卒業式

久石あまね

卒業式

 「オレたち今日で卒業やな」  

 二階堂達也はそう、隣の席に座っている久保に悲しく言った。久保は静かにそうやなと達也に返した。二人は幼稚園から中学までずっと一緒に過ごしてきた幼馴染だ。今日の中学の卒業式を最後に達也は高校進学、久保は建設業への就職が決まっていた。

 「お前はまだ青春が続くやんけ、高校進学するんやろ?オレは就職やぞ。オレの青春時代は今日で終わりや」 

 久保はそう言うと、堂々とした目で達也を見た。その目は達也には大人のどこか達観した目に見えた。久保はもう大人だ。達也より世の中を一歩も二歩も早く見るのだろう。

 久保。お前はすごいよ。男だよ。  

 久保の両親はこの夏に交通事故でふたりとも亡くなられた。久保と久保の妹だけ残された。必然的に久保が家庭を支えることになった。だから久保は高校進学を諦め、就職することになった。 

 達也は久保に「がんばれよ」と目でエールをおくった。久保はあごを引き、しっかりとした目で、達也のエールを受け取った。 

 「達也、お前もな」

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卒業式 久石あまね @amane11

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