妹ちゃんは思春期


「よう。ちょっと邪魔するぜ」


 日曜日のお昼も過ぎた頃、突然八重さんが僕の部屋を訪ねてきた。僕が八重さんの部屋を訪ねることはあっても、引きこもりの八重さんが僕の部屋を訪ねてくるのは初めてのことだった。驚きつつも八重さんを中に迎え入れる。

 部屋の中で例のごとくたむろしていたクズ三人の驚きの視線を平然と浴びつつ、八重さんは彼女たちを順繰りに見回す。


「おやおやまあまあ、綺麗どころを侍らせていいご身分じゃねえかバイト君よお」


 にやにやと嫌らしい笑みを浮かべて八重さんが語りかけてくるがとんでもないことだ。いい身分どころか、パーソナルスペースを浸食されて迷惑しているのである。今日だってせっかくの日曜日なのに何故か居座るこいつらのせいでゆっくりもできていないのだ。


「文句を言いつつ追い出しもしないあたり語るに落ちてると思うがね、私は」


 ちょっと痛いところを突かれて僕が黙っていると、目を輝かせた北条が八重さんに声をかける。


「うそっ、その声って、もしかしてVTuberの喜瀬川吉野さんですか?うわあ、よく配信見てます!あ、あたし北条夏希です!」


「お、嬉しいねえ。そいつはどーもありがとな。あ、一応何があるかわかんねえし、リアルでは中身の名前で呼んでくれよ、夏希ちゃん」


「は、はい!うわ、なんて呼べばいいんだろ?」


 普段はフランクなくせに妙にミーハーなところにある北条が地味にテンパったので横から東雲がフォローを入れる。


「私は東雲です。それなら八重さんでいいですか?牛嶋さんだと七野ちゃんと被るでしょうし」


「それでかまわねえよ。……んで、残ったそっちの子が『バイトちゃん』ってことでいいのかい?」


「ええ、西園寺です。先日はどうも」


 何故か不敵な笑みを浮かべる八重さんの視線を受けてにこり、というかニヤリと笑う西園寺。


「いやあ、あれは不意を打たれたぜ。まさかバイト君がああ言う手を使えるとは思わなかったからなあ。まあ、バイト君が大学入学前から遊んでた私から見てもあのものまねは中々上手かったよ」


「そうおっしゃっていただけるのは光栄ですね。ボクも彼とは何度も飲み明かしていますから、ちょっとは自信がありましたので」


 ふふふふ、と笑みを浮かべて語り合うふたり。何気にひとみしりしいな西園寺も年上の八重さんとは上手くやっていけそうな様子だ。

 ……ところで、八重さんがわざわざ部屋を出てくるなんて珍しい。

 というか、ゲーム外で顔を合わせることが滅多にないのだけれど。

 僕の問いに、西園寺と笑顔で見合っていた八重さんが思い出したように頷く。


「ああ、そうだった。お前にちょっと急ぎで聞きたいことがあってな」


 八重さんの言葉に僕は首を傾げる。ちょっとしたことなら、SNSで連絡してくれればすぐに返事はできると思うのだが、そんなに大事な話なのだろうか。


「まあある意味大事ではあるな……」


 そう言うと、八重さんは僕に手でミニテーブルの前に座るように示し、自分はその目の前でさっさとあぐらをかく。

 ……一応、この部屋の家主は僕なはずなのだけれど。それで反発するようなことでもないので、おとなしくテーブルの前に座る。


「それじゃあバイト君。昨日あったことを全部話しな」


 テーブルに手を組み、そこにあごをのせてじっと僕を見ながら八重さんは言葉を放った。

 昨日――要は土曜日であるが、全部というのは……?


「それぐらい察しろよ。昨日お前がやってた婆ちゃんからの依頼についてだ」


 いやまあ、それは理解できるのだが、なんでそれを話す必要があるのかがよくわからない。それを言葉にしようとして、八重さんの目がすっと細まったことを見てとった僕は、素直に話し始めることにした。



   *



 昨日僕は、九子ひさこさんからの依頼で牛嶋家の掃除を手伝っていた。先日の二十四時間耐久FPSで家賃減額分は稼いでいるため今月は依頼を受ける必要がないのだが、諭吉先生が支給されるということなので受け入れた次第である。

 牛嶋邸は九子さんと七野ちゃんのふたりで住むには広すぎるぐらいの家であるため、日々の清掃では行き届かない部分がそれなりに出てくる。なので、定期的に気合いの入った掃除をしているらしい。

 今回僕が投入されたのは七野ちゃんの代理だ。八重さんが部屋の様子を見に来た七野ちゃんに珍しく説教されるぐらいに部屋を汚していたらしく、彼女はそちらの掃除に回っている。(このくだりで八重さんは露骨に明後日の方を向いて誤魔化していた)

