第42話 地元リトルとの対戦で、実力をまざまざと見せつけるなど②
『ヘイ! お兄さん! さっきのボールどうやって投げるの!?』
『ねえねえ! 見て見て! これが私のバット! みんなより長くて重いの! ねえ見てってば! ねえ!』
『お兄さん筋肉すっごいね! 何で!? 私のパパはこんなに筋肉ないよ! ワンダーボーイみたい!』
試合の後半から、俺への評価が一変した。
変化球をいっぱい投げたせいか、クソガキどもに滅茶苦茶なつかれたのだ。イリュージョンだ! とかシュリケン・ボール! とか何のかんの騒がれたが、要するに俺の多彩な変化球に目をキラキラさせているみたいだ。
あと、やたらといたずらしてくる。俺の尻とかファウルカップを触ってくる。そういうクソガキはわき腹をくすぐって引っぺがす。本当に滅茶苦茶なやつらだ。
『お兄さんアオカケス大学付属高校? じゃあまた遊べるね!』
『ねえ、変化球今度教えて! 投げたい! 私も投げたい!』
『今度一緒にメジャーリーグの試合見に行かない?』
ガキンチョどもから逃げてきて、早速竜崎に抗議の目を向ける。
「おい竜崎、練習試合の相手には困らないって言ってたよな? まさか俺の練習相手って」
「いえーす! 星上サンの筋トレ動画、大陸のキッズ~ティーンに大受けデスよ!」
俺はげんなりした。
◇◇◇
星上「向こうのハンバーガーの写真がこれ、クソでかくて笑う」
羽谷姉「でっか」
豹堂「顔ぐらいあるじゃん」
羽谷妹「ええ……どうやって食べるのさ?」
星上「この店の奴は、こうやってフォークで食べるんだって」
竜崎「いえーす! この店のハンバーガー、凄くデリシャス!」
緒方「肉汁垂れてんぞ」
豹堂「エッッッッ」
甲野「おいしそう」
森近「うへえ……そんなサイズの生肉、見てるだけで胸焼けしそうですわ……」
大沢木「元気そうでよかったよ、ホッシ」
馬杉「いいっスねー。どうせならアトラス大陸に遠征行きたかったっス」
星上「で、これがその店のコーラ。これもクソでかい」
緒方「変顔すんなw」
羽谷姉「顔の主張すごい」
馬杉「コーラの情報頭に入んないっス」
甲野「イケメンの無駄使い」
星上「この店で発見したサイン、メジャーリーグの選手のサインらしい」
大沢木「! クリスティーン・マーティアのサインじゃないか! 投手三冠王とセーブ王を同時に獲得した凄い人だよ!」
羽谷姉「いいねー、ここに私のサイン並べたいね」
羽谷妹「お姉ちゃん調子乗りすぎ」
大沢木「私も載せてもらいたいね、いずれはたどり着いてみせる」
竜崎「Oh!ワタシが先デース!」
豹堂「ふぅ……」
豹堂「争いは良くない、今は自然を守りたい」
緒方「おい豹堂」
星上「そこまでにしておけよ豹堂」
◇◇◇
歪んだフォームの修正指導については星上の右に出るものはいない。
そう言わしめるほどに、星上の指摘は的確で鋭かった。
ときめき学園にいるみんなはそれを痛感していた――彼が海の向こうに渡った後でもなお。
「肩を痛めて庇って投げているよね? 痛めている場所は多分棘上筋。幸い腱に損傷はないけど、このままだと全体のバランスを崩すし炎症が慢性的に続くのもだめだから肩は安静にするように」
「この子、スナップスローの姿勢が崩れているから、俺のフォームを見せるから真似させてほしい。リリースが安定してない」
「もしよかったらさ、あの子をピッチャーに登板できないか相談してほしい。見た感じ肩もあるし、身体の使い方が一番ピッチャーに近いから、緒方と森近で指導すれば俺が不在の時でも三枚目の臨時ピッチャーとして使えると思う」
海外からでも、動画で練習をみることができる。動画のシェアストレージとチャットツールを利用して、ときめき学園の野球部と星上は引き続き連絡を取っていた。
練習風景を動画撮影して星上に送っては、それで星上からアドバイスが降ってくる、というやり方だ。
星上は忙しいのに大丈夫なのか、とみんなは心配したが、さほど時間はかからないという。どうやら彼は練習風景を15倍速で再生しているらしく、それでもなんとなくフォームの崩れが分かるのだという。化け物のような観察眼であった。
そのうえ、指摘はフォームだけではなかった。
「スイングのフォームは正しいけど、力の乗せ方が全然緒方や甲野と違う。正しいフォームをなぞりに行ってるだけのように見える。体重移動が全然かみ合ってないから、当て感をもう一度つかみ直してほしい。フォームは正しいけど今のままだと手打ちになってる。ポイントは腰かな?」
こんなことを平気で言えるのだ。
