第101話

「う、うーん。朝?」


 いつの間に寝たのだろう。昨日はたしか……テレポートで香織の実家にミルさんと来てからメイドさんに大部屋まで案内された……


 香織から成り行きで忘年会になったって聞いたから顔だけでも出そうと思ったんだよね。いつものお上品な食事会だろうし。

 それで、いざ大部屋の中に入ってみれば香織の親戚の人たちが、お酒を片手に掲げてどんちゃん騒ぎ。顔を赤らめた人が肩を組みアカペラで歌っていたり、着ている服がはだけていても気にせずにおしゃべりに花を咲かせていたり、いつもとのギャップに驚いたけど……


 お酒は楽しむもの。ちょっと出来上がっている人が多すぎるきもするけど、とりあえずは義祖母さん(おばあさん)やお義母さんを見つけたから先に挨拶をしようと部屋の中に足を踏み入れたはいいが……


 俺に気づいた親戚の人たちがわらわら集まってきて、身動きとれなくなって……柔らかい何かに突然押し潰されて……


 うーん、そこから思い出せない。


 とりあえず起きてから考えようか。ん、あれ、身体が重い、っていうかなんか柔らかい……?


「タケトくん、おはよう」


「おはようございますタケト様。タケト様、今はまだ朝の5時ですのでもうしばらくゆっくりされる事をおすすめします」


「香織、おはよう……ミルさんもおは……? え、ミルさん?」


 重いはずだ。香織が俺の左半身に抱きつきミルさんが右半身に抱きついている。


 なぜ? ……と思ったら香織の隣には詩織さん、だけではなく親戚の子たちがすごい格好で寝ている。

 もしやと思い右側の方も確認してみるとミルさんの隣にも、すごい格好で寝ている親戚の子たちがいた。


「ごめんねタケトくん。こんな状態になってて。びっくりしたでしょう。えっと、ウチの親戚はみんなタケトくんが大好きみたいなのよ。

 昨日は特にお酒も入ってて隣で寝るんだって聞かなくて……ミルさんに協力してもらったのよ。

 寝ているタケトくんの隣にこの子たちを寝せたら絶対ナニかするに決まっているからね……ミルさんもごめんね」


 申し訳なさそうに首を振る香織。なるほど周りの子(親戚の子)たちから俺を守ってくれていたのか。


「いえ。元はといえば、タケト様を守ろうとタケト様を強く抱きしめてしまった私が悪いのです。香織奥様の親戚の方々ですので念力を使う訳にもいかず……申し訳ございません」


 ミルさんが俺を……ぁっ! ミルさんからそう言われて鮮明に思い出す。


 勢いよくこちらに集まって来る親戚の子たち。気づいた時には逃げるには遅く、四方から迫られていて、俺はミルさんから強く抱きしめられていた。香織の親戚の人たち迫力があったもんな。そうだ。ミルさんが僕を守ろうとして……


 それが運悪く(運良くともいう)ミルさんの大きなお胸に顔を埋める形になってて……俺はブラックアウト。たぶん、そこで意識を失ったのだろう。


「ミルさんは悪くないです。いつもありがとうございます」


「……」


 ミルさんは何も言わずただ俺の身体をちょっと摘んだけだったが、耳がほんの少し赤くなっていたので照れてるのだろう。言わないけど。


「ところでこの広い部屋は客間なのかな……」


 香織とミルさんが俺に抱きついたまま動かない。というか2人はまだ起きる気がないようだから、ちょっと疑問に思ったことを尋ねてみる。

 実は香織の実家に泊まったのは今回がはじめてで、今日(31日)、明日(元日)と香織の実家でお世話になる予定。


「ここの部屋はね……」


 俺と香織の部屋らしい(ただし今回のような場合、親戚の酔っ払いが暴走、はミルさんも一緒の部屋に泊まる)。

 いつ俺たちが泊まりにきてもいいようにお婆さんが少し広めの部屋を整えてくれたそうだ。


 ちなみに香織が以前使っていた部屋は残っていない。戻るつもりのない香織が必要ないと言ったからだが、その部屋が俺たちの子ども用(女の子用)の部屋へと変わっていることをまだ知らない。


 それからしばらくして、香織の妹、詩織さんたちが目を覚ましたが「あちゃ〜やっちゃった。タケトくん迷惑かけてごめんね。姉さんもごめんね」と礼儀正しく謝罪してから部屋を出ていった。


「昨日は挨拶も出来ずすみません」


「孫婿殿、あまり気にせずともよいからの。ここは孫婿殿の家も同じ。我が家と思って気楽に過ごしてくだされ」


 朝食時、皆で集まり食事を摂った。親戚の人たちも泊まったようだね。だけど、ホントは餅つきで集まったが、その日(30日)の夜は、俺がテレビに映ると知ってそのまま成り行きで忘年会に突入したのだとか。


 今朝は借りてきた猫のように大人しくて少し笑いそうになった。


「そうそう孫婿殿……」


 もくもくも朝食を摂っていると、唐突にそう切り出してきたお婆さん。仕事(イメージソング)の依頼だった。


 俺は作詞作曲ができないので、みんなにその旨をMAINで伝えたらオッケーという絵文字が4つ返ってきた。


 いつものように4人で作って1番よかった曲を使うみたい。


 そうそう、ロゴデザインも完成した。一之宮先輩の仕事は早かった。会社(一之宮先輩の実家)が休みに入っても無理して作業をしてくれたのだと思う。今度お礼をちゃんとしないとな……


 男性のシルエットから影が伸びていて、その影の上に『武装女子』とカッコいい感じのフォントで描かれているロゴデザイン。


(イメージ)


 ♂武装女子

 ‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾


 他にも、


 ♀武装♀♂♀女子♀


 ♂ARM woman


 ♂ぶそうじょし♪


 ♀♀武装⚔女子♀♀


 色々あって迷ったけど多数決で決めた。


 これで同時進行で進めている公式ページが出来上がればグッズの販売も出来そう。

 ホントは手探りではじめたからどうなるかちょっと不安だったけど、休みに入ってからも、みんなとMAINでやり取りして、どんどん形になっていくから今は楽しみでしかない。

 あ、商品の発注なんかもあるけど、そこは秋内さんが任せてくれって言っていたので頼りにしている。

 おっと鮎川店長にも伝えておかないとまたおこられるな。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る