 移動距離を考慮すれば、僕が八重さんの部屋の掃除に入った方が移動が楽な気もするが、七野ちゃんからとても男性にはお見せできないと断られてしまった。今更八重さんがどんな痴態を晒そうが僕は気にしないし本人も問題にしないと思うのだけれど。

 まあそんな訳で僕は土曜日の朝から牛嶋邸に赴き、清掃活動に励んでいたのだ。


「なんだい、もうへばったのか。若いくせにだらしがないね」


 掃除の途中から明らかに予定していなかったであろう重量物の荷運びをやらされ居間でぶっ倒れている僕を、九子さんは手に持った掃除機で容赦なくドついてくる。

 そうは言うが、ひとりで冷蔵庫やら箪笥やらを動かしたり納戸の荷物を出し入れさせられたこちらの身にもなって欲しい。

 なすすべもなく部屋の隅に転がされながらも抗議する僕に、九子さんは鼻を鳴らしながらも掃除機を引いた。


「まったく仕方ないね。居間の掃除機がけは後にしてやる。後はこっちでやっとくから、しばらくそこで休憩して帰りな」


 そう言って部屋を出て行く九子さんを見送った僕は居間の隅で力なく横たわりながらなんとなしに周囲を見回す。

 牛嶋邸は昔ながらの和風建築で、居間も畳を敷いた和室になっている。中央にはでかいちゃぶ台が鎮座していて、ふたりで使うにはやや大きすぎるようにも見える。おそらく、旦那さんがご存命で、八重さんも同居していた時から使っているものなのだろう。

 その旦那さんの仏壇もこの居間に置かれているのだが、壁際のでかいテレビの隣に置かれているせいで隅に追いやられてる感がある。まあ流石に僕の考えすぎだろう、うん。

 そうやって部屋の観察をしているうちに、ちゃぶ台の下に本が落ちていることに気がついた。こうやって寝転がっていなければ気がつくことはなかっただろう。

 そのまま放置すれば九子さんが掃除機をかける時にぶつけて本を傷つけてしまうかもしれない。そう思った僕はずるずると這いずって行き、ちゃぶ台の下から本を救出したのである。

 助け出した本には書店のロゴが入った紙のカバーがついている。サイズは文庫本よりも一回り大きい、いわゆる四六判サイズというやつだ。書籍を購入する際、電子書籍を選択するようになって久しい僕は、講義で使う教科書ではない一般書籍に懐かしさを覚える。

 なんとなしにページを開くと、どうやらマンガ本であるらしい。他人の物を勝手に読むうしろめたさと、居間に置いてあるものだからという言い訳が脳内でせめぎ合うが、うしろめたさなど一瞬で場外に押し出された。

 そのままぺらぺらとページをめくっていく。作風を見るに女性向けの恋愛マンガのようだ。九子さんの趣味とは思いたくないので、おそらく七野ちゃんの物に違いない。

 僕も男であるからして、読む本の傾向は男性向けに偏るのであるが、東雲や西園寺が女性向けの本を時々部屋に持ち込むので読まないわけではない。北条は何故か男性向けの作品しか持ってこないが。

 女性向けの本は男性向けとは違った視点で書かれるので新鮮な気持ちで読めるし、男でも面白く読める物がけっこうあるのだ。

 このマンガはレーベルにしろ作風にしろ、完全女性向けのようであるが目を引くような設定もあって興味深い。時間つぶしにはちょうどよかった。

 その辺にあった座布団を枕にしてごろ寝をしながら惰性でマンガを読み進めていく。あまり他人様の家でやることではないが、いつもお世話になったりお世話したりしている家なのでまあ問題あるまい。九子さんもこんなことで目くじらを立てるようなお人ではないし、遠慮する方が怒るようなタイプだからな、あの人は。

 そうやってしばらくマンガを読んでいると、玄関の引き戸が開く音と共に、よく通る元気な声が響く。


「ただいま~!」


 声の主が立てる足音がどんどん近づいてきて、寝転ぶ僕に影が差すと同時に音がやむ。

 マンガから顔を離して見上げると、声の主である七野ちゃんが僕を見下ろすように立っていた。僕の頭の上で立っているので、七野ちゃんがスカートだったら中身が見えているようなポジションだ。まあ掃除に向かっていた彼女は当然のようにパンツルックだったのだけど。


「バイトさん、お疲れ様です!」


 今日も元気いっぱいな七野ちゃんは溌剌とした声で挨拶してくる。こっちは掃除という名の肉体労働でへばっているのに、同じ労働をしてきたはずの七野ちゃんは疲れた様子も見せない。やはり七野ちゃんは僕が思っている以上に体育会系な質であるらしい。

