第91話
冬休みに入った翌日から俺はお弁当仲間のみんなと活動し、武装女子の拠点となる事務所を借りた。
その場所はネネさんのスタジオの近くだ。曲の収録にも困らないし学校からも結構近くて便利。
ただ男の俺は不動産契約ができないから契約者を誰にするかで少し悩んだが、みんなは今後進学する可能性が高いことから香織にお願いした。保証人はネネさん。
保証人は保証料を払えば必要なかったけど、その分は事務用品の購入資金に回せばいいからとネネさんが不動産の人と話しをつけたんだ。
2人とも仕事納めの日(28日)で取引先への挨拶回りやら大掃除やらで忙しかったはずなのに……
俺、テレポートが使えてホントよかったよ。テレポートで2人を迎えに行ったことでかなりの時間短縮になったから。
ただミルさんが一時的でも離れることを許可してくれなくてミルさんも一緒にテレポートすることになったけど……
俺を心配してくれてのことだろうし、俺なら3人でもテレポートできると知ってるからそうしたのだろうね。
それに鍛錬してテレポートの熟練度が上がったからだろうけど、最近はこの程度では念力量を消費した感覚があまりないから、もしかしたら念力量も増えているかも。
家賃を滞納して迷惑かけるようなことはしないようにしないとね。
なかなか広くていい感じの事務所。何も入っていなかったのでみんなでわいわい言いながらパソコンや机や椅子などの必要な物をネットで注文した。
「早速みんなに手伝って欲しいことがあります」
そう切り出したのはさおり。
まだ何もないオフィス、俺を含めた21人が絨毯の敷かれた床に座って必要な物を話し合い一通りネット注文し終えたところで、さおりが立ち上がったのだ。
「?」
「何かな?」
・
・
そんなさおりにみんなはお行儀よく姿勢を正して注目している。
でも正直ホッとした。冬休みだからみんなは私服なんだけど、パンツスタイルの子はいない。みんなスカートなんだ。しかも制服の時よりも丈が短い。横座りになっていたみんなの正面に座らないようにかなり気を遣っていたからね。
——ん?
不意にななこと目が合ったかと思えば、
——ぶっ!
スカートをチラッと少し捲り親指を立てた。
どうやら思考が少し漏れていたようだ。というか、ななこさん、それはつい目が行くからやめようね。
「ななこ、つくね、さちこもいいかな……」
さおりがななことつくねとさちこに声をかけると3人も立ち上がったかと思えば自分のスマホに触れある画面を見せる。
「武装女子チャンネルのことなんだけど……」
未だに増え続けている登録者数はついに1000万人を超えていた。以前の俺の登録者数はまだ超えていないけど、この国のネッチューバー登録者ランキングではトップ10に入った。
「へぇ」
「すごい!」
・
・
スマホの画面を見せてもらったみんなはその人数に驚きつつも納得もしていた。
ツブヤイターもそれに近いフォロワー数で確認のできていないDMもたんまりある。
「みんなお願いします」
さおりはその管理を手伝って欲しいとみんなにお願いした後に編集者(制限付き)に任命。
編集者は、 全コンテンツの表示、ライブ配信、コンテンツの作成と編集ができる。権限の管理、コンテンツの削除はできない。
編集者(制限付き)は、編集者と同じ権限だが、収益データは表示できない。
心よく引き受けてくれたみんなは、すぐにスマホを操作したのだが、
「え、こんなにあるの……」
その莫大な数のDMにみんなの顔が引き攣っていく。
「そ、そうなんだよね。あはは」
さおりとななことつくねとさちこはとりあえず笑って誤魔化していたよ。
俺? 俺は権限がないから何もできない。ごめんね……なんてことを思いつつ心の中で謝っていると、ななこからジト目を向けられた。
手伝いたいんだけどね。ツブヤイターの俺個人アカウントには未だにコラボ依頼が届いてくるからね。基本的に土曜日くらいしかお邪魔できなくなったからコラボ依頼は貯まる一方なんだよね。そろそろ締め切ろうかな……
「あれ? これって……」
黙々と操作しているみんなに向かってリラクセーションとヒーリングを軽くかけていると小宮寺さんが驚いた声を上げた。
「ええ!」
「わぁ!」
小宮寺さんのスマホの画面を覗き込んだ周りにいたみんなも驚きの声を上げる。
「何か変なDMでも来てた?」
さちこもみんなと同じように小宮寺さんのスマホを覗き込むと、
「年末歌番組、歌王夜……出演、オファー!?」
口元を押さえて……固まった。そりゃあそうだよね。テレビを普段見ていない俺でも年末にある歌番組、歌王夜は知っている。かなり有名な歌番組。
「あ」
でもオファー依頼が来た日付を見れば、ハッピーディの次の日だった。
12月30日に生放送みたいだけど、返事の締め切り日はオファー依頼が来た日と同じ26日、すぐに欲しいとの記載がある。
オファー依頼が来た当日に返事がほしいだなんて、相手さん相当時間的余裕がなかったのだろうね。
それでも人気歌手やトップアイドルが出演する番組だ、みんなは出てみたかったのだろう。
俺に確認した後にダメもとだよと言いつつ、出演オッケーと返事をしていた……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます