなんだよな。今はコラボした動画なんかをアップして繋いでいる状態だもんな。
「サイキックスポーツか……」
それでも付き合いのいいさおりは腕を組み頭を捻りつつ悩み始める。なんだかんだで新しいサイキックスポーツの事を考えてくれているらしい。
「ポスターの撮影や番組収録なんかのスケジュール調整は中山さんがやってくれてるから、新曲ができたらそれも含めてうまく調整してもらうよ」
それから3人でしばらく考えたが、思いつくのは今ある競技で念力が使用できたらどんな感じになるのか。そんなことを考えていたらそろそろ時間。さおりとななこか席を立ち、
「ごめん、もう思いつかない」
「私も」
「いいよいいよ。付き合ってくれてありがとう」
「何の話し?」
「聞きたい」
代わりにさちことつくねが隣に座る。やはりスカートが短く感じるが気のせいだろうから気にせず簡単にサイキックスポーツの事を話し気づけばスマホをいじってヒントを探していた俺とさちことつくね。
「あれ?」
「あ」
「ん?」
ほとんど同時だった。トップニュースで沢風くんが法務局で大暴れという記事を見つけたのは……
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