 お疲れ様。七野ちゃんも汚部屋の片付けは大変だっただろう。


「ええ、ちょっと今回は酷すぎましたね……。まったく、ちょっと目を離しただけでどうやってあれだけ汚くできるのかなお姉ちゃんは」


 そう言ってぷりぷりと怒って見せる七野ちゃんであるが、なんだかんだと汚部屋製造機である姉を見捨てずに片付けるのだから、できた妹である。七野ちゃんに見捨てられてしまったら八重さんは一ヶ月も生存できないだろう。九子さんは当然のように見捨てているし。


「こちらももう終わりですか?」


 部屋の中をぐるりと見回しながら七野ちゃんが聞いてくるので肯定する。

 後は九子さんが掃除機をかけて回るだけだし、ほとんど終わったようなものだろう。今回は九子さんにいいように使われて大変だったのだ。最後の仕上げは任せても罰は当たるまい。

「あはは……。うちも女ばかりですからね。お婆ちゃんもせっかくだから使い倒してやるって朝から張り切ってましたし」


 どうやら今日の重労働は既定事項であったらしい。それを聞いていたら無理矢理でも八重さんの汚部屋掃除に回ったのだが。


「いやあ、それは……。妹としてとても恥ずかしくて見せられませんよ、あんな部屋」


 七野ちゃんは自分のことでもないのに恥ずかしそうに顔を赤らめている。七野ちゃんにここまで言わせるとはどんな惨状だったのだろうか。逆に気になってきたが、既に片付いてしまった今となってはどうにもなるまい。


「ところで、バイトさんはこんなところで何をしていたんですか?」


 見ての通り休憩中である。そういえばその辺にあったマンガを勝手に読んでいる最中だったので、持ち主と思しき七野ちゃんに改めて許可を取ることにする。

 僕が手元のマンガを示して勝手に読んだことを形ばかりにわびる。


「……えっ」


 七野ちゃんもそんなことにそう目くじらを立てるタイプではあるまいと軽く考えていたのだが、そのマンガをひと目見た瞬間七野ちゃんの笑顔がすっと引っ込み、見たことないくらいの真顔になる。

 あまりにも表情の変化が劇的であったので、僕も内心焦ってしまう。

 ……しまった、もしかして他人の手垢が付くのが嫌なぐらい大切なマンガであるとか、楽しみにしていた新刊で誰よりも早く読みたいとか、そういう感じのマンガだったのだろうか。


「……バイトさん。そのマンガ、読んじゃったんですか?」


 あ、ああ。半分ぐらい読んだけど……。

 恐る恐る肯定すると、能面のような顔をしていた七野ちゃんの表情をひきつらせ、顔色が赤くなったり青くなったりと、忙しく変化し始める。


「え、嘘。いや、あのそれは、違くて……。友達に勧められたというか、出来心というか……」


 思考がまとまらないのか、意味のつながらない言葉がぽろぽろとこぼれる。手を胸の前でばたばたと振ったり、そう思うと手を組んでもじもじと動かしたりしている。

 僕が驚いて七野ちゃんを見ていると、彼女はしばらくその奇行を続けた後ぴたっと動作を停止した。

 そして。


「う――」


 う?


「うにゃああああぁぁぁぁぁぁ!!」


 七野ちゃんが突如として奇声を発したかと思うと僕の手からマンガを奪い取り、とんでもない速度で居間を飛び出して廊下の向こうへ走り去っていった。

 ええ……。

 僕が突然の事態に困惑していると、七野ちゃんが走り去った方から九子さんがやって来る。九子さんも孫の奇行を目撃したようで、困惑した表情を浮かべて僕に問いかけてきた。


「……ありゃあいったいなにがあったんだい?」


 ……さあ?

 僕は九子さんの問いに返すべき答えを持ち合わせていなかったので、曖昧な言葉しか出てこなかった。



    *



「……で、お前は何事もなかったかのように帰ったと?」


 僕が話終えると、瞑目しながらそれを聞いていた八重さんが静かに問いかけてくる。その通りであったので、僕は深く考えずに首肯した。

 僕の肯定に八重さんは目を開くと、にこりと微笑みかけてくる。よく分からないままつられて愛想笑いを浮かべる僕。

 瞬間、八重さんはあぐらをかいて座った体勢から、獣のような機敏さでテーブルを飛び越え、僕に飛びかかってきた。


「そこは追いかけろよ! 馬鹿か!」


 僕は八重さんの動きに反応することもできなかった。勢いそのままに僕の首根っこを抑えた八重さんはそのまま首に腕を巻き付けて容赦なく締め上げてくる。

 酸素の供給を絶たれそうになった僕は必死に首と八重さんの腕の間に手をねじ込み、もう片方の手で彼女の腕をタップする。しかし、八重さんは聞き入れてくれる気配はなかった。

