第47話 ショーケース!⑤
【速報】ホッシ、海外の人気番組で圧倒的制球力を見せつけてしまう。
1:やきうのお姉さん@名無し
mttps://www.videotube.com/watch?v=PIsqOedERnr7fk&list=PLW9Yr7DDpOwsDewoPKe6VquSftRXGKb&index=25
番組内の会話の抜粋。
司会『やあ少年。いくつかの球団事務と名門大学から、君をぜひこの番組にという推薦が届いた。君って野球が上手なんだね?』
ホッシ『ありがとうございます。ぜひ今日、私の腕前を披露できればと思います。お見せしたいのは"ストラックアウト"という的当てゲームです。今から12球以内の持ち球で、この的当てゲームをクリアしたいと思います』
司会『ん、構えが様になっているね。まるで大リーガーのようだ』
(中略)
司会『グレイト! 素晴らしい! オーバースローだけじゃなくてサイドスローでも成功させてしまった! アメイジングだ!』
ホッシ『ありがとうございます。ですが今度はもっと面白いですよ。今から私はほとんど誰もバットに当てられないような、必殺の魔球で9枚抜きしてみせましょう』
司会『誰もバットに当てられない!? こいつは驚いた! そんな球があるなら誰もが投げたいだろうね』
ホッシ『そう、
司会『山なりのボール?』
ホッシ『見たほうが分かりやすいですね。こんな50マイル(≒80km/h)もないような球ですよ』
司会『……! あはは! これは面白い! これはなかなか見ない珍しい球だ! 本当に山なりだ!』
ホッシ『滅多にないですけど、調子がいいときは30マイル(≒48km/h)ぐらいの速さでホームベースに進みます。そしてストライクを取れるんです』
司会『なるほど! ストライク! 今から取ってくれるのかな?』
ホッシ『ええ。名付けてイーファスピッチ。今からこのイーファスピッチで9枚抜きしてご覧に入れましょう』
2:やきうのお姉さん@名無し
なんじゃこら
3:やきうのお姉さん@名無し
AGTかー
「世界まるっと!テレビ調査部」って番組でちょくちょく取り上げられるやつやね
4:やきうのお姉さん@名無し
すっげー
>Atlas' Got Talentは、参加者があらゆる種類のパフォーマンスで競うことができる、世界最大級のコンテストを開催するというコンセプトで放送されているタレントオーディション番組です。
>年齢や国籍などの参加資格は一切設けられていません。
5:やきうのお姉さん@名無し
ホッシが海外でTVデビューしてて草
6:やきうのお姉さん@名無し
ちゃっかりVideoTubeのチャンネル登録おねだりしてて可愛い
7:やきうのお姉さん@名無し
星上『あまり英会話に自信はありません。ですが筆記であればどんな英語でも読めます。本当ですよ? 古語翻訳もお手の物です。喋れませんけどね』
星上『関係ないですけど、私、視力検査のコツを知っていて、絶対に最高の2.0を出すことができるんです。本当の視力は1.1しかないんですけどね』
星上『イーファスの意味? ありません、格好いいからイーファスと呼んでいます!』
ホッシってジョークも言えるんやな
8:やきうのお姉さん@名無し
ホッシの制球、やっぱ化け物やわ
12球投げてその内9球がストライクゾーンに入るっていうだけでもかなり制球がいい証拠になるのに、大体二枚抜きを連発して7球とかでクリアしている
9:やきうのお姉さん@名無し
星上『身体をどう動かせば投げられたボールがどう動くか、それを数値化して再現しているんです』
星上『こうすると、ボールが思った方向に進まないなと思ったときも、どこがおかしいのか一目瞭然だし、あとはそれを微修正するだけ』
星上『毎日のようにやっていると、球一つ分の範囲で調整することもできますよ』
こいつほんまよう分からん
数値化ってなんやねん
10:やきうのお姉さん@名無し
イーファスピッチえっぐいな
こんな山なりのスローボール見たことない
そして悉くストライクゾーン入るの草
11:やきうのお姉さん@名無し
これは確かにバットに当てられんわ
12:やきうのお姉さん@名無し
>>11
何で?余裕じゃないの?
13:やきうのお姉さん@名無し
高低差大きすぎるしタイミングが全然つかめないし、こんなの無理でしょ
14:やきうのお姉さん@名無し
>>11
わかる、バット合わせるために1打席は捨てないとあかんと思うわ
野球経験者からすると恐怖
15:やきうのお姉さん@名無し
>>12
>>13にも書いてくれてるけど、高低差が大きいな
まず目付の仕方が分からない
スイングの姿勢に入るために、きちんと割れを作って顎を固定してバッターボックスで構えたら、視野って結構制限されるものなのよ
その状態であんなに上に投げられたら、まず視線が上に行ってしまうか、ボールが視界の上に切れてしまう
視線がぶれて上に行ってしまったら、いつもの高さと場所を通過するスイングができないし、上に切れてしまったらボールを見失ってしまう
野球のスイングフォームって結構繊細だから、なるべくスイングフォームを崩さないようにしないといけないんだけど、こんなボールを無理に当てに行こうとおもったら絶対スイングの感覚が馬鹿になると思う
16:やきうのお姉さん@名無し
調子いいときは速さ50km/hって言うけど、これ直進速度が遅いってだけだからな
山なりに上に投げて、ホームベースの上を通過するときは重力で加速するから
普通にホッシの投球時の射出速度に近い速度になるはず
120km/hはあるんじゃないか?
