第129話 (沢風和也視点)
すぐに到着したが、なぜか会場入口で10分ほど止められた。変装がどうのこうの……何言ってんだお前ら、さっさとしろ、僕を待たせるな。
結局は必要ないと判断されて普通に入れたのだが、すぐに僕を足止めした理由が分かった。
「ぷっ。なんだ、なんだ、男どもってこいつら? ブタばっか。これなら僕の一人勝ち確定じゃん」
そう僕が1人だけモテてもまずいとでも思ったのだろう。円卓に座っている男どもだが、丸々と太ったブタしかいなかったのだ。
しかも上下スウェットとか、お宅たちオタク? ぷくく。スーツ着てるヤツなんていないぞ。うはっ、もっと凄えヤツ発見、あれって寝間着だろ。しかも髭くらい剃れよ。超ウケるんですけど。
「沢風様、そのような事口にするものでは」
「ふん。僕はホントのことを言ったまでだ。まあいいどうせこの会場の女どもは僕の虜になるんだ」
いつものように、サクっと念力を使ってさらに僕の魅力をアップする。スーッと念力が抜けていく感覚。これでよし。
それから案内人の案内で僕は自分の席に向かったのだが、
「ねぇねぇあの人、沢風和也?」
「まさか、彼はもっとスリムだから似てる人じゃない。あの人、頬とお腹が少しぽっちゃりだし、それに本人は……」
「あ、そうだったね。変装してるんだよね」
「だね。剛田武人くんも変装してるらしいよ」
「騒ぎになっちゃうからかな」
「たぶん」
「じゃあ私、沢風くんらしき人がこの会場にいなかったら、彼を狙ってみようかな?」
「そだね、私、彼に質問してみようかな」
遠くて会話は聞こえないがかなり注目されてるっぽい。ま、僕ほどのイケメンを見れば無理もない話か。
「こちらになります」
「ああ」
すでにお見合いパーティーは始まっていて、今は一問一答形式でトークを楽しんでいるところらしいが、
あれはっ!?
ラッキーだと思った。女優の桜井さくら(さくらいさくら)がいる。その隣には同じく女優の相田あい(あいだあい)までも。
彼女たちとは一度ドラマで共演している。その時、お茶に誘ったが、女優業に専念したいと断られたのだ。
でも今はお見合いパーティーの場。つまり、女優業に満足したから結婚したいという考えに至っていることになる。これはもう僕の嫁で決まりだな。
「さくらさ……」
「お名前、澤加勢カス矢(さわかせかすや)さんと言うんですね」
ちっ、男性は自分の席から動けない決まりだから、ここから声をかけようと思ったが女どもがいつの間にか列をなしている。
「そうだ。沢風和也だ。それが何か?」
「やっぱり。口調が荒いし本物の沢風くんじゃなかったのね。残念」
そう言うと女はすぐに席を離れた。一問一答形式だからだとすぐに理解したが、
はあ?
先ほどの女は何を言っている。お前の目は腐ってるんじゃないのか? と思っていれば、
「こんにちは。ホント沢風様にすごく似てますね。それに名前も澤加勢だなんて。それで本名はなんと言うんですか?」
「はあ? 沢風に決まってるだろ」
「すごいそれ(澤加勢)本名なんだ、ありがとう」
「くだらん質問はやめろよな」
「はーい」
次の女もそんなくだらない質問をして席を離れた。
それからも同じようなくだらない質問が多く、辟易していたところで、女優の桜井さくらと相田あいが席を立とうとしているのが目に入った。
「おい待てっ」
僕はそう叫んで立ち上がる。すると女優の桜井さくらと相田あいがコチラに顔を向けてきたかと思えば、
「「えっ」」
驚いた顔をして、
「僕だよ、僕。沢風和……って、はあ!? なぜ逃げる!」
2人が背中を向けて早足で逃げていく。
「待てこらっ! 逃げるな! ってかブタ、邪魔だどけ!」
追いかける途中にテーブルやらスタッフやら、ブタどもにぶつかり彼女たちに追いつけない。
「痛っ! 何すんだこら。ってか、ブタって誰よ。お前も似たようなもんだろが!」
ぶつかってブタが立ち上がり僕を睨んでくるが、僕より背が低く全然怖くねぇ。
「ちっ、何言ってんだお前。ブタはお前だよお前。ま、ここにいる男どもはみんなブタなんだけどな、ほら、さっさとそこをどけ、このブタ!」
元々プライドの高い男たち。バカにされて腹を立てない男などいない。
しかも、この場は慣れないお見合いパーティーの会場。男性にとってストレスでしかなく我慢して参加していただけにすぐに爆発した。
お見合い会場はめちゃくちゃになりお見合いパーティーは中止に。
当然に、乱闘騒ぎを起こしたこの会場の男性たち(沢風和也含む)には1年間の男性手当て全額カットが言い渡される。
ニュース報道ではねつ造されているところもあったが、そんな男性たちには精子提供のご提案という案内が国から届く。
「くだらんな」
男性手当全額カットの期間は一年。ネッチューバーとして稼いでいる僕には全く関係ない話だった。
僕は知らない、このことで一部の男性からも恨みを買ってしまったということを……
そんな男性は力こそないが、そんな男性の中にもその手当を当てにしていた女性がバックについていたということを……
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