 一縷の望みを持って外野の三人――西園寺と北条、東雲に目を向けるが、しらっとした目で僕たちの格闘戦を傍観するばかりだ。


「とりあえず話を聞いただけでも彼の責任は明らかだね」


「いや流石にそれはないだろう、君……」


「マジでないわー」


 なんなら何故か口々に罵倒までしてくる。救いの手を絶たれた僕は自力でこの窮地を逃れるしかないが、優位な体勢を取られているため男女の体格差をもってしても状況を覆すことはできず、しばらく八重さんともみ合い続けた。

 なんとか腕のロックが緩んだ瞬間に脱出することができたが、勢い余ってテーブルに頭をぶつけて悶絶するはめになった。

 酷い話だ。話せっていうからそのまま説明しただけなのにこんな目にあうなんて。

 

「まったく。婆ちゃんから妹ちゃんが部屋から出てこねえなんて連絡があったから何事かと思えば。てめえは本当に神経が無いというか、他人への配慮がないというか……」


 涙目になっている僕を見下ろしながら、八重さんがため息を吐いている。

 妹に自分が汚した部屋を掃除させる姉には言われたくないが、それを告げようと口を開いた瞬間半眼で睨まれてつい口を閉じてしまった。

 ……ん?というか七野ちゃんがなんだって?


「昨日から今までずっと部屋に引きこもってるんだとよ。で、状況的にどう考えてもお前が原因だから話を聞けって指示されて来てみりゃあこのザマだ」


 八重さんの言葉に僕は驚いた。確かに、七野ちゃんも大袈裟なぐらい叫んでいたから何かやってしまったかと思ってはいたが、そこまでの事になっていたとは考えなかった。今度会ったら謝っておこうぐらいのつもりでいたのである。


「あんたねえ……。七野ちゃんはいたいけな女子高生なんだから配慮しなさいよ。あたし達相手にするのとは訳が違うのよ?」

 

「それぐらい無神経なやつだからボクたちも付き合いやすいところはあるんだけどねえ」


 北条にお説教され、西園寺にはフォローなのかけなされているのかよく分からないコメントを頂戴する。僕が悪いようなので反論のしようもない。ただ言い訳をさせてもらえば、マンガをちょっと借りて読んだだけでこれほどの事態になるとは想像もしなかったのだ。


「見られただけで引きこもるなんて相当な気がするけど、どんなマンガだったの?」


 東雲の言葉に、そう言われてもと思いつつ記憶をたどるが、特になんの変哲もない現代恋愛ものだったはずなのだが……。


「ううん、特に変なジャンルじゃなさそうではあるがね……」


「恋愛もの読んでる事を知られるのが恥ずかしかったとか?」


「いや、妹ちゃんはそこまで細い神経してないはずだぜ」


 何気に酷い事を言う八重さんだが、僕としても以前アニメ化したとかでちょっと話題になった恋愛ものの少女マンガとか借りて読んでいたのでそれはないと思われる。


「そっかあ。タイトルはわからないの?」


 表紙はブックカバーしてたのもあって見なかったし、ちょっと見るぐらいのつもりだったからタイトル確認しなかったんだよなあ。メジャーになるような作品じゃ無いと思うけど。


「へえ、そう思うような根拠でもあるのかい」


 まあ、男性同士の恋愛を描いた作品が有名になることもそうそうあるまい。そういうのが認められる世の中になってきたのは確かだろうが、まだまだメディアミックスもしづらいだろうし……。

 と、そこまで語ったところで、全員の表情が渋いものに変わっていることに気がついた。


「……BLかあ」


「妹ちゃんもそういうお年頃かあ……。ていうか、もうこれが答えじゃねえか。早く言えよ」


 なにやら遠い目をしている八重さんの言葉に首を傾げる僕を見て西園寺が呆れたような顔で突っ込んでくる。


「いや、君なんでそんな不思議そうなんだよ……」


 そうは言っても、さっきも話したが今時BLっぽい作品なんて普通に世に出回っているだろう。確かにちょっと濡れ場?みたいなシーンも描いてたりする作品ではあったけれど。


「逆になんでそれが問題ないと思ってるのかしらねこいつは……」


 『じょひます』が世間に許されるならこの程度の作品、全く問題ないと思うが。ていうかお前達も時々そういうマンガとか小説をうちに持ってくるじゃないか。

 僕の意見に北条や西園寺が目を泳がせる。


「い、いやまあ、『じょひます』は……。一応男性向けだから……。女性側が勝手に別の読み方をしてるだけだから……」


「ううん、色々と持ち込むためにハードルを少しずつ下げてたつもりだったが……。思った以上に順応が早すぎたか……」


「……とにかく、年上の異性にそういう本を見られたらそうもなるよ。君だって年上の女性にちょっとエッチな本とか見られたら嫌でしょ?七野ちゃんからすればそれぐらい恥ずかしかったってことじゃないかな」