17:やきうのお姉さん@名無し
卓球みたいに手打ちになっていいならまあ打てるんじゃね?
18:やきうのお姉さん@名無し
ここまで遅かったら打つことはできるだろうな
スイングが馬鹿になるっていうのも、あれは速度が似ている他人の球へのスイング感覚が狂うってだけの話だし
ここまで遅かったら、なんぼなんでも別ものだって脳みそも情報を混同しないはず
19:やきうのお姉さん@名無し
言うは易く行うは難し
20:やきうのお姉さん@名無し
バットを短く持てばいいんじゃね?
21:やきうのお姉さん@名無し
制球良過ぎてビビった
イーファスピッチ? とかいうあの魔球もきっちりストライクゾーンに8球入れてるやんけ
2枚抜きも平気でやっとるし
22:やきうのお姉さん@名無し
ホッシSUGEEEEE
23:やきうのお姉さん@名無し
まじで高校野球に戻ってこないのかな……
24:やきうのお姉さん@名無し
こんなに遅くて山なりだったら、審判誰もストライク取ってくれないんじゃないか?
って思ったけど、全部ストライクゾーンに入ってるぞってこの番組で証明したわけね
◇◇◇
(掲示板の人たちで俺の狙いに気付いたやつがいる)
今日も今日とて女子大生たちと練習試合。7イニング制でフェンスまでの距離が短くホームラン乱発になる遊び試合とはいえ、俺はこの試合でも真剣そのものであった。
力を抜きながら投げるようなイメージ。
長いイニングを食べていくような、持久戦の戦い方。
練習中のナックルボール。そしてほぼ形になった超スローボールのイーファスピッチ。
俺の新しい切り札である。
(そうだよ、別に俺はタレントになりたくてあんな番組に出たわけじゃないんだ。あれの真の狙いは、俺のイーファスピッチを世間にアピールするためのものだ)
Atlas' Got Talentは、埋もれた才能を発掘するという制作理念で作られている番組だ。
だから俺のように「才能豊かなのに、社会的にやや不利な男であり、かつ外国から来たマイノリティ」という肩書きが有利に働く。
しかも俺は「学業優秀」かつ「動画投稿の人気者」という、テレビ的にも色々と面白そうな人材に見えるはず。
その上俺は、幼い頃からスキンケアや歯並び矯正などに気を払ってきた。ボイストレーニングも重ねて、格好いい声で喋る練習もしてきた。
見た目も声もいいミステリアスな少年。
余興で、大陸映画の人気男性俳優のモノマネをしたら、Atlas' Got Talentでは大受けだった。とにかく俺は、あの番組で大いに自分をアピールできた。
だが重ねていうが、あれは別に自分のアピールが主目的ではない。
俺のイーファスピッチを世間に見せつけることが主目的なのだ。
(そう、このイーファスピッチをね)
相手打者と目が合う。俺と戦うのにちょっと緊張しているのか、全身の筋肉が強張っていた。好都合である。
あまり力まないようにゆったりと投げる。
言うなればちょっとしたキャッチボール感覚。普通マウンド上でこんな投げ方するやつはいないのだが、ちょっと野球に詳しい人間ならこのボールを知っているかもしれない。
超スローボール。あるいは蝿止まり。
メジャーリーグ流に言うならばイーファスピッチ、あるいはブルーパー・ピッチ。
何と言うことはない。とにかく山なりの軌道で進むすごく遅い球だ。
対戦打者はタイミングとボールの軌道を掴みあぐねて、ポテンポテンのピッチャーゴロにしかできなかった。悠々と1塁送球でアウト。
遅いだけの球。
だというのに、見慣れない速さと軌道というだけでこんなにも強力な武器になる。
(遅いだけだし、バッティングフォームを変えれば当てることはできるだろう。テニスやバトミントンと同じ感覚で当てればいい。問題は、野球はテニスやバトミントンのラケットのようにガットの張力で飛ばないから、腰をもっと入れないと打球に力がなくなって、ゴロやフライで仕留められやすくなるというところ)
タイミングを合わせて全身で打たないと、打球はなかなか長打にならない。
だからスイングスピードを高めるべく、バッティングフォームを固めないといけない。
当然そんなことをすれば、テニスやバトミントンと同じような感覚でボールを打ち返すのは不可能になる。(※テニスやバトミントンも全身の筋肉を使うスポーツだが、野球のように足を止めて本気のスイング、というスポーツではない)
ましてやバットはラケットのように平坦ではないし、当てていいスイートスポットの面積も限られている。
そんな制約があるからこそ、超スローボールはかなり効く。
ガチガチに固めたスイングであればあるほど、俺のイーファスピッチの軌道に合わせられるはずがない。
ボールの通過する軌道をなぞるように狙うなら、スイング軌道は必然とアッパー気味になるし、そうでなくとも「ストレートならこの辺に来たら振る、スライダーならこの辺に来たら振る」という肌感覚で掴んだタイミングが全部通用しないのだ。
(でも打者は振らないといけない。振らないとストライクになってしまうからな)
あの人気番組は、俺のイーファスピッチをあちこちに喧伝してくれた。テレビ番組だけではなく、新聞にも載ったし、切り抜き動画としてVideoTubeでもバカ受けした。
俺のイーファスピッチを、あちこちの場所で取り上げたのだ。
結果どうなったか――星上のイーファスピッチはストライクゾーンにぽんぽん入る、というイメージが世間に出来上がった。
俺の戦略は大成功した。
(ははは! 大人気番組で俺は制球力をアピールできた! こうなりゃ草野球の審判なんかは、俺においそれとボールを宣言できないだろうよ!)
