第40話
「剛田くん、ここに両手を乗せて念力を込めてくれる」
「はい。分かりました」
ノートパソコンより少し大きな検査装置を軽々と抱えてきた能力先生。その装置を床に置いて電源を入れて、5分ほどその装置に触れていれば。セッティング完了の文字が、ようやく準備ができたらしい。
その装置は床に置いててちょっと使い難いけど、すぐに正座をして両手を装置に乗せた。
念力の込め方がよく分からなかったが、検査装置を念動でちょっと浮かせるように念じてみると良いという先生の言葉に、早速念動を試す。
「あ……」
すぐに献血をしている時のような脱力感に襲われる。
「そう、その調子よ。もうちょっとそのままでいてね」
力が抜けていく感覚が不愉快でたまらないが、じっと堪える。
「はい、もういいわよ」
装置の右上にある赤い小さなランプが光ってる。それが測定完了の合図だったのかな。まあいいや。
手を離して画面をじっと眺めていると、
——お?
すぐに文字が表示された。
——————————
念力量 高
念動1
念体1
念出1
特殊
テレポート10
テレパス10
ヒーリング10
リラクセーション10
——————————
一瞬、理解が追いつかず、しばらく惚けてしまったが……
——俺の特殊能力、テレポートのほかに3つもあるよ。テレパスにヒーリングにリラクセーション?
「ちょっと剛田くんすごいよこれ」
「うわ。ちょ、先生びっくりしたじゃないですか」
画面を眺めていたらすぐ後ろから声が聞こえてきて驚き、振り返れば先生の顔がすぐ横にありまた驚く。
先生にジト目を向けてみるが気にしてる様子はない。
「特殊能力が4つってなかなかないことだよ。しかもその能力も重宝されるものが多いね」
テレパス
自分の考えや心情を、口に出さずに相手に伝える事ができる。
ヒーリング
病気や怪我などを癒す。
リラクセーション
心と身体の緊張状態、不安な状態を緩和する。
先生は周りに聞こえないように配慮して小声で話してくれる辺りさすがだと思うけど……先生、突然肩揉まないでくれます。こってるからほぐしたくなった? そんなにこってますかね。
「男性だから特殊能力の数が多いってことはあります?」
男性は念力才能が低いから念力に関心がない。それに知らなくても食べていける。
だから自分の特殊能力の詳細を調べようとするような物好きな男性はほぼいない。
だから、その辺りのことは分からないのと謝ってくる先生。
「そうですか。でも使える能力がハッキリしてスッキリしましたよ」
「そう。それなら良かったわ」
——ん?
二人組みでアップをしていたみんなだが、今度は4人一組になり一つのボールを天井付近まで浮かせている。
「ふふ、あれはね……」
念動の能力が低くても念動を交互に使いあうことで目標物を高く持ち上げたりできる。でもそのタイミングはかなり難しく授業の中で慣らさせているのだとか。
これは社会に出ても役立つ(よく利用される)から必修項目にしているのだとか。へー。
能力もわかったことで、俺もみんなと同じくアップを始めることに。俺のパートナーは先生だ。
「あ、そうそう気持ちいいからってリラクセーションを一人でやり過ぎないように」
そう言った先生がにんまりと笑う。
「? やり過ぎると何かあるんですか」
リラクセーションは精神的に疲れた時に良さそうなので、寝る前なんかに使ったらぐっすり寝そうで楽しみにしてたんだけど、何か致命的な欠点でもあるのかな?
「ほら、あれよ、あれ。男の子がたまった時にするあれ。リラクセーションを過剰に使うと気持ちいいらしいから、やり過ぎるんじゃないかなと思ってね。でも、もったいないじゃない。一人でするなら先生が相手してあげたいな、なんてね。あはは」
真剣に考えていた自分がバカらしくなったよ。なるほど、能力先生は下ネタ好きと。
「はあ、やりませんから。それよりも先生。俺、念動は1mくらいしか動かせませんので、この辺りでいいですか」
スケートボード先輩と一緒に練習してた頃よりも少しは長い距離を動かせるようになったけど、みんなを見た後だと全然だね。
ちなみに念動は、動かす物体の重量によって消費念力が高くなる。俺の場合、こんな練習で使うボール程度じゃほとんど念力は消費しないけど。
「あらあら剛田くんは照れちゃってかわいいわね……? ねえ剛田くん、剛田くんの念動才能は1よね。1だと1mはむり……!?」
「はい、先生。ってどうしたんですか」
ボールを受け取った先生が俺を見て驚いている。才能1の俺が念動で1m動かしたから?
「どういうこと? ねえ剛田くん」
「えっと、念動切れた瞬間にもう一度かけてるからですよ」
「もう一度かけるって普通は1秒から2秒(個人差による)クールタイムがあるはずよ」
先生がボールを俺の方に動かしてくる。そういえばスケートボード先輩もそんなこと言ってた気がするが、でもできるんだからしょうがない。理由なんて分からない。
「そう言われましても……」
もう一度ボールを先生の手元まで動かす。
「不思議、なんでできるのかしら?」
念動では驚いた先生も念体では全然ダメで、笑われたというより、なぜかホッとされた。
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