 なるほど。

 大学生となった今でこそこのザマであるからして耐性があるが、自分が中学高校の時代にそんなものを異性に見られたら死にたくなっているかもしれない。


「しかし、そうすると妹ちゃんのダメージも相当だなあ。なにしろこいつは妹ちゃんにとって『憧れのお兄さん』だし」


 東雲の発言になんとなく納得する僕の横で八重さんが頭をかきながらぼやいた。なんだか僕ににつかわしくないワードが出たことに、僕より先に西園寺が反応する。


「憧れ?彼にですか?そんなに七野ちゃんの好感度を稼げるような男ではないと思いますが……」


「いや、あんたはそこ頷くとこじゃなくない……?」


 そうは言っても西園寺の言葉は的を射ている。確かに冷たくあたったつもりも無いが、特に好い印象を持たせるようなこともしていないのは間違いないのだから。


「そりゃあお前、出会い方からして好感度稼ぎまくりだったじゃねえか。私は妹ちゃんから聞いただけなんだけどよ。お前のこと滅茶苦茶持ち上げてたぜ」


 出会いっていうと、僕が受験のためにこのあたりに来た時のことだろう。そんなに劇的な話でもないような……?


「何かあったの?」


 ああ。大学受験の帰りに道で九子さんがぶっ倒れてて、七野ちゃんが大慌てしてたからちょっと手助けしただけだよ。


「いや、だけって大分大事な気がするんだけど……。九子さん大丈夫だったの?」


「そこまで大した話じゃなかったよ。それに、こいつがすぐ救急車を呼んでくれたから後遺症もなく今じゃあの通りぴんぴんしてる」


 そういうことだ。それで、いざうちの大学に受かって部屋を探してるときに偶然九子さんや七野ちゃんと再会したのである。


「ああ、この前言ってた伝手っていうのはそういうことか。いやあ、本当にそんな物語になりそうなことやってたんだね」


 僕の説明に、東雲が得心したように頷く。そこまでで説明は十分なのに、八重さんがにやにやしながら余計なことを補足してくる。


「こいつはこうやってあっさりした説明してるけどな。妹ちゃんから聞いた話はそりゃあもう劇的だったぜ。急に婆ちゃんが倒れて頭が真っ白になってるときに、年上の男の人が颯爽と現れて助けてくれたって。救急車を待つ間もずっと笑顔で語りかけて落ち着かせてくれてたとか言ってたなあ。その後それっきりだと思ってた相手が偶然部屋探しに来て再会するんだから、そん時の妹ちゃんの興奮っぷりといったら」


「そうなると、『憧れのお兄さん』というより、『憧れの王子様』って感じですね。あんたも中々やるじゃない」


「いやあ、こんな仏頂面のどこがいいのかと思ったけど、考えてみると君も七野ちゃん相手には対応が柔らかかったねえ。少女マンガの題材にできそうなシチュエーションじゃないか」


 北条や西園寺がからかってくるが、八重さんの話は誇張が入っているし、七野ちゃんへの対応が柔らかいんじゃなくて、お前達への対応を雑にしているだけだと主張したい。


「けど、そんな相手にBLマンガを見つかったとなったら確かにショックかもしれないね」


「そうなんだよなあ。純真というか、思い立ったら一直線な妹ちゃんのことだから、このまま放置してたら学校にも行かずにひきこもりかねないぜ」


 正直そこまで引きずる話であるかどうかは疑問であるが、僕の不用意な行動で七野ちゃんを傷つけてしまったのは事実だろう。それは本意ではない。……九子さんからしばかれたくもないし。


「けど、実際どうするんだい?ただ謝って解決するような話でもない気がするのだけど」


 やっぱりそれだけじゃ駄目だろうか?


「下手なことすると逆効果になりそうな気はするよね。ことは慎重に進めないと」


「そうは言っても、こんな展開そうそうないだろうし、どうすればいいかしらねえ……」


 西園寺がはい、と挙手したので促すと、にこやかに提案し始める。


「やはり目には目を、辱めには辱めをということで、自分の性癖をさらけ出すのはどうだろうか。おすすめのエロ本を七野ちゃんに献上するんだ」


 却下。


「何故だ!?これだけお互いの恥ずかしい部分をさらけ出すのだから、仲直りもできるし仲も深まるしいいことずくめじゃないか!」


「いやあ、上手くいけばいいけど、普通に考えたらセクハラだからね。年下の女の子にそれはまずいんじゃないかな」


 本気でアホなことを主張する西園寺に、比較的良識派の東雲がまっとうな意見で否定する。東雲も普段の行動が僕に対してセクハラになっている部分があることはこの際置いておこう。

