第12話 職歴11社目(貿易書類業務。外資系ロジスティクス会社。正社員。勤務期間10日間)

私は営業職はもう、うんざりだった。向いていないのが分かった。商品に興味がない。商品知識を向上させる努力をしたくない。人間的に明るくもない。人嫌いだ。対人恐怖症。仕事を増やす仕事が好きではない。英語が好きな事は確かだ。海外との英語のやり取りがある貿易事務しかないと思った。そして外資系ロジスティクスの会社に入社できた。香港に本社があり、その日本法人での勤務。職種は貿易事務員。国内、海外の顧客(荷主)から国際複合輸送業務を委託され、それにまつわる貿易書類のやり取りを行う部署であるが、書類の量が半端なく多く、色々な顧客が海外にいて、どの書類の事なのか、わけが分からなくなってパニックを起こしてしまった。結婚退職する女性の後任というポジションだったので、彼女との引き継ぎをしている時は彼女が助けてくれるが、その引き継ぎ期間も、たった10日間しかなかった。私は彼女がいなくなった後の事を考えて恐怖を感じた。とても私一人で捌ける仕事内容ではない。ちゃんと引き継ぎが完了して業務に慣れた後に寿退職するならまだしも、私は、またしても逃げ出した。

私は上司に「たった10日間で退職する事になりご迷惑をおかけして申し訳ありません」と言った。

上司も「本当に迷惑だよね」と言った顔を今でも覚えている。

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