第171話 『 食べて。ゲームして。遊んで騒いで 』
「オラオラァ! 防御ばっかしてていいのかよ? 早く反撃しねぇと死んじまうぞ!」
「くっ! 思いのほか手強い⁉」
「へっ。お前なんかボッチに比べたら足元にも及ばねぇ。これで……終いだッ!」
「なんて鮮やかな確キルコンボ⁉」
テレビ画面にアマガミさんの使用キャラクターが高らかに拳を上げる勝利ポーズが映し出される。その後ろでは誠二くんの使用キャラが地面に膝をついて悔しがっていた。
現実でもゲーム画面に似たような光景が広がっていて、僕は勝利に浸るカノジョを微笑みを浮かべながら見つめていた。
「へっへー。あたしに勝とうなんざ百年早いっての」
「くぅ! もう一回! もう一回勝負でござる!」
「いいけど次負けたらコンビニでアイス買ってこい。勿論お前の奢りだぞ」
「なんて悪辣な条件をっ⁉ やはり天刈氏は本物のヤンキーでござるな!」
「ほれほれ、どーすんだ? もう一回あたしと勝負すんのか? それとも賭けが怖くて尻尾撒いて逃げるかー?」
「も、勿論リベンジマッチを希望するでござる!」
「へっ。その気概だけは褒めてやる。――掛かってこいござる眼鏡!」
「その不明瞭なあだ名で呼ぶの止めて⁉」
再び始まるアマガミさんと誠二くんの対戦。その様子をポテトを頬張りながら見守る遊李くんたち。
「わぁ。天刈さんてゲーム上手なのね! そういうとこも素敵っ」
「だね。誠二が格ゲーで押されてるの珍しいな」
「智景とずっとゲームしてたらおのずと上手くなるんだろ。天刈の性格的に何度も対戦してるみたいだし」
「ゆーくん。あれって私でもできるの?」
「もちろん。なら次やってみなよ。対戦相手は海斗が丁度いいんじゃないかな」
「おいおい。いくらなんでも俺と白縫じゃ経験の差があり過ぎるぞ。白縫じゃ相手にならん」
「何言ってんの? 海斗は目隠しで戦うに決まってるじゃん」
「鬼畜縛りで対戦させようとすんの止めろ!」
次は誰が遊ぶか。どんな風に遊ぶかで盛り上がる三人。
「ほれ。ほれ。そんな攻撃当たんねぇよ」
「くっ⁉ なんて絶妙な躱し方! 煽りプレイが群を抜いて上手い⁉」
「ほれ。よっと!」
「まるでボッチ氏と戦ってるみたいでござる⁉ ……ぎゃあああああ!」
「はいござる眼鏡の負けー。約束通りアイス買ってこいよな」
「じゃあ私はスーパーカップのバニラでお願い!」
「なら俺はピノで」
「じゃあ俺は柑橘系のやつで」
「あっ。僕はチョコミント系がいいな」
「なんで全員分のアイスを買ってこないと行けないのでござるか⁉」
「「ついで」」
「ついで⁉」
アマガミさんにコテンパンにされただけでなく、全員分のアイスまで買いに行かされそうになる誠二くん。哀愁が凄まじい。
流石に一人で全員分のアイスを買いに行かせるのは申し訳ないというかいたたまれなく、僕も同行することに。
数十分後に皆のアイスを買ってリビングに戻ってくれば、部屋の中は更なる熱を帯びていて。
「ああーん! どこ走ってるか分からなくなちゃった~」
「何やってんだ白縫! 逆方向走ってるじゃねえか! 早く戻れ!」
「どうやって戻ればいいのか分からないの!」
「なんでコイツと同じチームなんだよあたしは⁉」
「おい遊李! なんで俺に緑甲羅投げてきてんだ! 俺ら同じチームだろうが!」
「ごめんな海斗。俺、例え今は萌佳とは敵チームでも、やっぱりピンチのカノジョを放っておくなんてできないんだ!」
「カッコいいけれども! カレシとしては百点満点の回答だけれども! でも味方に攻撃すんのは止めろ!」
食べて。遊んで。思う存分騒いで。
「……アイス。溶けないよう冷凍庫に仕舞っておこうか」
「そうでござるな」
――そうして、僕らの楽しい一日が過ぎていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます