第16話 夢の跡地
「それではお聞きください。作詞作曲:AZUSA、ボーカル:マナで『反逆の光』です」
『なになに作詞作曲AZUSA?』
『ボーカル:マナってまさか』
『え? ホントに?』
『マジ?』
AZUSAさんに書いてもらった歌『反逆の光』。自分で言うのも恥ずかしいけど、AZUSAさんが言うには突然現れた歌姫の活躍する様が世間の流行をぶっ壊して歯向かうようなそんな力を感じたとのこと。
序盤は少し静かに始まり、そこから徐々にテンポが上がっていく。そしてサビの前に一瞬無音になって爆発的な音色が奏でられる。そこが決め時だ。
AZUSAが私のために作ってくれた曲だ。納得できるまで何度も録音をした結果、今、すべての曲の中で一番私に合った曲。それゆえにその威力は他と一線を画していた。
この力を見た魔物も先程までとは反応が変わっていた。玉座から立ち上がり、こちらの隙を窺っている。だけど、AZUSAに貰った新曲で隙なんて狙わせない。
光の力によって加速された私の移動速度は音をも置いていくほどに早い。周囲に響き渡る衝撃波の音も奏でながら魔物へと近づいていき、寸前のところで光の槍を放つ。
『す、すげえ』
『動きが変わったんですけど』
『カッコいいマナちゃん!』
『流石は俺達の歌姫だぜ』
視聴者数も15万人を突破し、配信も最高潮まで盛り上がったところでようやくサビへと突入する。爆発的な音色、その音色が作り出す力は更に強力な一撃を生み出す。
私の右手から打ち上げられた光の粒が魔物の上空で徐々に集まっていき、やがて一つの巨大な光の弾を作り出す。その力がもたらすのは圧倒的な爆発力。
打ち出された一撃は魔物に触れた瞬間、強大な爆発となって魔物の体を吹き飛ばしていく。そしてそこには最早、何も残らないのであった。
「……倒せたみたいですね」
最後の一撃を打ち出した直後、確認するように魔物が元居た方へと向くも魔物の姿は先程の爆発で跡形も残っていない。完全に勝ちを確信した瞬間であった。
『最後のエグ』
『てか告知ってまさか』
『いや絶対そうだろ』
「皆さんお気づきですかね。そうです、この度なんとAZUSAさんから楽曲提供をしていただき、私マナ初のミュージックビデオが今日の夜19時から配信開始となります」
『キター!!!!』
『マジ最高!』
『ついにマナにも持ち歌が出来たか~』
『てかAZUSAが楽曲提供とかマジで初じゃん。すごww』
『最強の歌手と新進気鋭の歌姫がタッグを組んだってこと? ヤバすぎww』
『配信されたら即聞きます!』
『これで俺の通学生活に実りが生まれる……あぁ、感動的だ』
今まで以上にコメント欄の流れる速度が速くなる。ようやく発表できた。今まで口を滑らせないようにとずっと耐え忍んできた苦しみからようやく解放される。
こんなの早く言いたいに決まってんじゃん! これまで何度自分でリピートしたか分からない。
「配信では一部しか歌っていませんのでぜひ今夜配信されるミュージックビデオでフルバージョンお聞きください! めちゃくちゃ良い作品になってると思いますので! お願いします!」
『絶対聞きます』
『マナちゃんの歌声がどうMVで聞けるの楽しみすぎる』
『いつかライブもしてくださいお願いします』
『MV楽しみすぎ~』
「ライブもいつか出来たら良いな~。あんなにキラキラしたステージの上に私も立ってみたいですし」
AZUSAのライブの時に見た煌びやかなあのステージ。夢の中だけの世界かと思っていたそのステージの大きな第一歩になったんじゃないかな?
「それとこれは余談なのですがとうとう収益化の申請が通りました! これも皆様のお陰です! ありがとうございます!」
『おめ~』
『おめでとー』
『収益化おめ~』
『やっと投げ銭できる!』
『一生推します!』
『てか今まで収益化できてなかったのが驚きだよね』
『収益化ナイス! その調子でグッズも作ってくれい!』
「あはは、グッズはまだまだ先になりそうですね」
『てか歌姫、水晶見てみた? もしかしてダンジョン踏破してるんじゃね?』
『確かに50階層以上のダンジョンなんて聞いたことないしワンチャンあるかも』
『歌姫もついに星持ちになる時が来たか?』
コメント欄に言われて気が付く。そういえばまだ記録石に水晶を記録させてないな。
「なるほど、試してみますね」
そうして例の如く開いた扉の先にある水晶へと記録石をかざす。記録石と水晶が共鳴するように光り輝き、やがて記録石へといつもとは違う文字が浮かび上がってくる。
『夢の跡地 completed』
「なんかこんな文字が出たんですけど」
『ガチで踏破してるじゃんww』
『たった一か月で星持ちの探索者ですかww』
『バケモンじゃんww』
こうして歌姫マナはダンジョンをも攻略し、更に世間からの注目を集めることになるのであった。
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