第14話 2度目の訪問
セフィロスが来てからその後、セトとロキも遊びに来てくれた。
雷の神・セトは「まさかセフィロスに先を越されるなんて……!」と、何故かもの凄く悔しそうにしていた。
会議の時も思ったけど、セトとその守護天使長はもの凄い色気を放っている。ジュノなんて2人をみて鼻血を垂らしていた。他の4人も同じようなもので、口をポカンとあけて惚けてしまっていた。うちの天使達には刺激が強過ぎる。
セトはクセ感のあるアッシュグレイの髪にオッドアイがミステリアスで、痺れるような甘い声をしているので彼が話す度にゾクリとする。男女無差別に誘惑してくるので困ったものだ。
リアナは顔つきも体つきも非の打ち所がないくらい完璧だが、雷の守護天使長はそんなリアナとはまた別のそそられる何かがある。
特に露出の多い服を着ている訳でもないのに、豊満な胸部とくびれたウエスト、プリっと上向いたお尻が洋服の上からでも分かるくらい身体のメリハリが効いている。
私の神気うんぬんよりも、この2人の撒き散らすフェロモンの方が余程当てられそうな気がする。
火の神・ロキの方はなんの前触れもなく、突然ふらりとやって来た。あの時は我が家が燃えてなくなるのでは無いかと肝を冷やした。
ノクトに言われた通り先にエントランスに出たジュノが、火の守護天使長の方を火の神と間違えて挨拶してしまったのだ。
無理もない。火の守護天使長の方がガタイが良く大きいのだ。私は会議の時に紹介してもらっていたから分かるけれど、そうでなかったらうっかり間違えるかもしれない。
ジュノの勘違いを必死で謝ると火の守護天使長が
「神は天使と神とを見分けられても、天使からは見分けられません。間違えるのも無理はありませんよ」
と、色々なことを言ってロキをなだめすかしていた。この守護天使長は主あるじの扱いをよく心得ているらしい。
そして次にやらかしてしまったのは私だ。
気を取り直して家の中に入り話をしている時に
「目線が同じくらいなので話しやすいです」
と言ったのが、完全に地雷だったらしい。
何せこれまで我が家に来てくれた人達はみんな背が高くて、背の低い虹の天使たちに慣れている私としては親しみやすいな、と思っただけだったのだけど。
またもや火の守護天使長の力を借りてなだめてもらいなんとか事なきを得たけれど、絶対に嫌われてしまったと思う。
その事を様子を見に来てくれたフレイに話したら、大笑いされてしまった。笑い事ではないとガックリと肩を落とす私に
「アイツのことだから、次来た時にはケロッと忘れているから気にする事はない」
と言ってくれたけれど、本当だろうか?
まだ来ていない神がいる中で、セフィロスは今回、2度目の訪問をしてくれている。
「このレモンティー、美味しいですねぇ」
エレノアが今回は戸惑うことなく、私が入れたお茶を飲んでくれている。
「ありがとう。このレモン、先月みんなと一緒に採ったのを蜂蜜につけておいたのよ」
「という事はアイリス様まで収穫をしたんですか?」
「ええ。フレイ様が庭に、四季ごとにフルーツを楽しめるようにって色々と植えてくださって。私はお恥ずかしながらあまりやる事が無いので、普段はみんなと一緒に畑へ出たり料理をしたりしているんです」
アイリスがそう言うと、セフィロスも風の天使達も神妙な顔をして黙ってしまった。
「フレイもリアナも、普段はこんな間抜けな事をやらかしたりし無いんだが……。異変に気づけなかった私もまだまだ、という事だな。すまない」
「いっ、いえっ。セフィロス様が謝らないでください。私が神気を上手く操れず、不出来なのがいけないのです。お2人にはたくさんお世話になっていて今も私に心を砕いてくださっていますし」
それに、とアイリスは付け加える。
「こうして穏やかに日々を過ごせるのは、最上級神様達が天界をつつがなく治めているからでしょう。感謝しております」
こんな若輩者に感謝されたって大した意味なんて無さそうだけれど、本当にそう思うので言っておく。
セフィロスは「そうか」とだけ言って、レモンティーを飲んでいた。
「そうそう、レモンと言えば、セフィロス様は柑橘系のフルーツがお好きなんですよ。」
エレノアが気を取り直すように言ってきた。
「そうなのですか? それでは甘いものはお好きでしょうか?」
アイリスはお菓子を作るのが好きなので聞いてみるとセフィロスがこくりと頷く。
「セフィロス様はこう見えて、スイーツ男子です」
「エレノア、『こう見えて』と言うのは、お前には私が『どう見えて』いるんだ?」
「いえ、カワイイところがあるんですよって言いたかっただけです」
二人の会話にアイリスも虹の天使も笑ってしまった。
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