力が伝わっている、伝わっていないの違いをどこから見抜いているのか、さっぱり不明である。だが、極めて的確な指摘であった。どこに力みがあってどこに力が通っていないか、そんな本人しか分からないような情報を星上は見抜く。
結果として、ときめき学園の野球部のみんなは、緒方のようなスイングや、羽谷のような守備を、上辺だけ正しいフォームではなく力の伝え方の感覚レベルまで合わせた練習をすることができた。
もちろん、本人ほど上手に身体を使いこなせるわけではないが――。
「今、いい感覚でバットを振り抜いたんじゃないかな? その感覚が今の一番ベストだと思うから、ぜひ試合で再現してほしい」
――
スポーツにおいてはこれが非常に重要なのだ。いい感覚をつかめない限り、同じ動きをしても答えにたどり着くのは難しくなる。指標がないと、何をどう再現すればいいのか分からないからだ。この
大陸に行ってしまった星上だが、それでもときめき学園への技術指導は続いている。それも、個人の身体の動かし方のレベルから分解するような質の高い指導が。
星上を凌駕する才能の持ち主である四人が、それでもなお星上には敵わないとどこか謙遜しているのも、この星上の
本当に、この男には一体何が見えているのか、誰も正しく理解することができない。ただ一つ分かっていることがあるとすれば――この指導をみっちり受け続けることができれば、自分の技術が飛躍的に上がるのは間違いなかった。
◇◇◇
「うふふふ! 星上サン! 次はリトルシニアの強豪から勝負のお誘いデスよ!」
「うーん……まあリトルシニアなら、塁間距離も変わらないし、勝負になるかなあ……」
ガキンチョ相手に無双しまくるのが疲れてきたこの頃。
コミックに出てくるワンダーボーイにそっくりとか、もっと変化球を見せてほしいとか、自分のフォームの指導をしてほしいとか、そんな感じのことを子供特有の無限のエネルギーであれこれ喋ってくるから、俺の体力が全然持たない。
本当は『ビッグビジネス』の下準備をしたいというのに――。
そんな俺の評判が徐々に広まってか、今度はリトルシニアが俺に挑戦をするようになってきた。リトルリーグではなく、リトルシニアならまだいい試合になりそうだな、という予感がある。
「相手は?」
「レジェンド的大リーガーの娘デスね」
途端に俺は興味がそそられた。レジェンド2世。野球の素質は疑いようもない。
誰だろう? と思って見せられた名前を見て、俺は思わず目を疑った。
――風野 茂英(ふうの もえ)。
「トルネード投法の風野の娘デスねー」
邦洲国生まれのシルフェンズの英雄、風野。
邦洲野球リーグでは、新人ながら最多勝利・最優秀防御率・最多奪三振・最高勝率と投手四冠を独占し、ベストナイン・新人王・MVPにも輝いたとされるレジェンド。
大陸野球リーグでは、打者有利のヒッターズパーク二つでノーヒットノーランを達成し、最多奪三振を2回も取っている。
――そんなレジェンドの娘が、俺との勝負を望んでいるというのだった。
◇◇◇
【速報】ホッシ、海外でガキンチョにモテモテの模様
1:やきうのお姉さん@名無し
mttps://www.videotube.com/watch?v=PIsqOedERnr7fk&list=PLW9Yr7DDpOwsDewoPKe6VquSftRXGKb&index=25
ほっこりした
2:やきうのお姉さん@名無し
めちゃめちゃ股間触られてて草
3:やきうのお姉さん@名無し
>>1
3:54あたりちょっと大きくなってませんか????????
4:やきうのお姉さん@名無し
元からファウルカップが大きい定期
5:やきうのお姉さん@名無し
ガキンチョに優しいホッシええな……
おにロリに目覚めてまうロリガキどもって、こうやって増えるんやな
6:やきうのお姉さん@名無し
>>3
工場で外観検査やってる身から言うと、画像のピクセルの面積とか比較したけど有意な差はなかったよ
本格的にフォトグラメトリーやるならLiDARセンサ搭載されたカメラとかで複数の視点から撮影しないと無理かなー
7:やきうのお姉さん@名無し
ヒェッ
8:やきうのお姉さん@名無し
画像分析のガチ勢おって草
――――――
■今後やりたいこと(再掲)
①ホッシとみんなの成長を描きたい
進捗:みんなの覚悟UP+みんなの技術UP×2
ホッシの大陸球の慣れUP
②ホッシが海外でステータスオープンを活かしたビジネスを始めたいそうです
進捗:学長にスポンサーになる交渉中
③ホッシが海外で凄い選手に出会うようです
進捗:リトルリーグの子たちと仲良くなる+レジェンドの娘に興味を持たれる
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