 今度は北条が自信ありげに手を挙げる。


「謝罪の気持ちといったらやっぱりお金よ。慰謝料として諭吉先生を数枚提供すれば万事上手く収まるわ」


 いや、さすがにお前それは……。


「私としても妹ちゃんにそんな大人の汚いやり口を見せたくないんだが……」


 僕と八重さんの言葉に、そっかあ、と残念そうに手を下ろす北条。ちょっとこいつの将来が心配になってきたな……。


「もう誠意を示すだけなら指輪でも買って持って行って責任は俺が取る!でいいんじゃねえの?たぶん丸く収まる気がするぜ」


 めんどくさくなったのか八重さんが投げやりなことを言い始めるが、当然そんなことでは収まるものも収まらないので却下である。

 ……仕方ない。ろくな意見もでないし正攻法でいこう。


「正攻法ってどうするの?」


 むろん、正面切って向かっていって謝り倒すのだ。とにかく謝罪力で押しきるしかない。


「いや、謝罪力ってなんだよ……」


「まあ、言い方はともかくそれが一番いいかもね。下手なことするよりは素直に謝った方がいい結果になると思うよ」


 東雲先生のお墨付きも出たのでこの案でいくことにする。善は急げと七野ちゃんの元へ向かうべく立ち上がった僕に、八重さんが胡乱げな目を向けてくる。


「結局それしかねえんだろうが、本当に大丈夫なのかよ?失敗して妹ちゃんを傷つけたら酷いぜ?」


 八重さんなら失敗したら本気で酷いことをしてくるだろうが問題ない。

 任せて欲しい。こう見えて人に謝るのとかは得意分野なのだ。


「謝り上手を誇る人間、ボクは初めて見たよ……」


「あたし、逆に不安になってきたんだけど」


「まあ本人がああまで言うなら大丈夫じゃないかな。たぶん……」



    *



「まったく、めんどうなことをしおってからに……。七野を部屋から引っ張り出せなかったら、本気で責任取らせるからね」


 牛嶋邸を訪問した僕は、九子さんの脅しとも取れる小言を聞きながら七野ちゃんの部屋まで案内されていた。

 というか、僕が七野ちゃんと和解できなかったとしても無理矢理部屋から引っ張り出すでしょうに。


「当たり前だよ。やっと穀潰しがひとり減ったところなのに、また増やしてたまるかい。うちにそんなやつを食わせる余裕はないよ」


 こんな広い邸宅を持っていてアパートの大家をやってる牛嶋家で余裕がないなら、大体の家庭は相当な貧困生活を送っていることになると思うのだが、九子さんがこわ、もとい賢明な僕は口に出すことをしなかった。


「ほら、この先の扉が七野の部屋だ。あたしはしばらく買い物にでるから、押し倒すなりなんなりして上手いことやりな」


 そんなことはしない。と僕が発言する前に九子さんはさっさといってしまった。すぐに玄関を開け閉めする音が聞こえてきたので、本当に出て行ってしまったらしい。信頼してくれるのはありがたいが孫娘のことはもっと大事にして欲しいものだ。

 ……さて。

 僕は七野ちゃんの部屋の前に立つとゆっくりと深呼吸をする。部屋では謝るのが得意と大見得切ってきたが、今回はちょっと自信がない。

 人に怒られるときというのは必ず原因があるもので、どうして怒られているかを客観的に分析することは容易いが、女の子の気持ちを分析するのは僕にはとても難しい。いっそ人のものを勝手に見るな!と怒ってくれている方が話は簡単だった。

 だから僕にできることは愚直に謝ることだけなのだが、それが通じるかどうか……。

 僕は覚悟を決めると扉をノックする。しばらく待っても反応が無かったので、もう一度ノックしようか出直そうかと考え始めたとき、部屋の中から小さな声が聞こえた。


「……お婆ちゃん?」


 そうだよお婆ちゃんだよ。早くこの扉を開けておくれ。


「いや、お婆ちゃんならそんなこと言わずに勝手に入って……って、バイトさん!?」


 つい流れでボケてしまったが、七野ちゃんのノリがよくて助かった。

 できれば話をしたいのだけれど、部屋に入れてもらえるだろうか。


「ええ!?い、いやちょっと今は不味いですっ!」


 可能性として考慮はしていたが、入室は拒絶された。まあ、これに関してはしかたあるまい。昨日あんなことがあったばかりで顔も会わせづらいだろうし、そもそも冷静に考えれば年頃の女の子的には異性を部屋に入れることもはばかられるだろう。

