第11話
俺は今、1番前(教卓の前)の席に座り授業を受けている。言っとくけど俺って高一だけど身長180cm超えているんだよ。後ろの生徒黒板見える?
不本意ながら、こうなったのにも理由があるんだけど、俺の座る席、始めは1番後ろに用意してあったんだよ。
それが一限目の授業が終わり、二限目の初めに俺からの視線が気になって授業に集中できないという女子からの苦情の声が……次の学科の先生から伝えられた。
そりゃ久しぶりに女子に囲まれて浮かれていたと思うし、懐かしくて教室内をきょろきょろと見渡していた自覚はある。
それなのに申し訳なさそうに先生が言うんだ。剛田くん、前の席に移動しようかと。
しぶしぶ前の席に移動したけど先生笑わないで。決していやらしい目でみんなを見ていたわけじゃないんだよ。
今は10月だし秋服だよ。夏服じゃないんだからそこまで警戒しなくても、ただ本当に懐かしかったけなんだよ。
——うう……
横の人もチラチラ、後ろからもバンバン視線を感じる。前見なよ、黒板見ようよ。
——く、俺の方が集中できないって……
朝、担任の新山先生と生徒会の皆さんに案内されて、校長先生をはじめ他の先生方と挨拶していた時に、なんとなく分かったけど、今日学校に登校した男子生徒は俺だけのようで、しかも男子トイレはないから職員用のトイレを使うように言われた。
ちなみに、この学校には一年生15人、二年生17人、三年生16人、合計48人の男子生徒が在籍していて、女子生徒は合計486人在籍している。
先生に頼まれたからってのもあるが、この世界の学校がどんなものか興味もあったから登校してはみたものの、女子30人の中に男子1人という状況は思ってた以上に居心地が悪い。
「ふう」
やっと二限目にが終わった。学科の先生が「慣れるまでは疲れるでしょ」とくすくす笑いながら息抜きが必要なら職員室に来なさいと言ってから教室を出て行った。
実は移動するのも躊躇するんだ。休み時間の度に廊下から、このクラスを中を覗く女子生徒がいっぱいいるんだ。
あからさまではないが、この教室の前を通り過ぎる際に、チラチラとこちらを見てくる。気になるんだろうね。でも多過ぎ、普通に気づくから。
——はぁ。
話す人もいないので次の授業の準備をしてから、教科書でも眺めていようかと思っていると、
「こ、剛田くん。わ、私このクラスで委員長をしてましゅ君島沙織といいます。学校のことで分からないことがあったら遠慮なく尋ねてきて。そ、それで、このクラスには慣れそうですか?」
かなり緊張した様子の君島さんが首から下げている名札を見せつつ声をかけてきた。
——あ、噛んだ、じゃなくて……名札?
噛んだことが恥ずかしかったのだろう。君島さんの綺麗な顔が赤くなっている。
可愛らしかったけど、学級委員長らしいし親切で声をかけてくれたのだろう。敢えてそのことには触れずに視線を名札に向ける。
その名札にはきれいな文字で名前と役職名が書かれていた。
「委員長の君島さんだね。よろしくね。うーん正直まだ分からないかな」
「そ、そうだよね。あ、これはね」
俺の視線に気がついた君島さんの口調は少し早口だった。ちょっと慌てている感じだが、ちゃんと教えてくれる。
どうやら、君島さんが首から下げていた名札は、俺が困らないようにと前日に先生から配られたものらしい。
朝、みんなに挨拶をした時には気づかなかったけど、周りを見渡せばみんな首から名札を下げている。居心地が悪いなんて思っちゃてごめん。
「先生がそんなことまで。君島さんも教えてくれてありがとね。みんなもありがとう。でもみんなの名前はなるべく早く覚えるようにするよ」
「う、うん。すごくいいと思うよ。じ、じゃあ私は」
委員長は顔を真っ赤にしたまま逃げるように離れていった。おかしいな、変なことを言ったつもりはないんだけど。
また一人になったので教科書を開ければ、
「剛田くん。私は副委員長をしている深田夏菜子といいます」
それから、すごく丁寧な言葉遣いの副委員に両隣の子、霧島さんと牧野さんだね。挨拶程度に一言二言話して、気づけばお昼に。
お昼は登校途中のコンビニで買ったパンとお茶。周りで女の子たちがそわそわしていたけど、今までクラスにいなかった男子がいるから食べにくいよね。なんかごめんね。
移動しようとしたけど、廊下がなんかすごいことになってて怖くて出れなかった。
特にこれといった問題もなく、交流もなかったけど、今日の授業を無事に終え、帰りは新山先生と職員室まで行ったあとに、今日一日の感想を伝えてから、職員室からテレポートを使って帰った。もちろん許可をもらってからだけど、先生驚いていたね。ふふ、俺テレポーターなんですよ。
感覚的にテレポートの消費念力は遠い場所でも近い場所でもあまり変わらないような気がした。
あと授業内容だけど、正直ちょっとホッとしている。前の俺はほとんど勉強していなかったけど、前世の記憶が蘇っていたことでどうにかついていけたのだ。
ただ歴史と地理は全然ダメだ。ここは日本だけど前世の日本と違っていて全てが陸続き(一つの島)になっていた。
歴史上の人物も知らない人ばかり。時間がある時に少しずつ勉強するしかない。
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