第161話 『 アマガミさんと終点 』

 ――この手に、ずっと甘えていたい。


 あたしの手を優しく、慈しむように握ってくれるボッチの手は、どこまでも安寧をくれる。


『――あぁもう。好きって、そう伝えなきゃいけないのに』


 ボッチが振り向いて笑顔を魅せる度に、あたしの心臓がドクンと弾む。


『ダメだ。あたし。もっとボッチのこと好きになってる』


 その気持ちに、際限なんてなくて。


『なぁ、ボッチ。ずっと離さないでくれ』 


 もっと、お前と一緒にいたくて。


『お前の傍に居られるなら、あたしは何だっていいんだ』


 その為なら、あたしは何だってやるからさ。


『お前と付き合えたら、あたしはどんだけ幸せなんだろうな』


 きっと、その時は世界一幸せな女になれる気がする。それは過大でも過剰でも誇張でもない。お前が、あたしにそう思わせるんだ。


『きっとお前のことを好きなヤツはたくさんいるんだろうけどさ。でも、あたしは言い切れるぞ。ソイツらの中で、あたしが一番お前のことが好きだって』


 あたしに触れてるなら、分かれよ。

 あたしのこと見つめてくれるなら、いい加減気づけよ。

 あたしのことが好きなら、教えてくれよ。

 今にも張り裂けそうなほど、心臓が騒いで仕方がないんだ。


 ボッチ。


 ボッチ。


 ……なぁ。


 智景。


 好きだよ。


 お前のことが、世界で一番好きだ。


 好きで好きで好きで――仕方がないんだ。


『まだ、終わらないでくれ』


 もう間もなく、夢のような時間が終わっちまう。

 それがもたらすのは名残惜しさと愛おしさ。

 思い出がもたらした寂寥に、柄にでもなく胸がきゅっと締め付けられる。

 文化祭が終わってしまうまで、あと、三十分。


 ――そして、あたしはボッチに手を引かれるままに、この夢のような時間の最後を締めくくる終点へと導かれた。

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