イーファスピッチはボール球になりやすい。
たとえストライクゾーンを通過していたとしても、ワンバンになるような山なりの球なので、審判がボールと宣言しがちなのだ。
だからこそ俺は、先手を打った。
星上のイーファスピッチはストライクゾーンを通過するぞ、と人気番組を使ってアピールしたのだ。
結果、俺の超スローボールは、理不尽にボールを宣告されなくなった。相手打者にとって『待っておけば高い確率でボールカウントになる球』というぬるい球ではなくなった。
となれば必然と、勝負するしかない。
(やっぱりイーファスピッチは大陸国だよな! 大陸国は敗戦処理の時、ピッチャーを温存するために野手登板することがあるってことを知ってたからな! 野手登板の時、このイーファスピッチを投げる人もちらほらいるから、この国では結構イーファスピッチもストライクに取ってくれることが多い! 審判もイーファスピッチをストライク宣言することにそこまで躊躇いはない!)
文化の違いもある。
邦洲国ではこんな球はなかなか見ない。ストライクを宣告してくれる審判も少ないだろう。ワンバンしたからとりあえずボール、という宣告に逃げがちだ。
だが一方で、大陸国はちょっと違う。
邦洲国のプロ野球と比べて、野手登板が多いこの大陸国では、しばしば苦し紛れのイーファスピッチが出現する。山なりに投げるだけでいいのだから投げるほうは簡単だ。ストライクが取れたら儲けものである。それにストライク宣言もそんなに出にくい方ではない。
そういった背景の差があって、大陸国ではまだ比較的、イーファスピッチもストライク宣言されやすい。
人気テレビ番組に出演して制球力をアピールした俺であれば、なおのことであろう。
女子大生たちが次々と俺の球に凡退していく。全員結構楽しそうだった。
(120km/h後半のストレートと、70km/hもない超スローボール。肩肘もそんなに消耗しないし、こりゃいいな)
俺も俺で楽しい。
実戦感覚でイーファスピッチを使った緩急勝負を練習できるし、女子大生をアウトに仕留めたらチームは盛り上がるし、大陸球に慣れる練習になるし、こっそりナックル気味で無回転で投げる練習を混ぜられるし――。
こっそり試合を見に来ているスカウトの人間にも、俺のイーファスピッチの制球の良さを思う存分にアピールできる。
この日の試合は11奪三振。7イニングでこの奪三振は驚異的だろう。久しぶりに大きく三振を稼いだ。
反面、被打率もそれなりに高かったが、まあ味方のエラーがなければもう少しアウトを稼いでいたので、スカウトの印象もそんなに悪くはないだろう。打撃でも走塁でも活躍したし、それで許してほしい。
試合後、女子大生からやたらと晩御飯のお誘いを受けたが、全部断った。
肉食獣って感じの目付きだった。
もしかして俺、女子大生たちに狙われているのだろうか。
――――――
■今後やりたいこと
①ホッシとみんなの成長を描きたい
進捗:みんなの覚悟UP+みんなの技術UP×2
ホッシの大陸球の慣れUP+ショーケースで結果をたくさん残す+新しい変化球
②ホッシが海外でステータスオープンを活かしたビジネスを始めたいそうです
進捗:学長にスポンサーになる交渉中+ショーケースで人材発掘
野球データ統計調査委員会の設立+TV番組出演により知名度UP
③ホッシが海外で凄い選手に出会うようです
進捗:リトルリーグの子たちと仲良くなる+レジェンドの娘に興味を持たれる
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