 それならこのままでいいから話だけでも聞いてもらえないだろうか。


「そ、それはそれで申し訳なさが……。わかりました、入ってください」


 目上の人間を部屋の前に立たせるのが忍びなかったのか、渋々といった様子で入室を許可してくれる七野ちゃん。

 申し訳なさは感じるが、誠意を示すには対面している方が都合がよかろう。お言葉に甘えて部屋に入ることにする。

 部屋の中はピンク色の小物やぬいぐるみがそこらに置かれた、いかにも女の子らしい装いであった。ただ、部屋の隅に立てかけられた竹刀だけが異彩を放っているのだが、これは見なかったことにする。

 しかし、部屋の中をぐるりと見回しても七野ちゃんの姿が見当たらず、一瞬疑問を覚えたが、それはベッドの上にこんもりした布団を発見したことで即座に氷解した。

 この熱い中、何故そんなことをと不思議に思いつつ部屋の中に進み入ると、七野ちゃんから制止された。


「そ、それ以上近づかないでください!」


 僕は素直に従ってその場で立ち止まる。どうやってこちらの様子を把握しているのかと思ったら、布団をちょっと持ち上げて隙間を空けているらしい。器用なことである。


「すみません。お恥ずかしい話なんですが、昨日からお風呂にも入ってなくて……。汗臭いと思いますので……」


 特に汗臭さも感じないし、なんなら甘い香りがするぐらいなのだがセクハラになりそうなので言わないでおく。

 ちなみに一応女性分類の八重さんの部屋はいつも汚染されているのでこういった匂いはあまり感じない。逆に最近我が家のベッドからこういった匂いがするようになってきてちょっとびびっている。

 ……あまりこういった話をするのはよそう。

 余計なことを考える前に早く要件を済ませるべきだろうと判断した僕は、男らしく床に膝をつくと深々と頭を下げて謝罪の言葉を口にした。ジャパニーズ土下座スタイルというやつである。


「ええええ!?な、なんで急に土下座なんですか!?」


 布団の山からは七野ちゃんの慌てた声が聞こえてくる。

 無論、勝手に他人様のマンガを読んでしまったうえ、七野ちゃんを傷つけてしまったからだ。大変申し訳ない。

 原因がこれ、というものを絞れなかったのでそれっぽい理由を並べたてる。


「いえいえいえ!そんな謝っていただくようなことは何も!ただ、私が自分の不注意で恥ずかしいものをみられてしまっただけで……」


 途中で記憶が蘇ってきたのか、言葉がどんどん尻すぼみになっていく七野ちゃん。やはり原因は羞恥心であるらしい。


「あのっ、そういう訳なので、バイトさんのせいではないですから顔を上げてください!」


 しかし、結果七野ちゃんがこうして引きこもってしまっている以上僕としても責任を取る必要が。


「責任を取る……?それって、もしかして……?」


 ああ、責任を取って腹を切らなければ九子さんや八重さんに死ぬよりも恐ろしい目に遭わされるだろう。


「あ、そういう……。って、それは不味いですって!ちゃんと部屋からは出ますから!大丈夫ですから!」


 よかった。これで僕の生命も救われるよ。


「あはは。……けど、良かったです。私、あんなの見られてもしかしたらバイトさんに嫌われたかもって思っていたので」


 嫌われるは大袈裟すぎると思うのだけれど……。別にこの程度で七野ちゃんを嫌うことも見方を変えることもないのだから。

 どちらにしろ今回の件、非は僕にあると思う。つぐないはするから謝罪は受け入れて欲しい。

 僕の言葉に、七野ちゃんは安心したように息を吐いた。


「……わかりました。それで話が収まるなら謝罪は受け入れますので。けど、つぐないって?」


 僕にできることならなんでもしよう。後遺症が残りそうなことと、警察のご厄介になりそうなこと以外ならなんでも言って欲しい。……あ、懐事情も厳しいので申し訳ないが金銭的なことは要相談で。


「それ以外なら何でも……。それなら……、ううんでも……」


 僕にできることならとは言いつつも大したことはできないと思うが、七野ちゃんは真剣に悩んでいる様子だった。しばらく布団の中でうんうんと唸ってもぞもぞしている。

 本当になんでもいいんだよ?と、遠慮でもしているのか中々案が出てこないらしい七野ちゃんに向けて表情を柔らかくしてみせる。それを見て、七野ちゃんの声と布団の動きがぴたりと止まった。


「それです」


 ……それ?

