第6話 初配信の反響

「茉奈、あんた凄すぎ」


 学校に登校すると早々に美穂ちゃんからそう言われる。十中八九昨日の配信の事だろうな。何か言われるとすればそれしかない。


「ダンジョン配信、結構楽しかったよ」


「いやそれもそうなんだけど、ほら、これ見て」


 そう言うと美穂ちゃんが携帯の画面を見せてくる。映し出されているのは有名人から一般人まで広く使われているSNSの画面だ。誰もが気軽に呟くことのできるそのSNSは世界中でシェアされている。


 そして表示されているのは私もフォローしているAZUSAのアカウントだ。それがどうかしたのだろうか?


「ほら、この呟きだよ。これ」


「え、なになに、『話題の歌姫マナさん、俺の歌を歌ってくれてありがと』……えっ!?」


 ここ最近で一番大きな声が出たかもしれない。何度も見返してそれが嘘ではないことを確認する。


「え? え? え?」


「ね? 凄いでしょ? てかフォローされてるんじゃない? 自分の携帯で見てみたら?」


 美穂ちゃんにそう言われて慌てて携帯を取り出し、自分のアカウントからAZUSAのプロフィール欄を開くとそこには「フォローされています」の文字が見え、さらに大きな声が出る。


「嘘……AZUSAにフォローされてる」


「やったじゃん茉奈! 憧れの人に認知されてるよ!」


 信じられない事だった。ダンジョン配信をして有名になったらいつか会えるようになるのかなとか思っていたけど、まさかこんなに早く認知してもらえるようになるとは思わなかったのだ。


「早速返信しなきゃ」


 私はすぐさま返信欄を開き、『こちらこそ歌わせていただいてありがとうございました。大ファンです』とリプライを送る。人生初のリプライだけどもうアドレナリンが出ていて送るのを躊躇うとかそんなこと一切なかった。


 すると私の返信に一斉にコメントが付く。


『本人じゃん』

『良かったね歌姫』


 配信始めて良かった~。人気が出るとかよりもAZUSAに認知してもらえたのがものすごくうれしい。


「てか配信サイトの登録者数も異常だよね、茉奈。見てよ、もう50万人突破してるよ?」


「ホントだ。気付かなかった」


 それに昨日の初配信のアーカイブはすでに二百万回再生を超えている。ていうか急上昇にも乗ってるんだけど。ほんのちょっと前まではただの一般人だったのに……。改めて実感が湧かないや。


「こんなに有名になったらもしかしてテレビの取材とか来るんじゃない? そこんとこどうなのよ」


「う~ん、わかんないな。沢山メッセージが来すぎててどれが何なのか分かんないんだよ」


「ちゃんとお仕事用のメールアカウント作っとかないと駄目よ。もし事務所所属のお誘いとか来てたらどうするの」


「事務所? ないない。そんなの私に来るわけないじゃない」


 バズったとはいえまだ一度しか配信をしていないのだ。そんなにすぐ事務所に所属できるわけがない。


「でも一応作っておいた方が良いわよ」


「分かったよ」


 美穂ちゃんもファッション誌のモデルとかたまにやってるしそう言うのには詳しいのだろう。先駆者の意見はちゃんと聞いておかないとね。後でプロフィール欄に仕事用のメアド貼っておこ。あと配信サイトの自分のチャンネルにも。


「そういえばこんなに再生回数も回ったし登録者も増えたんだし収益化できるんじゃない?」


「あっ、確かに。お母さんに聞いて申請しておこ」


 確か未成年は収益化に保護者の同意が必要だとか聞いたことあるしね。お母さんにはまだ活動の事は少ししか話していないから今度しっかり話しておかないと。何なら今日帰ってから話してみても良いかな。


「それにしてもあんな仮面どこで買ったのよ」


「ネットだよ。一応顔は隠しておかないと不味いじゃん?」


 一応クラスメート達からはこいつなのではないかと疑われてはいるからそこら辺は諦めているけど、他クラスとか他学年に知れ渡るのは少し恥ずかしい。


 それに身バレすると何かと問題が起きそうだったので顔は隠しているし、ちゃんと制服から着替えてからダンジョン配信を行っている。


「次はいつ配信するつもりなの?」


「一応、今日配信しようかなって」


「じゃあ家で見とくね」


「ありがと」


 初配信では10階層までしか潜らなかったし今日の配信ではもっと深くまで潜ろうかな。それこそ20階層くらいまでは行きたい。


 そんなことを考えていると、ちょうど授業が開始するチャイムが鳴るのであった。

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