 どれのことかさっぱりわからない僕が首を傾げると、七野ちゃんがちょっと強い感じに声を上げる。


「その、意図的に作った感じの微笑みです!なんていうかこう、わざとらしくて距離を感じます!」


 ええ……。

 僕は急に笑顔を駄目だしされて困惑する。いやまあ、意図的な表情であることは間違いないが、距離を作った覚えはないのだが……。


「だって、西園寺さん達とか、お姉ちゃん相手だったら絶対そんな顔しないじゃないですか!もっとこう、早く決めろよカス、みたいな冷たい感じの顔をするはずです!」


 そう指摘されて、とりあえず八重さんあたりに同じようなことを言ったときの対応を想像する。どういった理由で貸しを作らされるかは分からないが、あのクズな引きこもりゲーマーは僕にどんなことをさせようかにやけ面で考えながら焦らしてくるに違いない。

 そうなれば確かにそんな表情、リアクションをするかもしれない。

 ……え?そうすると、七野ちゃんもそういう対応をされたいということだろうか?なんていうかそれは性癖が特殊すぎるのでは……。


「そ、そうだけどそうじゃないんです!なんていうかこう、お姉ちゃん達には遠慮がないのに私にはちょっと距離があるというか、もうちょっとバイトさんと仲良くなりたいというか……」


 もにょもにょとして要領を得ない七野ちゃんの説明であったが、とりあえず言いたいことはわかった。

 雑に扱え、というよりは遠慮をするなということなのだろう。

 僕が七野ちゃんに遠慮してるというよりは、奴らがクズであるが故の対応なのでどこまで差異が出せるかはわからないのだが、努力はしよう。


「あ、ありがとうございます!そうしたら、今まで私に遠慮してたことがあれば何でも言ってくださいね!」


 僕は弾んだ声を上げる七野ちゃんにほっとした。とりあえず吊し上げられる未来は回避できたらしい。

 ……しかし、何でも言ってと言われてもなあ。

 今ここで急に言われても特に思いつかないのだが、布団越しでも分かる何やら気合の入った七野ちゃんを残念がらせる訳にはいくまい。

 しばらく考えた後、何とか捻り出した内容を七野ちゃんに提出する。

 それなら、とりあえず布団から出てきて欲しいかな。


「えっ!?」


 ううん、やはり反応はよろしくないか。現状でできる改善というとこれぐらいしか思いつかないのだが。僕としては見た目がどうとかは部屋に居座るやつらのお陰であまり気にならないし。

 七野ちゃんはしばらく躊躇していたが、やがて意を決したように布団から這い出てきた。


「こ、これでいいですか?」


 薄手のパジャマを身に纏った七野ちゃんが恥ずかしそうに顔を赤らめているのを見て、僕はちょっとしたときめきのようなものを感じた。

 なにせ、普段身近にいるやつらが寝るときなんていうのは脱ぐか人の衣服を勝手に借りていくかしかなかったのだ。ちゃんと服を着ているのが新鮮ですらあった。

 なので、思わずまじまじと七野ちゃんを見つめてしまったのだが、彼女が僕の視線から身体を隠すように身をよじらせるのに気がついて、慌ててわずかに視線を逸らす。

 とりあえず無言になるのは気まずいので、パジャマを褒めておくことにする。


「えへへ……。ありがとうございます。ほ、他に何かありませんか!?」


 褒められて照れた様子の七野ちゃんは、照れ隠しなのかさらなる要求をしてくる。既に頑張ってひねり出した後なので、特に何もないのだが……、あ。

 無意識にネタを探して部屋の中を眺めていたら、本棚に並べられた書籍を見て不意にひらめいた。ある意味ちょうどよいかもしれない。

 そしたらお願いがあるんだけれど。


「はいっ。なんでも言ってください!」


 両手の拳を握りしめ、やる気をアピールしてくれる七野ちゃん。そう言ってもらえるならこちらもお願いしやすくて助かる。

 それじゃあ、昨日僕が読んでたマンガの続きを読ませて欲しいんだけど、貸してもらっていいだろうか。


「え”」


 いやあ、話がちょうどいいところでマンガを持ってかれちゃったから、続きが気になっていたのだ。

 流れ的にもう読めないかなと思っていたのだが、遠慮する必要がなくなった今なら本の貸し借り程度問題にもなるまい。

 僕が自らの案を内心賞賛し悦に浸っていると、はたして七野ちゃんは笑顔で了承してくれた。


「わかりました……。遠慮はしないって決めましたもんね……」


 その笑顔はどこかぎこちなく、声は震えているように聞こえなくもなかったがたぶん気のせいであろう。それよりもマンガの続きである。

 僕は読みかけのマンガに加え、七野ちゃんに見繕ってもらったおすすめのBL作品を何冊か借り受けて意気揚々と牛嶋邸を後にした。

 七野ちゃんの件は解決したし、僕が普段なら絶対買わないようなジャンルの本を借りることもできたしで最高の戦果をもって帰宅したのだが、帰りを待ち受けていた面々に報告すると、何故か容赦なくしばかれたのである。

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